アルファ博士の気ままにトーク♪ 第22話 太陽の塔 ~50年ぶりに再会した生命の樹 熱気の追憶! 夢は技術開発の動力源~
公開日時:2024/12/25
太陽の塔 ~これは何だ?!~
私が1970年の日本万国博覧会(大阪万博)を経験したのは、小学生低学年の時。夏休み中の2日間の経験ではありましたが、その後に強烈な印象が残りました。
それは単なる見学ではなく、まさに圧倒的なインパクトにさらされた「体験」「経験」といったものでした。その中でも最大のインパクトが「太陽の塔」でした。
万博会場の中央の「お祭り広場」の大屋根を貫通して、金色の顔を屋根の上に出している巨大な像に「これは何なんだ?!」と、よくわからない衝撃を受けました。
太陽の塔は万博会場の中心から万博会場全体に、圧倒的なエネルギーを放射していました。それはまさに「太陽の塔」の名前の通り、会場を照らす太陽そのものだったと思います。
そして今思えば、この圧倒的なエネルギーは、1970年大阪万博のあとも、この50年間、日本全体を照らしてきたのではないでしょうか。私も、太陽の塔が照射したエネルギーで、ここまでやってきたともいえると思います。
太陽の塔の作者、岡本太郎は、太陽、原始、生命、縄文土器などが持つ「根源的なエネルギー」を太陽の塔に反映しました。太陽の塔は、1970年大阪万博のテーマ館の一部として計画されましたが、出来たものは「人類の進歩と調和」といった理性的なテーマを大きく超えた、「原初のエネルギー」を放射するものになりました。
太陽の塔の内部:生命の樹 ~生命の賛歌~
太陽の塔は、その外見からもエネルギーを感じますが、内部にはそのエネルギーの源(みなもと)である「生命の樹」が立っています。それは生命の誕生から進化の過程を通して、生命の賛歌を表現しています。
作者の岡本太郎さんは、「生命の樹全体が一つの生命体であり、太陽の塔の血流なのだ」と言っていたとのこと。
また、最上部にいるのは、「人類(ホモサピエンス)ではなくクロマニョン人」だというのも、何かを示唆していると思えます。
以前「気ままにトーク」の「遠くて近いもの、第3弾!「生命」」(2024年6月)で触れましたが、生命の起源は一つ、全ての生物は、太陽や地球を親とする兄弟なのです。
テーマ館その立体構造
現在、太陽の塔は、万博記念公園の芝生の真ん中にポツンと立っていますが、万博開催中は大屋根の南寄り中央に立っていました。
万博中の見学経路は、正面の「調和の広場」から「地下展示」に入って、太陽の塔の内部の「生命の樹」を見ながらエスカレーターで登り、太陽の塔の右腕から大屋根に出て、大屋根の中の「空中展示」を見て、太陽の塔の脇に建つ「母の塔」のエスカレータで地上の「調和の広場」に戻るような立体的な構造になっていました。
今回の再訪問で特に注目したのが、その地下の部分でした。小学生の時の印象は「暗い場所」という、うっすらとした記憶しかなかったのですが、今回50年ぶりに確認することができました。それは「地底の太陽」を中心とする「根源の世界」でした。人間の根源をなす「心の源の世界」を現わしている場所です。
万博閉幕後、この場所は失われていましたが、2017年3月から始まった再整備により一部分が復活しました。
お祭り広場の大屋根や太陽の塔は、もともと一体の「テーマ館」として構成されていて、地下、太陽の塔、大屋根が、それぞれ、過去、現在、未来を現わしていました。
現在、地下展示(過去)の大部分と、大屋根の空中展示(未来)が失われて、それらを結びつけた太陽の塔のみが保存されているわけです。
なお、大屋根のトラス構造の一部は、お祭り広場であった場所の地上で保管されています。
EXPO'70パビリオンで、あの時の熱気を思い出す
現在、万博記念公園には、1970年の日本万国博覧会(大阪万博)を記念する「EXPO'70パビリオン」が、当時の「鉄鋼館」に整備されています。
ちなみに「パビリオン」というのは、最近あまり使わなくなった言葉ですが、この大阪万博の展示館はパビリオンと呼ばれていました。
このEXPO'70パビリオンでは、当時の会場の様子の写真や再現模型、ジオラマ、展示品の一部、各国パビリオンのユニフォームなどが展示されています。
当時会場を訪れた人であれば、あの時の熱気を思い出す内容になっています。でもそれとともに、もの寂しさを感じる場所であるともいえます。
印象的だったパビリオン
小学生の時の2日間の訪問で、特に印象に残っているパビリオンを紹介します。
日本館は、上からみると博覧会のシンボルマーク「桜の花」の5枚の花弁を模した5つの円筒形の建物から構成されていました。4番目の「4号館」のテーマは「未来」。中では、現在建設中の「リニアモーターカー」の小型試作モデルが快走していました。
住友童話館は、「メロンパン」のような形をした「銀色に輝くUFOが編隊で空を飛ぶような建物」で、「未来」を感じました。
アメリカ館は、巨大な「空気屋根構造」に目を見張りました。列に並んで「月の石」を見ました。
ソ連館は、高い鉄塔の上から「赤いカーテン」を広げたような構造が、印象に残りました。
この2つの国の建物と展示は、「超大国」といわれる国の大きさと技術を実感するものでした。
太陽の塔の寂しげな後ろ姿 ~今、もう一度、熱いエネルギーで、元気を出して進みましょう~
「夢を持つこと」「夢の実現に熱意を持つこと」は人生で大切なことで、それは技術開発の大きな動機にもなることだと思います。
でもこれは「そう心掛けることで出来ることではなく、自然とそう思わない限り、そうすることは出来ない」と思うのです。
「夢を持つこと」というのは、逆の面を考えれば「現状には満足できていない」ということでもあります。現在、スマートフォンや生成AIに没入して、私たちの脳が満足してしまっているとすれば、未来に夢を描くこと自体、難しくなっている可能性があります。
太陽の塔の背中の「黒い太陽」は、万博会期中毎日、世界中の人々によるさまざまな催しが行われたお祭り広場を照らしていましたが、今はがらんとした広場を寂しげに見下ろしています。
現代の日本で、『夢を持つこと=ハングリー精神』は、どこから得られるのでしょうか。
このまま日本の経済が落ち込んでいけば、ハングリー精神どころか、十分な食べものも手に入らない「真のハングリー時代」が日本に訪れる可能性もあります。
そういう「真のハングリーな時代」を経験しないと、「夢を持つこと」や「夢の実現に熱意を持つこと」は出来ないのでしょうか。
また、1970年万国博覧会のテーマ「人類の進歩と調和」に則せば、進歩(経済成長?)を遂げながら、安定した調和(平和?)は、どのように実現できるのでしょうか。
私は今回、万博記念公園を訪問して、もう一度、太陽の塔から熱いエネルギーをもらって、元気を出して、前に進みたいと思いました。いろいろなことを考えることになった今回の訪問でした。
今日のお話は以上です。