【今月のまめ知識 第8回】 アルミとスチール、どう違う? ~アルミフレームの向き不向き~
公開日時:2013/11/27
あるる「ゴクゴクゴク・・・ぷふぁ〜♪」
博士「おー、あるる。良い飲みっぷりだのぅ。まるでおっさんみたいだ」
あるる「あー、シュワシュワしてて美味しかった。この炭酸を一気に喉に流し込むのが、なんともたまらんのですよ」
博士「ますますおっさんみたいじゃのぅ(笑)ところであるる、今手に持っているジュースの缶は、何でできているかわかるかな?」
あるる「もちろんです! アルミです、アルミ!」
博士「正解! じゃ、この缶コーヒーはどうじゃ?」
あるる「熱っ! 博士、この缶コーヒー、ずいぶん熱々ですね。これもアルミじゃないんですか?」
博士「ふふふ。あるる、まだまだじゃのう。では今日は、その違いを勉強してみるぞよ」
私たちの生活の中で、もっとも身近な「アルミ」と「スチール」は、自動販売機の中に見られます。
ザックリと大別すると、炭酸などのジュース類は アルミ缶、缶コーヒー(特にホット)はスチール缶が使われています。
材質の違いによる特徴を生かして、それぞれ使い分けているわけですが、今回はそれぞれの特性から、用途による向き不向きについてお話しいたしましょう。
アルミニウム合金とスチールを比較した場合に、同じ質量であればアルミニウム合金の方が高い剛性を得られる事は今まで説明してきました。
今回は「硬さ」「耐食性」「温度」「振動」について、それぞれ考察していきます。
アルミニウム VS スチール「硬さ」対決!
アルミVS スチール缶【硬さ】対決!
まず、物が衝突する、擦れる、局所的に大きな荷重がかかるといった用途には、アルミニウム合金は不向きです。
アルミニウム合金はスチールに比べて柔らかいため、傷が付きやすく、物が当たるとへこみやすいのです。
これは硬さの問題ですが、硬さの基準は多種有り、非常に複雑なものですが、ここでは出来るだけ簡単に述べます。
アルミニウムは通常、「ブリネル硬さ(HB)」で、スチールでは通常「ビッカース硬さ(HV)」または「ロックウェルCスケール(HRC)」で表します。
ブリネル硬さは、直径10mmの金属球を試験荷重で押し付けて残った圧痕表面積を試験荷重で割って算出する方法です。
ビッカース硬さは、頂角136°の四角錐を試験荷重で押し付けて残った圧痕表面積を試験荷重で割って算出する方法です。
ロックウェル硬さは、頂角120°のダイアモンド円錐を試験荷重で押し付けた後のくぼみの深さを測定する方法です。
いずれも数値が大きい程、硬くなります。
異なる計り方なので、全く相当するわけではありませんが、換算表でピックアップすると
HV240=HB228=HRC20.3
HV480=HB448=HRC47.7
となっており、HVとHBは似た数値、HRCは1ケタ異なると覚えておくと解りやすいでしょう。
アルミニウム合金のブリネル硬さはA1050-H12でHB20、A2017-T4でHB105、A5052-H34でHB68、A6063-T5でHB60、A7075-T5でHB150くらいです。
スチールも合金により多種多様ですが、軸受鋼(SUJ2)などはHRC60~65という非常に硬いものまであります。
ここでは構造用に限って考えるとして、構造用アルミフレームに使用されている6000番台では、だいたいHB60~88程度です。
構造用の軟鋼(SS400、S25Cなど)ではHB120~130程度です。
なお、擦れるという事に対しては、アルミニウムでも硬質アルマイトや、その上にテフロンを付加した表面処理などにより、低摩擦、耐摩耗性を実現できます。
アルミニウム VS スチール 「耐食性」対決!
アルミVS スチール缶 耐食性(錆)対決!
次に耐食性ですが、スチールは塗装やメッキをしないと錆びてしまいます。
アルミニウム合金は2000番台や7000番台の高力アルミ合金では、アルマイトを施さないと容易に腐食しますが、5000番台や構造材に使用されている6000番台では、通常の環境では高い耐食性を持ちます。アルマイト処理によりさらに耐食性は増します。
ただし、構造用アルミフレームでは、切断面や中空穴内部に塩分や水分がかかると腐食することがあるので注意が必要です。
食品・薬品関係で水や過酸化水素で洗浄するような装置への使用には適しません。
このような高い耐食性が必要なところはステンレススチールが望ましいです。
ですから、スチールでは腐食が心配だが、ステンレスは高価でありそこまでは必要ないといったところには、アルミフレームが最適です。
耐食性については、その使用条件から適切な材料、表面処理を選択する必要があります。
アルミニウム VS スチール 「温度」対決!
アルミVS スチール缶 温度対決!
次に温度です。
アルミニウムの熱伝導率は、スチールに比べて約5倍と、非常に熱を伝えやすい材料です。
ですから発熱するものに接触させておくと非常に良く熱を伝えて放熱します。
熱源を取り付けたり、囲ったりする用途にはアルミフレームは適していると言えます。
ただし、アルミニウムはスチールに比べて線膨張係数の大きい材料であり、温度変化に対して約2倍の熱膨張があることを注意しておかなくてはなりません。
しかしながら熱伝導が良いため、同条件で使用すると、スチールほど温度が上がりません。結果的には大差ないでしょう。
熱膨張が悪影響を与えるような装置への使用は、注意が必要です。
20℃における線膨張係数は
アルミニウム:2.36×10-5
スチール :1.17×10-5
ステンレススチール:1.73×10-5
伸び量=温度差×部材長さ×線膨張係数
となります。
アルミニウム VS スチール 「振動」対決!
アルミVS スチール缶 振動対決!
最後に振動です。
振動に関しては、剛性、質量、固有振動数などが関連します。
基本は剛性です。
剛性を上げれば固有振動数も高くなり、共振も避ける事ができます。
つまり、振動に強くするには、アルミニウムでもスチールでも、剛性を上げることに尽きるのです。
ただし、鋳鉄などは減衰性を持っているため、精度が必要な加工機や、高速で動作する自動機のフレームに使用されており、これらをアルミフレームに置き換える事は困難です。
博士「どうじゃ、あるる。アルミとスチール、それぞれの特長がわかったかのぅ?」
あるる「はい! 比べてみると、ずいぶんと違うんですねー」
博士「どちらが優れているかではなく、この違いを理解していかに適材適所で使うかが、重要なんじゃ」
あるる「さすが博士! 含蓄あるお言葉!」
博士「・・・ (〃∇〃) てれっ☆・・・ いや、それほどでも・・・」
博士「ところであるる、最近ではHOTのコーヒーでもアルミ缶が使われていることを知っているかな?」
あるる「えっ? だって、アルミは高熱や圧力に弱いんじゃ…」
博士「ふぉっふぉっふぉ。確かにそうなんじゃが、あるものに限ってつかわれているんじゃよ」
あるる「あるものって?」
博士「ブラックコーヒーじゃ。もちろん、内側を特殊加工してあるはずじゃが、技術も進化しているんじゃよ」
あるる「すごいっ! 適材適所も進化してるんですねっ!!!」
博士「そのとおり。して、あるる。お前は将来、どんな場所で使えるようになるのかのう・・・ まだよく見えんのう・・・」
あるる「うわーん、はかせぇ〜。そんなこと、言わないでくださいよぅ〜(泣)」