アルファ博士の気ままにトーク♪ 第16話「遠くて近いもの」第3弾! ~「生命」化石が語るその稀有な存在、温泉につかって思いをめぐらせる~

公開日時:2024/06/26

何か忘れている気がする・・・

「遠くて近いもの、なーんだ?」

このなぞなぞ、覚えてらっしゃるでしょうか。


その「第1弾」は、2023年10月の気ままにトーク第8話『20年ぶりの天体望遠「天を仰いで、ビックリ仰天の宇宙」で、続く「第2弾」は、2024年1月にお届けした第11話 「岩石への関心」~地球46億年の歴史に触れました~


で、たっぷりとお話しました。


その後、しばらく日が経ちましたが、その間、何か大事なものを忘れているような、なんともいえぬ居心地の悪さを感じていました。

 

そんなある休日、富山市内にある「天狗平の化石層」を見に行った時に、ふと思い立ったのです。

 

自分の一番近くにいるものは、「自分」です。「自分自身=生命」と言ってもいいでしょう。しかし、その起源はとてつもなく古く、遠い・・・。これぞ間違いなく3つ目の「遠くて近いもの(近くて遠いもの)」でしょう!!!

 

ということで、「宇宙(そら)」と「地(石や鉱物)」に続いて、今回は「遠くて近いもの」第3弾として、「化石=いのち」にスポットライトを当てていきたいと思います。

 

 

 

「化石=いのち」

生命や生物や種の起源に近づく手段が、地層の中に保存されてきた化石。富山県の地層は、近所で見学した地層でも5百万年前から1千万年前に形成され、さらに、富山県南部の丘陵地域の地層は大変古く、1億数千年前のものです。

そして、われわれ人類「ホモ・サピエンス」の誕生が25万年~40万年前、霊長類の祖先の誕生がおよそ8500万年前とされています。

地球での生命の誕生は、およそ40億年前だと言われています。

第2弾でご紹介した「日本最古の石」が20億年前、世界最古の石が40億年前のものですから、生命誕生の歴史を辿っていくと、人類の誕生は「つい最近」という感覚になってきます(単位が違います)。本当に遠くて近い・・・。

そんなことを考えていたら、以前、富山県の地形と地質の興味で見学した富山市科学博物館に、化石の展示があったことを思い出して、再び行ってみることにしました。

天狗平の化石層(1000万年前〜500万年前)

天狗平の化石層 白い貝殻がたくさん見えている

富山市科学博物館で「手取層群」と出会う

富山市科学博物館にやって来ました。


以前訪れた時は、もっぱら地形や地層に興味を持っていたので、化石の展示はほぼスルー。改めて見ると、富山の化石や恐竜に関する展示がたくさんありました。


まずは、富山県の古い地層について見ていきましょう。

富山県の南部に分布する古い地層「手取(てどり)層群」は、約1億数千年前、恐竜が存在していた「中生代」の地層です。

 

その地層は、富山県から石川県、そして福井県にまたがる丘陵地帯に分布しており(一部は岐阜県と新潟県にも及びます)、石川県を横切る「手取川」から名付けられました。

富山県の地質図 南部には恐竜がいた中生代の地層「手取層群」「来馬(くるま)層群」が分布

たくさんの足跡化石見つかる 富山にも恐竜がいた?! 

富山市の南部(旧大山町)では、古い地層から、多くの「足跡化石」が見つかっています。


富山市科学館では、恐竜の足跡がたくさん付いた地層面を現地でシリコンで型取り、FRP樹脂でレプリカを作成し、それを壁面に立てて展示しています。

 


下の写真は「恐竜の足跡のカベ」は、縦3m、横5mほどの大きなもので、その面にさまざまな足跡が、たくさん付いています。

 

「足跡化石」というのは、名前の通り、恐竜などの動物が、湿地の柔らかい地面を歩いた時に地面についた「足あと」が化石として残ったものです。

 

ふつう柔らかい地面についた「足あと」は、雨や風で、すぐに崩れてしまい、形は残りませんが、崩れる前に泥や砂が足あとのくぼみに溜まった場合のみ、その形を保持したまま固まって、化石になったのです。

 

足あとの種類は多彩で、獣脚類、鳥脚類、竜脚類、ヨロイ竜類、翼竜類、鳥類など、その頃生息していた恐竜の様々な足あとが残っています。

 

ちなみに、恐竜の種類の名前に「~脚類」とついているのは、足の構造や形に特色があるからですね。鳥脚類の恐竜は、現代の鳥と似たような足の構造と、3本の足の指を持っていることから、「鳥の脚」という名前がついたとのことです。

 

現代の鳥類は恐竜の末裔といわれていますが、現代の鳥類につながっているのは鳥脚類ではなく「獣脚類」だというのも面白いです。

 

恐竜足跡のかべ(レプリカ

足跡をつけた恐竜たち

福井県勝山市「野外恐竜博物館」で発掘体験 ~これは何?~

さて、この古い地層群である「手取層群」からたくさんの恐竜の化石が発掘されていますが、中でも国内で最も多くの恐竜の化石が見つかっているのが、福井県勝山市北谷町の杉山川沿いの「勝山恐竜化石産地」です。

 

 

昭和57年(1982年)、ワニの全体化石が発見されたのをきっかけに、本格的な発掘調査が開始され、恐竜の化石が次々と発見されました。


平成29年(2017年)には、発掘された数々の恐竜の骨格化石と、発掘された場所が、国の天然記念物「勝山恐竜化石群及び産地」に指定されました。


天然記念物に指定された恐竜化石は、「フクイラプトル」「フクイサウルス」「フクイティタン」「コシサウルス」「フクイベナートル」です。


これまで1次~4次の発掘が行われてきて、今後、隣接する場所で5次の発掘が行われる予定です。

 

6月初旬の休日に、この発掘場所に2014年に開設された「野外恐竜博物館での発掘体験」に参加してきました。


発掘場所を見学してから、発掘した化石などの展示を見学、そのあと、おまちかねの「発掘体験」でした。


岩を割るための「タガネとハンマー」そして岩の破片から目を保護するための「ゴーグル」を借りて、発掘体験開始です。


こぶし大サイズの黒い泥岩をコツコツとタガネとハンマーで細かく割っていきます。その岩の表面をよく見ると、すでに、黒く光る小さなモノがたくさん付いています。これは植物の化石とのこと。


コツコツと割っては、その表面をよく目で見て観察、何か岩と違うものはないか・・・?


すると、何個目かの岩を割った時、その表面に、岩とは違う「木炭のような柱状の何か」が見えました。太さは5mmぐらい、長さは20mmぐらいです。

 

ちょうどその時、指導役の研究員の方が「どんな感じですか?」と声をかけてくれました。


「こ、これは何かでしょうか?」と尋ねると、研究員の方はにわかに目の色を変えて「これは骨です! 研究対象になるので登録します」とのこと。

 

なんと偶然にも「何かの骨」を発掘してしまったのです!!

 

研究対象なので、現物を持ち帰ることはできませんでしたが、写真を何枚か撮らせてもらいました。


発掘体験「持ち時間30分間」での幸運でした。
別の石は1個持ち帰りOKとのことで、とても良い記念になりました。

 

発掘場所の見学

タガネとハンマーを借りて、黒い岩をコツコツ

出たー!「何か」の骨!

生命の起源は「温泉の中」?!

今、読んでいる本、イギリスの古生物科学者リチャード・フォーティによる「生命40億年全史」、これは面白いです。

この本では、いろいろと、驚きの事実と学説が、それらに関係する人びとの物語と共に、生き生きと語られています。

 


地球上の生物は、植物も動物も、バクテリアから象まで、単細胞のミドリムシから人類まで、すべて同じ特徴で出来ている(=起源は1つ)ということ。もし、生命の起源がいくつかあれば、現代の生物も基本的な構造が何種類かあってもよいはずだが、現実にはそうなっていません。

 

生命の起源が1つだけ、ということは、数十億年の間に、地球上で生命が発生し継続できた数は1つだけ、ということになり、極めてまれ(稀有な存在)だということになります。

 

生命の誕生には諸説あり、

・最初の生命は、初期の地球の100℃以上の「煮えたぎる硫化水素の釜の中」で発生したという説

・生命の材料は、雷の放電によって、アミノ酸などが生成された、との説、

・その生命の材料は、地球の出来た頃、またそれ以降に宇宙からやってきて地球にぶつかった「彗星」や「隕石」に起源がある、との説 などなど・・・。

 

また、これらの生命の材料や部品が揃ったとしても、その設計図や、自己複製能力はどのように出来たのか、大きな謎は残ります。

 

私は生命が発生した場所は、厳かで静穏な場所なのではないかと、何となく(勝手に)イメージしていましたが、これらの話から、実は激しい動きの厳しい条件の中で生まれたのかもしれません。

 

 

富山県の立山にも、これら「生命が生まれた激しく厳しい場所」を想像できる場所があります。立山黒部アルペンルートの最上部、標高2400mの室堂ターミナルの近くの「みくりが池」です。

 

ここは元、火山の火口だったところですが、そこから少し下ったところで、今も硫化水素の噴気を活発に出しているのが「地獄谷」です。

 

現在は火山活動が盛んになって、硫化水素のガスの噴出量が多く、ガス濃度が上がっているため、周辺は立ち入り禁止になっています。

立山室堂のみくりが池は火口湖

立山室堂の地獄谷 硫化水素のガスを噴出していて、周辺は現在立入禁止

宇奈月温泉につかってリフレッシュ

フォーティ氏が語る「生命は、100℃以上の硫化水素の釜の中で発生」説。温泉というには熱すぎますが、温泉にのんびりつかりながら「生命の不思議を考える」というのは、温泉大国日本ならではの素晴らしいリフレッシュ法ではありませんか!

 

ということで、先日、新緑の美しい5月の休日に、富山市からほど近い、宇奈月(うなづき)温泉へ行ってきました。


宇奈月温泉は、富山県の東部、黒部川が山あいの峡谷から平地に出る場所にあります。富山市内から、車では、北陸自動車道を使えば、40~50分、鉄道では、富山駅から富山地方鉄道で2時間、または「あいの風とやま鉄道」と富山地方鉄道を乗り継げば80分ほどです。

 

今回、宇奈月の温泉街から、さらに黒部川の上流方向に3kmほど入ったところにある「とちの湯」に行ってみました。

ここは平成14年(2002年)に開設された、黒部市の市営の入浴施設です。景観が素晴らしく、宇奈月ダムによってできた「宇奈月湖」の湖畔の自然にぐるり360度囲まれています。

屋内と露天のお風呂があって、露天風呂からは、黒部の山々を間近に望むことができます。


訪問した日は、残念ながらたまたま臨時休業で、このお風呂には入れませんでしたが、代わりに宇奈月の老舗旅館のお風呂に入って、黒部川の流れと山の新緑を見ながら、のんびり、リフレッシュすることができました。
無色透明のまろやかなお湯でした。

 

宇奈月温泉のお湯は、黒部川の7km上流の黒薙温泉から引き湯されていて、源泉では92~98℃と高温とのことですが、そこから7kmを引き湯しても、宇奈月温泉で約60℃、湯量も豊富です。

宇奈月温泉は、大正13年(1924)に、黒薙温泉からの引湯管が敷設されてから、黒部川の電源開発(水力発電のためのダム建設)と共に発展してきました。

宇奈月温泉とちの湯の前から見た宇奈月湖と黒部の山々

今日は「遠くて近いもの 第3弾」として「生命、化石が語るその稀有な存在」の話題をお届けしました。

 


「生命の起源」に関する問いは、この世で最も不思議で難しいものであるとも言えるでしょう。極めて希な条件で発生した生命、それを生んだ地球の環境と歴史が、地層に記録されていました。


生命は「煮えたぎる硫化水素の釜」から発生したといわれ、そのような、地球と生命の歴史を思いながら、宇奈月温泉のお湯につかって、ゆったりいのちのリフレッシュをすることができました。

 

今回のお話は以上になります。

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