【今月のまめ知識 第58回】 延性と展性について
公開日時:2018/01/29
とあるのんきな昼下がり・・・
博士「あるるよ、前回やった「延性、脆性、靭性」についてはしっかり覚えているかの?」
あるる「もちろんです! 弾性 塑性 延性 脆性 靭性、5性まとめて“5セイジャー!!”ですからね!」
博士「ふぉっふぉっふぉっ。ポーズも作ったのか? なかなかかっこいいのぅ」
あるる「てへ、それほどでも(照)」
博士「それでは、今日は「展性」について学んでいくぞ」
あるる「へっ? 転生?」
博士「そっちではない。展性じゃ」
あるる「なんですか?それ?」
博士「延性によく似た性質なんじゃが」
あるる「えええっ!!! ・・・・・・」
博士「どうした、あるる。そんなに驚いて」
あるる「えー、だってだって博士ぇ〜、「展性」が加わったら「5セイジャー」じゃなくて「6セイジャー」になっちゃうじゃないですか!」
博士「なんじゃ、そっちを心配していたのか。あるるらしいのぅ」
あるる「大事なことです!(キリッ!)」
博士「いいではないか、ウルトラ兄弟だって最初は6人兄弟の設定じゃったんじゃ。それがどんどん増えて、今では11人兄弟になっておる」
あるる「えっ? そうなんですか?! 増えるんですか!」
博士「そうじゃ。5セイジャーだって増やしていけばよい。兄弟だって正義の味方だって多い方が良いではないか」
あるる「そうですね!その通りですね! 博士、じゃんじゃん増やしていきましょう〜!」
延性と展性について
前回は延性についてお話ししましたが、似た性質として展性があります。
両方とも弾性限度を越えて変形する性質であり、
延性は前回お話しした通り引張りによって伸びる性質です。
これに対して展性は、圧縮によって伸びる性質です。
延性で加工された代表的なものは針金で、展性で加工されたものは金箔といえば解り易いかと思います。
どちらも「伸びる性質」なので、同じように思えますが、必ずしもそうではありません。
金は展性、延性ともに金属の中で最も優れており、
鉛は展性には優れているのに延性は劣る(引っ張るとちぎれる)という具合に、まったく別の性質です。
金属は硬いというイメージがありますが、このように形が変わっても分解しないという軟らかさを
併せ持っているのです。
これは金属結合に秘密があります。
『今月のまめ知識 第23回 金属とは何か?』でもお話しましたが、
金属結合では電子は自由電子となり、陽イオンとなった原子核の間を自由に動いており、
金属以外の物質(イオン結合、共有結合)では裂けてしまうような場合でも、金属原子の位置がずれて
変形しながら全体がつながっている状態を保つのです。
つまり、他の結合では原子の位置関係が変わるとバランスを維持できないのに対し、
金属結合では、ずれた形で原子間の「クーロン力」により、強い結合を維持するのです。
その「ずれ(転位)」は下図のように起こります。
金属結合とは「餅」のように変形し、その形で強度を持つという魔法のような結合なのです。
この性質により塑性加工が可能となり、金属が便利な材料として広く使われている理由です。
そして、塑性加工に使用する材料を『展伸材』と呼び、アルミニウム合金押出し形材もそれに属します。
展伸材ではない材料は、溶かして鋳込む『鋳造材』となります。
博士「どうじゃな、あるる。6番目の戦士の特長はわかったかの?」
あるる「はいっ! 金属ものび〜るなんて驚きでした!!すごいなぁ〜、金属結合」
博士「よしよし、興味を持ってくれたようじゃな」
あるる「博士が“餅のように変形し・・・”といったところで、目が覚めました。目からウロコならぬ、目からお餅が落ちるかと思いましたよ。あはははは」
博士「あははじゃない。引っかかったのはそこか。ま、それでも興味を持ってくれただけ、良しとしよう・・・」
あるる「さぁて、今日のおやつは磯辺焼きにしよぉ〜っと♪ 博士も食べますか?」
博士「・・・2個、所望じゃ」