いまさら聞けない基礎用語!【キ】#028 金属疲労
公開日時:2023/12/20
みなさん、こんにちは。基礎用語、案内役のあるるです。
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今月の基礎用語:キ#028
金属の起源(きんぞくひろう)
metal fatigue
あるる「あ”あ”あ”っっっ!!!」
博士「どうした、あるる!?(驚) 何事じゃ?」
あるる「博士ぇ〜、ジュースを飲もうとしたら、フタが取れちゃったんですぅ〜。
うわーーん、これじゃぁ飲めないよぉ〜(><)」
博士「どれどれ・・・ おー、見事にプルタブが折れておる。でも、そうそう簡単に折れたりしないじゃろう」
あるる「ええ・・・実は・・・・。このジュース、おじいちゃんの海外旅行のお土産なんですが、日本では売ってないらしいんです」
博士「ふむふむ」
あるる「で。飲むのもったいないなぁ〜、でも、飲みたいなぁ〜〜。飲もうかな? やめようかな? どうしようかな? やっぱり飲もうかな♪ ・・・なんてやっていたら、だんだん楽しくなってきちゃって・・・」
博士「何度も上げ下げしたんじゃな」
あるる「はい。呆れるほど・・・」
博士「ふぉーっふぉっふぉっふぉっ。さすがは食いしん坊あるるのじゃ。プルタブが金属疲労を起こすほど、いじり倒したんじゃな(笑)なかなかいないぞ、ここまでやれる子は」
あるる「褒めて・・・ますか?」
博士「もちろんじゃとも!(笑) よし、わしがなんとかしてやるから、それまで『金属疲労』について、しっかりと復習しておくんじゃぞ。よいな」
あるる「はい! ありがとうございます!! さすが博士、頼りになります!!」
金属だって疲労する
1954年の世界初のジェット旅客機コメットの空中分解、1985年の日航ジャンボ機の墜落事故、ともに金属疲労が原因となったものです。
金属は、弾性限度内の小さな応力であっても、繰り返しかかると破壊に至ることがあり、これを疲労破壊と呼びます。
応力がかかることで変形が生じますが、ある繰り返し回数の後に、ミクロンオーダーの非常に微細な亀裂を生じ、これが拡大し、そしてここに応力集中が起こることで、破壊につながるわけです。
その回数は応力の大きさにより、応力が大きければ少ない回数で、応力が小さくても、回数が多ければ発生します。
そして、特定の回数で疲労しない最大応力を疲労強度(疲れ強さ)と言い、この疲労強度と繰り返し回数の関係を表したグラフをS-N曲線といいます。
(S:Stress,N:Number of cycles to failure)
鋼材の場合には、ある応力以下であれば、繰り返し回数を増やしても疲労が起こらないラインがあり、この応力値を疲労限度といいます。
だいたい106~107回の間にS-N曲線がまっすぐになるポイントがあり、多くの鋼材ではこの疲労限度は、引張り強さの50~60%程度です。
しかし、アルミニウム合金では、このS-N曲線は下がり続け、疲労限度が存在しません。
例外として、AL-Mg系合金(5000番台)では、S-N曲線が107付近から水平になり、疲れ限度が存在しますが、他のアルミニウム合金でも、107の時の応力を持って疲労限度という場合があります。
5000番台、6000番台の疲労限度は、107回においてだいたい引張り強さの40~55%程度です。
107とは一千万回ですが、色々なものの長寿命化や、メンテナンス困難な場所への設置など、今後はそれ以上の領域も必要なケースが出てくるようです。
108回を越えるギガサイクルも研究されており、従来の疲労限度より低い応力でも破壊することがあるようです。
また、回転機器では、共振が疲労の原因になる場合があります。荷重以外に熱応力の繰り返しでも疲労は起こります。
それぞれ非常に難しい問題であり、明確な答えを求めることは困難ですが、このような現象があるという事を認識して、想定寿命から疲労強度を考慮しておくことが必要です。
もちろん、材料選定や熱処理・加工の仕上げなどにも注意を払うとともに、疲労破壊のきっかけとなる亀裂が生じにくいよう、シャープエッジを避ける設計なども重要です。
前回のクリープ現象、今回の金属疲労、ともに気付かないうちにじわじわと迫ってくるという事を知っておいてください。
「疲れ強さ」を考える
「金属疲労」を「強さ」の観点から考えることもできます。
日常会話では「打たれ強い」「我慢強い」といった言い方をしますが、金属疲労に関しては「疲労に対する強度」、つまり「疲れ強さ」という指針で考えるのです。
詳しくは、【今月のまめ知識 第5回】強さって何? 〜引張強さと耐力〜 を読んでいただきたいのですが、「疲れ強さ」とは、 荷重が常に変動したり、周期的に加え続けられたりすると応力条件が一定でも、小さな傷や応力の集中しやすい部位から塑性変形が起き、割れが生じることがあります。金属疲労と呼ばれるものです。
缶ジュースに付いているプルタブも、何度も繰り返して動かすと折れてしまいますよね。これも金属疲労の一つです。
高頻度で長期間にわたって、周期的に荷重がかかるような場合には、注意が必要です。
あるる「・・・・」
博士「どうしたあるる。やけにおとなしいのぅ」
あるる「あ、いえね。さっき面白がってやっていたことは、金属疲労をドンピシャで起こす行為だったんですね。かわいそうなことをしちゃったなぁ〜と、反省中なんです」
博士「おお、金属の気持ちを汲み取れるようになったか。えらいぞ、あるる。大きな進歩じゃの(笑)」
あるる「そして、以前学んでいたことを、こんなにもキレイさっぱり忘れている自分にも反省中です・・・」
博士「ふぉっふぉっふぉっ。素直でよろしい! 今日わかったならそれで良しじゃ」
あるる「そうですか・・・」
博士「ほれ、頑張ったご褒美じゃ!」
あるる「あっ!! ジュースだっ!!! どうやったんですか?」
博士「缶切りを使ったんじゃ。最近、めっきり缶切りの出番が少なくなったので、探すのに苦労したぞ」
あるる「ありがとうございます!!! 心していただきます! 博士もどうぞ。少しなら」
博士「(少しなのか)・・・それはどうもありがとう」