いまさら聞けない基礎用語!【ア】#002 アルミニウム合金
公開日時:2021/10/27
アルミニウム合金 aluminum alloy
あるる「みなさん、こんにちは。基礎用語、案内役のあるるです。
前回は1回目に相応しく、「アルミニウム」について掘り下げてみました。今回はもう一歩突っ込んで、アルミニウムを見ていきますよ〜♪」
今月の基礎用語:ア#002
アルミニウム合金 aluminum alloy
あるる「合金を英語で『alloy(アロイ)』っていうんですねー。アルミニウム合金は『アルミニウム・アロイ』。 なんか『アロ〜ハ〜♪』な気分になるのは、あるるだけでしょうか(笑)
アロ〜ハ〜♪ アロ〜イ〜♪ アロ〜エ〜♪」
博士「あるるよ、今日もごきげんじゃな」
あるる「あっ、博士! 今日も来てくれたんですね!」
博士「ん、まぁな。あるるが何かやらかすのではないかと、気になってな」
あるる「んもう、博士ったら、あるるのことが大好きなんだから〜(ハート♪)」
博士「機嫌が良いのは何よりなのじゃが、『アルミニウム』と『アルミニウム合金』の違いは、ちゃんと覚えているじゃろうな?」
あるる「もちろんですっ!! ・・・と言いたいところですが・・・えっと、えっと・・・」
博士「やれやれ」
あるる「大丈夫です!! ちゃんと調べてみせまするるる〜〜」
アルミニウムとアルミニウム合金の違い
普段あまり意識しないと思いますが、実際に私たちが目にするアルミは、ほとんどがアルミ合金です。
アルミニウム合金の中で純度99.0%以上のものを「純アルミニウム」と呼び、他の元素(銅Cu,マグネシウムMg,ケイ素Si,亜鉛Zn,マンガンMn,ニッケルNiなど)を加えたものを「アルミニウム合金」と呼びます。
JIS H4000、JIS H4100、JIS H4040などのアルミニウム関連JIS規格においても、そのタイトルに、
「アルミニウム及びアルミニウム合金」と記されている通り、それぞれ区別して考えられています。
そもそも純アルミニウム(合金番号1000番台)は、耐食性が良く、電気伝導性、熱伝導性にも優れていますが、「強度が低い」という一面を持ちます。そこで、他の元素を加えて「アルミニウム合金」とすることで、強度をあげたり、腐食しにくくなったりと、アルミの特性を変化させるのです。
あるる「食いしん坊のあるるにわかるようにと、豆知識で博士は「めんつゆ」に例えて説明してくれました!」
【あるるノート#002】
アルミニウムは他の元素と合わせることにより
強度をあげたり、腐食しにくくすることができる
アルミニウム合金の種類
では、アルミニウム合金の特性を詳しく見ていきましょう。
1000系〜7000系までの7種類に分けられます。
●1000系
これは純度99.00%以上のアルミニウム、すなわち「純アルミニウム」です。
この材質は加工性、耐食性、溶接性、電気・熱伝導性に優れていますが、強度が低いのです。
身近なものではアルミ泊、装飾品、各種容器、日用品、放熱材などに使用されていますが、実は高圧送電線にも使用されています。
◎高圧送電に純アルミニウムが使用されるワケ◎
銅の導電率は約97%、純アルミニウムの導電率は約60%です。ところが比重は銅8.96に対して純アルミニウムは2.7と約3割です。つまり、同じ量の電気を流すなら質量は約半分となり、送電線の鉄塔強度を低くできるためコストダウン出来ると言うメリットがあるわけです。
ちなみに、合金となったアルミニウムの導電率は、30〜50%と低くなります。
●2000系
A2017(ジュラルミン)、A2024(超ジュラルミン)などが有名です。
ジュラルミンは鉄鋼に匹敵する強度を持ちますが、耐食性に劣るので適切な防錆処理が必要です。
◎ジュラルミン誕生にまつわる豆知識◎
この合金は1906年にドイツのデュレンでウィルムという人によって発見されたのですが、このデュレンとアルミニウムの造語でジュラルミンと呼ばれるようになりました。
実はウィルムは鋼のように加熱、急冷することで硬くならないかと試したところ、逆にやわらかくなってしまいました。失敗だと思ったのですが、しばらくしてから計りなおしてみたら硬くなっていて、自分の硬度計が壊れたのかと思ったらしいです。
この時間が経過する事で硬度が上がる現象を、「時効硬化」と言います。
これは合金として含有させた銅が、時間とともに結晶となって析出し、母材と結合して強度を上げる事になるためです。
引張強さは、A2017-T4で425N/mm2と一般構造用圧延鋼材(SS400)の400N/mm2と同等以上のものです。
切削性にも優れ、航空機や機械部品にも多く使用されます。
●3000系
この合金はマンガンの添加により、1000系の加工性や耐食性をそのままに強度を向上させたものです。
主な用途としては、複写機ドラム、アルミ缶(胴部)、住宅外装などがあります。
●4000系
この合金はシリコンの添加により、熱による膨張を抑え、耐磨耗性を向上させたものです。
他のアルミニウム合金の線膨張係数が、2.34×10-5程度であるのに対し、A4032では、1.96×10-5と熱による影響を受けにくくなっています。
主な用途としては、ピストン、シリンダヘッド、建築パネルなどがあります。
●5000系
この合金はマグネシウムを添加して強度と耐食性を向上させたものです。
マグネシウム添加量の比較的少ないものは装飾用など、多いものは構造材として使用され、多くの種類の合金があります。その中でもA5052は強度、耐食性、加工性、溶接性のバランスが良く、A5052-H34で引張強さは260N/mm2とアルミ合金全体の中で中程度の強度を持つ最も一般的な材料です。
さらに強度を上げたA5083や、溶接性を良くしたA5086など多種の合金があり、船舶、車両、建築用内外装、アルミホイール、化学プラント、圧力容器、板金製品など広い範囲で使用されています。
●6000系
この合金はマグネシウムとシリコンが一定の含有比で添加されいる熱処理型の合金です。強度、耐食性ともに優れていて、押出し性も良いため、構造材として広く使用されています。
その中でもA6063は押出し性に優れ、複雑な断面形状の形材が得られます。
主な用途としては、建築用サッシ、船舶、家具、家電製品、機械構造材、自動車部品などがあります。
◎NICのアルファフレームも6000系◎
6000系でも多種の合金があり、硬い材質ほど複雑な形状を精度高く成形する事が難しくなります。
当社のアルミフレームもこの6000系ですが、その用途によって異なった合金を選択しています。引張強さは185~270N/mm2程度とジュラルミンなどと比較すると落ちますが、複雑な形状を成形する事で便利さとともに剛性を確保する事ができるものです。
●7000系
この合金はアルミニウム合金中、最も高強度の合金です。最高強度を持つAl-Zn-Mg-Cu系合金と、銅を含まないAl-Zn-Mg系合金があります。
特にAl-Zn-Mg-Cu系合金の代表的なものがA7075-T6(超々ジュラルミン)で引張強さは570N/mm2と、一般構造用圧延鋼材(SS400)の400N/mm2を大きく越えるものです。
尚、この最強のアルミニウム合金であるA7075は、昭和11年に日本で開発されました。
他には溶接性の良いA7N01-T6(引張強さ360N/mm2)や押出性を良くしたA7003-T5(引張強さ314N/mm2)などがあります。
主な用途としては、航空機、車両、スキーストックなどがあります。
アルミニウム合金の特性まとめ
●電気伝導性(導電率=銅を100%としたもの)
1000系は62%程度
6000系では50%前後、
2000系、7000系では30~40%程度
●熱伝導性
1000系は0.23Kw/(m・℃)、
6000系は0.2 Kw/(m・℃)前後、
2000系、7000系では0.15 Kw/(m・℃)前後
●弾性と剛性
1000系から7000系、どの合金を使用しても弾性に差はなし。
剛性は、ほぼ同等で荷重をかけた時の変形量はほぼ同じ。
博士「アルミニウム合金の剛性については、また別途、説明の機会を儲けるつもりじゃ。お楽しみに♪」