【今月のまめ知識 第65回】 金属の硬さ
公開日時:2018/08/27
とあるのんきな昼下がり・・・
あるる「パリッ! もぐもぐ・・・ んふふふぅ〜♪」
博士「おや?何を食べているのかな? 香ばしい醤油の香りがするぞ」
あるる「あ、博士! おひとつどうぞ」
博士「お、昔懐かしの「堅焼きせんべい」ではないか。どれどれ・・・」
博士「・・・ん・・・んぐぐぐ・・・」
博士「こりゃ、カタイのぉ〜 バキッ!」
あるる「博士、歯・・・大丈夫ですか?」
博士「もちろんじゃ。おおぉ〜、うまい! こりゃたまらん(もぐもぐ)」
あるる「ね、ね。おいしいですよね!おじいちゃんの大好物なんです!」
博士「(あるるのおじいちゃんは、こんなカタイものが食べられるのか!すごいのぅ〜)」
博士「ところであるる、せんべいの堅さは歯ごたえじゃが、金属の硬さは何で判断すると思う?」
あるる「え? 金属ですか? えっと、えっと・・・折れにくさとか?」
博士「ふふん、そうくると思った」
あるる「違うんです・・・ね・・・」
博士「以前話したこともあるんじゃが・・・キレイさっぱり忘れたようじゃな」
あるる「え? そうなんですか? き、記憶がまったくありません!」
博士「返って清々しいのぅ〜(笑) よし、今日は「カタさ」について話してしんぜよう!」
第5回“強さって何?「変形少ない」「壊れない」「硬い」は別のもの“で、強さの種類を説明し以下に分類しました。
・変形しにくさ→弾性率
・損傷しにくさ→降伏強度、耐力
・破壊しにくさ→引張強度
・傷付きにくさ→硬度
ではアルミとスチールの硬さについても説明しました。
今回はこの金属の硬度を掘り下げて説明したいと思います。
金属の硬度
降伏強度や引張強度は破壊試験なので、使用する現品しかない時にはその試験を行うことができません。
しかしこれらは硬さと関係があり、その強度を知りたい場合に破壊する必要のない硬度試験で簡易的に代用することができます。
但しきちんと比例しているというわけではないので、あくまでも推定するためと考えてください。
それぞれの方法の使い分けは、硬さの範囲や、測定のしやすさによりますが、
今回は硬さそのものに関して説明したいので測定方法に関することの詳細は省きます。
この中で、面心立方格子が他の2種の構造に比べて面で滑りやすく、つまりやわらかいものとなります。
鉄は体心立方格子で、アルミニウムは面心立方格子です。
2)格子欠陥
次に格子欠陥ですが、実は完全結晶という全く欠陥のない格子を作る事が出来れば桁外れに強くなるのですが、それは現実的には困難であり通常はその並びは欠陥だらけなのです。
そこでその欠陥を利用し、格子をもつれさせたり障害物を入れたりという方法で金属を硬くしています。
まずショットブラストなどの加工硬化や焼入れでは、原子の配列をもつれさせ、絡まらせて身動きを取れなくすることで硬くします。
次に合金として析出物によって行使を歪ませたり、障害物としたりして、転位を起こりにくくします。
転位とは第58回「延性と展性について」でお話しましたが、重ねたトランプがずれていくように面で滑っていく動きです。
2種類以上の元素が溶けて均一な個体となっているものを固溶体といいます。
(固溶体と合金は近い意味ですが、固溶体は元の金属と結晶構造が変わらないものです)
そして結晶格子の隙間に他の原子が入りこんだ場合を侵入型固溶体、格子点の位置に他の原子が置き換わっている場合を置換型固溶体といいます。
鉄に対しては炭素が侵入型固溶体となり、炭素鋼となります。
アルミニウムに対しては銅が置換型固溶体となり、ジュラルミンとなります。
3)温度
温度が上がると原子は振動し、互いの結合を振りほどこうとするため原子間距離が延び、結合力が弱くなってやわらかく成ります。
※参考資料:硬さ換算表
博士「どうじゃ、あるる。「硬さ」とはどういうことか、わかったかの?」
あるる「はいっ! 「硬さ」って「傷つきやすさ」で判断するとは、驚きでした」
博士「一般的なイメージと技術的な定義とは違うからのぅ。でも、この違いを理解してこそ、立派なものづくり界の一員になれるのじゃよ」
あるる「はいっ!がんばりますっ! ところで、博士は・・・」
博士「ん? なんじゃ?」
あるる「博士のはとっても硬くいいですね! 羨ましいです。あるるはまだ、やわらかいから、修行が必要です」
博士「ん? んん? なんのなぞなぞじゃ?」
あるる「ハートですよ、ハート。博士のハートは傷つきにくいでしょ。それくらべてあるるは、すぐ傷ついちゃう、ガラスのハートですから!」
博士「う・・・うぅ〜む・・・まぁ、本人がそう思っているのなら、よしとするか」