【今月のまめ知識 第23回】金属とは何か?

公開日時:2015/02/17

教壇に頬杖をつきながら、珍しくブルーな様子のあるる。

ついているのは頬杖だけでなく、ため息もたくさんついている

そこへ来たアルファ博士。当然のように・・・

 

博士「どうしたあるる。お腹が痛いのか? それとも腹がすいているのか?」

あるる「違いますよ。ちょっと考えごとをしていただけです」

博士「ほう、珍しいな。雨、いや、雪でも降らんとよいが・・・」

あるる「 博士、前回「アルミはボーキサイトという石が原料」って教えてくれたでしょ。

てことは・・・オリンピックのメダルも、石からできてるってことですよね?」

博士「なんじゃ、突然。今日のあるるはおかしいのぅ。石といっても、その辺に

落ちている石ころじゃないぞ。金属の元になるものが入っている「鉱石」が原料じゃ」

あるる「あれからずっと気になってるんです。なんで石から、あ、鉱石ですよね、

あんなにピカピカした金属ができるのかって・・・」

博士「お、あるるもいよいよ金属に目覚めてきたんじゃな。いい傾向じゃ、うんうん」

博士「しかしな、ピカピカしているだけが金属ではないぞ。

ときにあるるよ、金属というと、他にどんなイメージを持ってる?」

あるる「えっと、硬い、冷たい・・・強いっ!」

博士「強いと来たか。あるるらしいのぅ(笑) よしっ! 今日は

あるるが目覚めたよい機会じゃ。ものすごく基本的な話をするとしよう」

博士「あるるは“金属のそもそも”を考えたことはあるかな?」

あるる「ありませんよ。あるわけないじゃないですかー」

博士「(笑) そりゃそうじゃ。じゃ、一緒に考えてみよう」

 

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みなさんは「金属」というとどんなイメージでしょうか?

 

「硬いけど割れたりせず、光沢があって、電気を通すもの」

だいたい合っています。

 

これまで、アルミフレームや鉄などの金属についてお話してきましたが

そもそも金属とはいったいどのようなものなのでしょう?

今回は金属について、簡単にお話しましょう。

 

 

金属の定義


 

金属とは、冒頭で述べたように

 

・硬い

・割れない

・光沢がある(ピカピカしている)

・電気を通す

 

といった特徴を持つ物質の総称です。

化学的に言うと「金属結合するもの」となりますが、

まずは、それはどういうことかを説明しましょう。

 

自然界に存在する物質は、分子やイオンの集合体で、

分子は原子が集まってできているものです。

 

原子はどのように結びついているのか? というと、

原子間の結合の仕方の違いによって

 

・イオン結合(金属元素と非金属元素からなる結合)

・共有結合(非金属元素のみからなる結合)

・金属結合(金属元素と金属元素からなる結合)

 

などに分けられます。

それではひとつずつ、詳しく解説していきましょう。

 

 

イオン結合


 

「イオン結合」とは、陽イオンと陰イオンが

静電気力(クーロン力)で結びついたものです。

 

たとえば、金属元素のひとつナトリウム「Na」

塩素ガス「Cl₂」の中に入れると互いに電子を交換して

ナトリウムイオン「Na⁺」と塩化物イオン「Cl⁻」になり、

これがクーロン力で引き合い、塩化ナトリウム「NaCl」(いわゆる食塩)となります。

 

イオン結合ナトリウム2
Na⁺ + Cl⁻ ⇒ NaCl(塩化ナトリウム)

 

共有結合


 

「共有結合」とは、非金属元素の原子核のまわりの価電子

(一番外側の軌道を回っている電子)が隣の別の原子核に引き寄せられ、

互いに交わって、一対の価電子が2個の原子核に共有され 

(電子の軌道を2個の原子核が共有している)、より安定した状態となった結合です。

 

この結合で誕生した原子のグループを「分子」と言います。

例としては、水素(H2)、水(H2O)、酸素(CO2)、二酸化炭素(CO2)などです。

 

共有結合水

 

 

金属結合


 

そして「金属結合』です。

 

金属結合とは、金属原子が最外殻を回っている価電子を放出して失い、

陽イオンとなった原子が規則正しく並び、放出された電子が

この陽イオンの中を自由に動き回っている(自由電子と言います)

状態の結合を言います。

 

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共有結合でも電子を共有していますが、

2つの特定な原子間だけであり

電子が動くことはありません。

 

一方の金属結合では、規則正しく並んだ陽イオンすべての間を

自由電子が動き回ります。

 

金属結合により規則正しく配列したものを『金属結晶』と呼び、

以下のような特徴があります。

 

① 電気伝導、熱伝導が良い

② 一般に融点が高く、展性、延性がある

③ 金属光沢がある

 

以下に詳細を述べます。

 

①電気伝導、熱伝導が良い

これは飛び回る自由電子が、電気や熱を伝えるためです。

ですから、電気伝導が良い金属は、熱伝導も良いということになります。

 

②一般に融点が高く、展性、延性がある

「展性」とは、圧縮する力(打撃など)を与えられて薄く広がる性質のこと。

「延性」とは、引っ張る力を与えられて細く伸びる性質のことです。

 

共有結合は、原子間の結合が強いのですが

金属結合では結合に寄与する電子を共有しているめ、

原子間の移動が容易で、割れずに変形ができるのです。

 

結晶の変形は、規則正しく並んだ原子が、結晶面に沿ってすべることでおきます。

この展性と延性があることで、金属は非常に加工性の良い材料として

広く使われているわけです。

 

③ 金属光沢がある

自由電子はマイナスに帯電しているので、電子同士が近づくと反発し

それを繰り返すために激しく振動します。

この振動数が可視光の振動数より大きいため可視光は反射され、

金属内部に入っていかず反射が起こり、もとの光と同じ振動数の光を放出するので

光り輝いて見えるのです。

 

反射する光の波長は金属ごとに異なります。

アルミニウムは可視光線全域の波長をよく反射するので、

銀白色に見えるわけです。

 

 可視光2

 

 

あるる「うわー、アタマがクラクラするぅ〜 (@ω@;)」

博士「居眠りもせず、よく着いて来たな、エラいぞ、あるる」

あるる「電子、結合、結晶・・・♪ でも、こういう基本中の基本の話って面白いんですね。

電子のことなんか、今まで考えたこともなかったですよ」

博士「ふぉっふぉっふぉっ・・・興味を持ってくれてなによりじゃ」

あるる「電子といえば・・・はっ、電子レンジ!! 

そういえば考えすぎて、朝から何も食べてませんでした! お昼ご飯、行って来ます!!! =333」

 

アルルちゃん05

 

そう言いながら風のように去って行くあるるの姿を眺めながら、

博士「やっぱり、お腹がすいていたんじゃな・・・(遠い目)」

 

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