【今月のまめ知識 第97回】標準化について

公開日時:2021/04/21

とあるのんきな朝のひととき

あるる「・・・おおーーー、やっぱり同じだ!!」

博士「おはようあるる。朝から賑やかじゃのう」

あるる「あ、博士、おはようございます。見てください、スゴイことがわかったんです!」

博士「そうか? 何がわかったのじゃ?」

あるる「なんと!! おじいちゃんのラジカセと、あるるの目覚ましのネジが同じなんです!! ほら、これ、見てください!!」

博士「ほぅ」

あるる「このラジカセは1980年代物。一方目覚まし時計は令和3年に作られた最新型! なのに同じネジを使っているなんて、大発見ですよね!!ね!!ね!!♪(はぁはぁ←息が荒い)」

博士「・・・あるるよ・・・興奮気味のところ申し訳ないのじゃが・・・ネジは随分前に標準化されておるから、同じでも不思議はないんじゃよ」

あるる「えっ?! そうなんですか?!」

博士「まぁ、世の中の常識というか・・・少なくとも技術者はみな、知っておると思うぞ」

あるる「がーーーん(T-T) 世紀の大発見だと思ったのに・・・」

博士「ふぉっふぉっふぉっ。でも、その着眼点は素晴らしいぞ! 比べてみようと思ったところがすでに立派な技術者目線になっておる。えらいぞ、あるる」

あるる「てへ、それほどでも・・・(照) でも、「ひょうじゅんか」?ってなんですか」

博士「あるるよ、『規格』という言葉は聞いたことがあるじゃろう?」

あるる「はい。なんかの決まりごとですよね?」

博士「そのとおり。世の中は混乱が起きないように、様々なルールが決められておる。ネジはその代表的な存在ともいえるのぅ」

あるる「へ〜、どんなルールなんだろう・・・?」

博士「(にやっ)知りたいかの? 知りたかろう?? のぅ?」

あるる「(しまった、博士に火をつけてしまった・・・)はい、よろしくお願いします!」

我々はよく「標準」や「規格」という言葉を使います。


それは製品としての標準品、作業手順の標準化、規格としての標準など色々な意味で使用されます。


標準品を使おう、標準化しようなどは効率化に重要な事でもあり、今回は標準、標準化を掘り下げてみたいと思います。

標準とは

まず、「標準」を大辞泉(デジタル大辞泉ver.3.19.1)で調べてみると

① 判断のよりどころや行動の目安となるもの。基準
② 平均的であること。また、その度合い・数値。並み。

 

次にJISを調べてみると
JIS Z 8002:2006 付属書JA関連用語

◎標準(standard )

 a)関係する人々の間で利益又は利便が公正に得られるように、統一し、単純化を図る目的で、
  もの(生産活動の産出物)及びもの以外(組織、責任権限、システム、方法など)について定めた取決め。
 b) 測定に普遍性を与えるために定めた基本として用いる量の大きさを表す方法又はもの

  (SI単位,キログラム原器,ゲージ,見本など)。

◎デジュール標準 (de jure standard )

 一般に認められている標準化団体が作成した又は作成している標準。 注記 公的標準ともいう。

◎デファクト標準 (de facto standard )

 市場において広く利用されている標準。 注記 事実上の標準ともいう。

◎フォーラム標準(forum standard)

 幾つかの団体(企業など)が協力して自主的に作成した又は作成している標準。 注記 自主調整標準ともいう。

また、あらかじめ定める「先取り標準」と、既存の標準,慣習などをまとめて定めた「後追い標準」があります。

そして標準化(standardization)とは、同じくJIS Z 8002:2006において以下のように定義されています。


「実在の問題又は起こる可能性がある問題に関して、与えられた状況において最適な秩序を得ることを目的として、共通に、かつ、繰り返して使用するための記述事項を確立する活動。」
となっています。


平たく言うと標準に合わせる。

標準に従って統一することで互換性を持たせる活動という事になります。

工業の歴史において標準化

工業の歴史において標準化の順序は
長さなどの単位の標準化 → ネジの標準化 → 部品の標準化 → 工程の標準化

この中で単位については、今月の豆知識【第31回】単位について
https://alfaframe.com/mame/others/10234.html


工程については、【第94回】ライン生産とセル生産
https://alfaframe.com/mame/others/20650.html


で取り上げています。

 

ネジの標準化

この中で最も偉大な標準化は何といっても『ネジ』ではないでしょうか。


ねじは紀元前からあったようですが、締結用として利用した最古の記録はレオナルド・ダ・ヴィンチのスケッチとのことです。

締結の道具としてのネジは偉大な発明ですが、互換性がなければ産業用途にはならず、互換性を持つためには精度高く製作できる事と規格化が必要となります。


まず、精度高く製作するという事においてイギリスのヘンリー・モーズリーは、ねじ切り用旋盤を1800年ごろに開発しました。

そして、自社工場で使用するネジを標準化しました。

 

次に、その弟子のウィットワースがイギリス全土から集めたネジの平均を取って標準化を行ったことがネジの規格の始まりと言われています。

その後、世界中でいくつもの規格が出来ましたが、ISO(国際標準化機構)によって1957年から国際的に互換性のあるねじ系列の確立として国際標準化が始まりました。

日本では1965年と1968年に日本工業規格(JIS)が改正され、一般的に「ISOメートルねじ」を使用し、航空機その他特に必要な場合は「ユニファイねじ」を使用することと制定されました。

ここで一般的に「ISOメートルねじ」へ移行するにあたり、一部のサイズでネジピッチや六角頭の2面幅(スパナが掛かる幅)の変更が生じました。
これは多くの利害関係者がいる中で二重管理など大きな痛みを伴い、その苦労は大変なものであった事でしょう。


しかしこの取り組みにより、世界での貿易取引が円滑に進み、日本の工業の国際競争力が格段に強化されたわけです。

部品の標準化

現在はIT機器においても、USBやHDMIなどの接続ポートなど標準化されたものの恩恵は偉大です。


元々、標準化は種類が増えて無秩序になることを防いだり、互換性を持たせる、生産性を向上させるなどが目的だったわけですが、近年においては環境対応で廃棄時に分解、リサイクルしやすい設計の国際標準化が進められています。


標準化というのは言ってみればルールづくりであるわけですが、スポーツの例をみればわかる通りルールを制定した側に大きなアドバンテージがあります。


標準には社内標準から業界標準、国家標準から国際標準まであり、国際的なルール作りの場合など、技術面以外に政治的な面においても色々な策略が出てきますが、結果として利用者側には互換性という面で大きなメリットをもたらします。

 

工程の標準化

標準化にも色々あり、作業の標準化はマニュアル化となり技能の高い人にとっては面白くないと言う側面もあるでしょう。

また、設計においては標準化された部分はブラックボックスとなりやすいという事もあり、標準化案を出すとそれでは技術力が低下してしまうという意見すら出る場合がありますが、本当にそうでしょうか?


トヨタ生産方式において「標準化なくして改善なし」と言われる通り、まずは標準化しなければ検討も改善も出来ないという事ですが、この内容についてはwebや書籍がありますので興味のある方は調べてみてください。


品質管理においては標準化とは改善し続けることになります。

その場にとどまるのではなく、継続的に改善し技術力を向上させるための標準化です。


尚、統計学における標準化は、与えられたデータを平均が0で分散が1のデータに変換する操作の事を言い、一見異なった意味のように思えますが、実は標準を基準とした分布を分析することで検討し改善するという事につながりますね。

 

色々な標準化がありますが、素材なのか部品なのかユニットなのか完成品なのか、プロセスなのか。


標準化は内部においては改善を、外部に向けては互換性と差別化を実現することで、全体と個の両方を進化させるものであり、物もプロセスも、標準化したり、標準品を活用することで生産性の向上が図れます。

博士「どうじゃ、あるる。標準化について理解できたかの?」

あるる「はいっ! すごいですねー。こーんな小さなモノなのに、きっちり決まり事があるなんて・・・ネジひとつにもドラマあり、なんですね」

博士「おお、良いことをいうではないか。今日は冴えておるな」

あるる「計算があまり出てきませんでしたから(笑)よーし!!やるぞーーー!!」

博士「どうした?何をやるのじゃ?」

あるる「やだなー、博士。決まっているじゃないですか。これからいろんなネジを調べるんですよ!」

博士「そうか・・・。くれぐれも外したネジをなくすのではないぞ」

っとあるる「はいっ!わかってます!! では行ってきまーーーす♪」

博士「きっとネジをなくして、泣きながら戻ってくるじゃろうぅ。まぁ、その時は優しくフォローしてやるとするか(笑)」

 

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