いまさら聞けない基礎用語【ス】#052 寸法公差

公開日時:2025/12/24

みなさん、こんにちは。基礎用語、案内役のあるるです。
今回注目する基礎用語は、コチラ!
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今月の基礎用語:シ #052
寸法精度・寸法公差
(Dimensional accuracy/Dimensionaltolerance)

あるる「うむむ・・・」

博士「おや、あるる、どうしたのじゃ? ケーキの前でそんな真剣な顔をしているなんて珍しい」

あるる「あ、博士。助けてください! このケーキを正しく5等分にしたくて計算したら、一人当たり厚さ4.2センチ。どうやれば正確に切れるのか、悩んでたんです」

博士「なんと! こんなにキッチリ&真剣なあるるを、初めて見たと入っても過言ではないぞ」

あるる「おじいちゃんの手作りなので、みんなに平等に食べて欲しいんです!!」

博士「そうかそうか。いつもおじいちゃん思いでえらいのぅ」

あるる「では、思い切ってカットするので、博士、そちらで定規を持っててください!」

博士「そんなに力むではない。このケーキの寸法公差は大体2ミリ程度じゃろうから、まずは4センチのところに印をつけておくんじゃ」

あるる「はいっ!! ・・・・って、博士、今、なんて言いました? すんぽう、こう・・・さ?」

博士「うむ。寸法公差じゃな」

あるる「それです。『誤差の範囲』なら聞いたことあるんですが・・」

博士「まぁ似て非なるものじゃ。にやっ。ケーキをいただいくま絵に「公差」についての復習をしようかのぅ」

あるる「えっ? 食べる前・・・? でも、スッキリしてから食べたいです。お願いします!」

 

寸法公差

アルミフレームは外観が美しいため、寸法も高精度だろうと思われやすいのですが、実際には以下のような寸法精度及び寸法公差となっています。

アルミフレームの寸法公差例

基本的にはJIS H4100断面寸法の許容差がベースとなります。

 

金型で作っているものなので、寸法変化が起こらないと思われがちですが、その工程は「まめ知識 第4回」アルミニウム合金押出し形材ができるまで」で説明した通り、約500℃に加熱したビレットをコンテナと呼ばれる筒の中に入れます。

 

このコンテナの前側にはダイス(金型)があり、後ろからプレスで押します。

加熱したビレットをダイスから出た形材は、 30~50m 程度の 1 本の棒になります。

 

ファンにより冷却されるのですが、形状の違いで一様に冷えないため、必ず歪や反りが生じます。これをストレッチャーと呼ばれる装置で両側を掴み、引っ張って矯正します。

 

引っ張りが足りなければ歪が残り、引っ張り過ぎると形材が細くなってしまいます。

 

この後、所定の寸法(通常、3~6m程度)に切断し、強度を高めるためにテンパー炉に入れて加熱し、熱処理を行います。

 

アルミフレームの製造工程

このような工程のため、機械加工のような高い精度は期待できません。

 

ですから、アルミフレームを位置決め固定したい場合に、下図のような設計をすると、「入らない」あるいは「ガタが大きい」という不具合が発生してしまうことがあります。

 

アルミ押出材の寸法誤差

このような場合は、片側の面を基準として突き当て、反対面は調整式として押し付けることが必要です。

 

また、面を切削加工して精度を高めるという方法もありますが、断面寸法だけではなく、ねじれや曲りもあるので、加工機のバイスで側面をクランプすると、このねじれ、曲りが矯正された状態になります。

 

この状態で切削加工し、バイスをアンクランプすると、そのねじれ、曲り分が戻るので、寸法精度は出ても平面度が出ていないものになります。

 

寸法精度も平面度も出そうとすると、4面すべて切削加工する必要がありコストも手間もかかるものとなってしまい、アルミフレームを使用するメリットがほとんど無くなってしまいます。

 

アルミフレームの便利さを充分に生かすためには、そういった事を理解したうえで、精度の不足分を逃がす設計をすることがコツになります。

 

参考

参考として、アルミニウム合金押出し形材の曲がり・平らさ・ねじれの許容差(JIS H4100の抜粋)を示します。

通常よく使用する部材は、[外接円38を越え300以下]、この特殊級での曲りの許容差は、1×L/1000以下となっています。

仮に全長2000mmで考えましょう。

 

この場合の許容差は、1×2000/1000=2mmということになります。

では、精度が必要な場合はどのようにするか、これは必要な要求精度により異なります。

アルミフレームを使用していて2mで2mmも曲がっているという経験はあまりないと思います。

実は実際にはほとんどのものが0.5mm以内には出来ているのですが、数%レベルでそれを越えるもの、そしてJISの許容差に近いものがあります。

要求精度の高い、百分台~0.3mm未満を求めるのであれば機械加工が必要です。

要求精度が0.5mm以上の場合、検査・選別を推奨します。

定盤に載せて曲り量をすきまゲージで確認するという簡単な検査で、数%未満のものを除外します。

検査費用と歩留まりによるロス費用を考えても、機械加工と比較すると格段に安価となります。

 

上記の数値は保証するものでは無く、部材の大きさ、形状により異なりますが、安価に精度を求めたい場合には、検査・選別を有効な方法のひとつとしてお考え下さい。

 

博士「どうじゃ、あるる。寸法公差のこと、思い出したかの?」

あるる「はいっ! 素材の特性を良く見て、知った上で、設計をしなければならないってことが、よくわかりました!」

博士「よし! ここ、大事なところじゃから、忘れんようにな」

あるる「はいっ! すべてキッチリキチキチに正確にやればいいってもんでもない、ってことですね! よ〜し、来年はもっとゆとりを持つぞ〜〜」

博士「考え方はあっておるが、ゆとりを持つのと怠けるのとは違うからの! そこだけはキッチリしておくように」

あるる「てへへ。もちろんわかっていますとも! ささ、博士、いろいろわかってすっきりしたところで、食べましょう。ケーキ、食べましょう!!」

 

それではみなさま、良い年をお迎えください。みなさまに幸多かれ!!

 

 

メリークリスマス&ハッピーニューイヤー!

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