【Q&A】No.2 アルミフレームは何度くらいまで高温に耐えられますか?
公開日時:2013/05/28
【Q】アルミフレームは何度くらいまで高温に耐えられますか?
高温に加熱された材料のストッカーに、アルミフレームを使用したいと考えています。
何度くらいまで耐えられますか?
【A】当社のアルミフレームは、150℃程度までなら十分に耐えられますが、現実的には母材温度120℃程度まで使用可能と考えて良いでしょう。
アルミフレームの基本特性
まず、基本的な性質として、
- アルミニウムの融点は約660℃である。
- 当社アルミフレーム表面のアクリルコーティングは、150℃以下なら耐えうる。
- アルマイトは110℃前後からクラックが生じるが、常温になると戻るので問題ない。
- しかし、母材が変形するような高温になると割れが生じる。
ということが挙げられます。
現実的には寸法、強度の条件が許せば、母材温度120℃程度までは使用可能と考えて良いでしょう。
寸法の条件とは?
「寸法の条件」というのは、温度による寸法変化の事です。
各材料の線膨張係数は(20℃において)
例として、アルミニウムの1mの棒が30℃上がると
となり、0.708mm伸びるわけです。
寸法の長い別の材料が取り付けてある場合は、お互いの変形量の差によって弓形に反ってしまう事もあります。
この場合は、取りつく部品を分割し、短くして並べる事である程度緩和できます。
強度の条件とは?
「強度の条件」と言うのは、温度が上がる事で強度が低下するという事です。
強度を表す耐力値は、25℃を100%とした場合
100℃で97%、150℃で86%、205℃で31% と低下します。
- ■アルミニウム合金は、温度により強度が変化する
*A6063S-T5での例
ここでは100〜120℃程度なら、さほど大きな低下ではないと見えますが、実は「クリープ(creep)」という問題があります。
クリープというのは、荷重を掛け続けた場合、時間の経過とともに歪(ひずみ)が増大する現象です。
つまり、最初は問題なかったのに1ヶ月後に少し変形し、半年も経つと大きく変形していた・・・という事にもなるわけです。
実は、アルミニウムは高温で、このクリープが非常に起きやすくなるのです。
その量は諸条件により異なりますが、例として、一定の応力を継続的に掛け、1000時間経過後の変形を見てみると、
- 50℃では耐力の85%程度の応力で0.1%の変形
- 100℃では耐力の70%程度の応力で0.1%の変形
- 150℃では耐力の34%程度の応力で0.1%の変形
- (0.1%の変形というのは、1mの棒に重りをぶら下げていたとすれば、1mm伸びたという事)
つまり、使用は可能ですが、強度的にはかなりの余裕を見ておく必要があります。
- ■アルミニウムのクリープ現象は、100℃近傍のかなり低温測から起こる
(出典:「アルミニウムハンドブック」第6版)
*A6063S-T5での例
通常の設計においては安全率を見ますから、応力は耐力の3割未満であることが多いと思われます。
しかし高温となり、またわずかな歪が許されないような場合には、さらに慎重に検討し、応力安全率に余裕を見る事が必要です。
これはあくまでアルミフレーム自体がその温度になった場合の事です。
高温の環境内に置かれる場合や、広い面積で高温の物に接触している場合には、慎重な検討が必要ですが、熱源に非接触の場合には多くの場合、あまり心配する必要はありません。
熱の伝わり方には、伝導、輻射、対流があります。
アルミニウムは非常に熱伝導性の良い物質です。よく放熱板などにアルミニウムが使用されていますが、アルミニウムは接触する熱源から受けた熱を素早く全体に伝え、周囲の空気に熱伝達します。熱を伝達された空気は対流を起こし、どんどん周囲に拡散します。
またアルミニウムは熱線(電磁波)を非常によく反射します。夏場に駐車中の車内が焼け込まないようにフロントガラス内側に立てかける遮熱シートの表面はアルミですが、直射日光を受けていたこのシートをたたむときに、それ程熱くなっていないことからも、わかると思います。