【今月のまめ知識 第51回】金属疲労

公開日時:2017/06/27

とある日の朝。珍しくあるるがおとなしい。

博士「どうした、あるる。今日なおとなしいのぅ」

あるる「あ、博士、おはようございま・・・あ、イタタタ(><)」

博士「大丈夫か? なんじゃ、怪我でもしたか?」

あるる「いえ、昨日、おじいちゃんの手伝いで山菜採りを散々手伝わされて・・・イタタ」

博士「筋肉痛か(笑)それは大変だったのぅ。でも、じいちゃん孝行、なによりじゃ」

 

博士「あるるよ、その筋肉痛も、筋肉疲労から起こることを知っておるかな?」

あるる「まぁ。。。確かに疲れていますが・・・」

博士「そして疲労は、筋肉だけじゃなく、金属にも起こるんじゃ」

あるる「え?金属も疲れるの?」

博士「ああ、疲れるぞ〜。以前説明したではないか?」

あるる「あ。すっかり忘れてました。てへ♪(ぺろ)」

博士「てへ♪ じゃないぞ。では、あらためてじっくり話すとしようかのぅ」

あるる「お手柔らかに〜、イテテテ」

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金属疲労とは


 

1954年の世界初のジェット旅客機コメットの空中分解、1985年の日航ジャンボ機の墜落事故、ともに金属疲労が原因となったものです。

 

金属は弾性限度内の小さな応力であっても、繰り返しかかると破壊に至ることがあり、これを疲労破壊と呼びます。

 

応力がかかることで変形が生じますが、ある繰り返し回数の後にミクロンオーダーの非常に微細な亀裂を生じ、これが拡大し、そしてここに応力集中が起こることで破壊につながるわけです。

その回数は応力の大きさにより、応力が大きければ少ない回数で、応力が小さくても回数が多ければ発生します。そして特定の回数で疲労しない最大応力を疲労強度(疲れ強さ)と言い、この疲労強度と繰り返し回数の関係を表したグラフをS-N曲線といいます。

(S:Stress,N:Number of cycles to failure)

 

S-N線図2

 

鋼材の場合にはある応力以下であれば、繰り返し回数を増やしても疲労が起こらないラインがあり、この応力値を疲労限度といいます。

だいたい106~107回の間にS-N曲線がまっすぐになるポイントがあり、多くの鋼材ではこの疲労限度は、引張り強さの50~60%程度です。

 

しかし、アルミニウム合金ではこのS-N曲線は下がり続け、疲労限度が存在しません。

 

例外として、AL-Mg系合金(5000番台)ではS-N曲線が107付近から水平になり、疲れ限度が存在しますが、他のアルミニウム合金でも107の時の応力を持って疲労限度という場合があります。

5000番台、6000番台の疲労限度は、107回においてだいたい引張り強さの40~55%程度です。

 

107とは一千万回ですが、色々なものの長寿命化やメンテナンス困難な場所への設置など、今後はそれ以上の領域も必要なケースが出てくるようです。

108回を越えるギガサイクルも研究されており従来の疲労限度より低い応力でも破壊することがあるようです。

また、回転機器では共振が疲労の原因になる場合があります。荷重以外に熱応力の繰り返しでも疲労は起こります。

 

それぞれ非常に難しい問題であり明確な答えを求めることは困難ですが、このような現象があるという事を認識して、想定寿命から疲労強度を考慮しておくことが必要です。

もちろん材料選定や熱処理、加工の仕上げなどにも注意を払うとともに、疲労破壊のきっかけとなる亀裂が生じにくいようシャープエッジを避ける設計なども重要です。

前回のクリープ現象、今回の金属疲労、ともに気付かないうちにじわじわと迫ってくるという事を知っておいてください。

 

あるる「なるほどぉ〜、金属も疲労するんですねぇ・・・なんか、妙に親近感を持ってしまいました(イタタ・・・)」

博士「なんじゃ、まだ痛いのか。若いのに、だらしがないのぅ〜」

あるる「すぐ痛みが出るだけマシですよ! 博士だったら三日後とか、下手すれば一週間後にイタタ・・・ってなるかもですよ!」

博士「それもそうじゃのぅ〜。ま、その前に、わしは山菜採りにははなっから行かんがな。山菜は食べるの専門じゃ!」

博士「よし。今夜はあるるが採って来てくれた山菜をツマミに、一杯やるとするかのぅ。ふぉっふぉっふぉっ、楽しみじゃ」

あるる「博士、これほど食いしん坊だったとは・・・さすが我が師匠・・・あ、イテテ」

 

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