【今月のまめ知識 第12回】ネジはなぜ締まる? なぜ緩む?(後編)

公開日時:2014/03/18

アルファ博士02

 

博士「おはよう、あるる。今日は前回の続き、楽しい“ネジ”の話をするぞ。

ところで前回の話は、ちゃんと覚えているじゃろうな?」

あるる「もちろんですよ! あの日から、ネジが夢の中にたびたび登場するようになって・・・・」

博士「おお、それはすごいのぅ」

あるる「今朝も誰かが突然、背後から近づいてきて、ボクの頭のネジを“キュ〜っ”と締めて行ったんですっ!! 

あれじゃ、締め逃げですよ、締め逃げ!」

博士「ふぉっふぉっふぉっ。まるで、わしの思いが伝わったかのようじゃな」

あるる「もう、博士ったら〜」

博士「では、あるるのネジがちゃんと締まったか、さっそく試すとするかのぅ」

あるる「・・・はかせぇ、あくまでも夢ですからね、夢…。おてやわかに…(モジモジ)」

 

 

先月も「ねじ」についてお届けしましたが、

今回は前編とはまた違った視点から、「緩みにくい使い方」について説明します。

 

 

ボルトの“長さ”と緩みやすさの関係


 

ネジの緩みにくさには、ボルトの長さが関係しています。

「ボルトの長さ」とは、ボルト頭の座面から、メネジ入口までの長さです。

 

前回、ボルトは非常に強いバネであるという説明をしました。

バネであるということは、長ければバネ定数が小さくなります。

つまり、長さが2倍であれば、同じ軸力を掛けたときに、

その伸び量は2倍であるということです。

 

前号でお話した緩む理由からもおわかりいただけると思いますが、

伸び量が大きいということは、色々な変化に対して軸力が低下しにくい、

つまり“緩みにくい”ということになります。

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長さ2倍 ⇒⇒⇒ 伸び量2倍 =  緩みにくい!

 

アルミフレームの形状では、

できるだけ深い位置にナット入口があることが有効なわけです。

 

これは、隣の側面のナット溝との位置関係もあり、深さには制約がありますが、

ムク材にネジがある状態よりは長さという面で有利になります。  

002
当社のアルミフレーム「M6シリーズ」で比べると、
ボルトの長さは2.5mm長くなります

 

 

“熱”問題にご注意を!


 

上図で示したように、当社のアルミフレーム「M6シリーズ」のフレーム(ナット溝のヘリ厚さ2.5mm)に

厚さ5mmのアルミブラケットを取り付けた場合、アルミ部の長さは7.5mmとなり、

ボルトの長さは2.5mm長くなります。

 

例えばこれを、スチール製のボルトで締め付け、20℃の温度変化がある場合

その寸法変化は、アルミは3.5μm  スチールは1.8μmであり、その差は1.7μmです。

 

 

M6ネジはピッチ1mmですから、工具の回転角にして僅か0.6°であり、

軸力への影響は誤差のレベルです。

 

ただし、このアルミ部の長さが100mmあると、

その伸び量の差は 7.5mmで1.7μm →100mmで23μm となります。

多少なりとも影響を考える必要があるでしょう。

 

 

摩擦係数に応じた適正な締付けトルクの重要性


 

ネジの緩みやすさには、過剰なトルク(ねじりの強さ)が関係することもあります。

 

トルク不足によるボルト・ナットの緩みを防ぎたいという気持ちが無意識に働き、

規定トルクを超えたトルクをかけがちです。

ここで締付けトルクに関して話しておきましょう。

 

ボルトを締めつける力の5割強は座面の摩擦に、

3~4割はネジ面の摩擦に打ち勝つために使われ、熱となって損失されます。

軸力として残るのは、1割程度にすぎません。

 

もったいない気もしますが、この摩擦があるおかげでネジが緩まないのです。

 

締め付ける力の9割程度も摩擦に打ち勝つために使われているということは、

同じトルクで締め付けても、

摩擦係数が異なると発生している軸力には大きな差があるということです。

 

表面処理によって摩擦係数は大きく変わるので、

被締結材とボルト座面、座金の摩擦係数、オネジとメネジのネジ面の摩擦係数を把握しないと

適正な締付けトルクを求めることができません。

 

また、表面処理の種類や品質(メッキ厚、メッキの乗りかた)によって

摩擦係数がばらつく場合もあり注意が必要です。

 

同じものを同じように締め付けているのに、ボルト密着後に他より軽い力で

工具が大きく回ることを経験された方も、たくさんいらっしゃると思います。

 

それは、やわらかいボルトが混ざっていたわけではなく、

摩擦係数が低いために軽く回るのです。

 

このような場合、通常のトルクで締め付けると、

過大な軸力となりボルトが破断してしまうこともあります。

 

軸力が過大になると、ネジ面で塑性変形が起こり、

この塑性変形が進行して軸力低下を招きます。

 

 

その意味でも摩擦係数に応じた適正な締付けトルクは重要です。

 

 

座金の有効性


 

最後に「座金(ざがね)」についてお話します。

座金はボルト、ナットの座面と締め付け部との間に挟む部品です。

座面の保護やネジの緩み止めとして一般によく使用されるのは、「平座金」と「ばね座金」があります。

 

ばね座金は緩み止めを目的としていますが、

実際に緩み止めになるかどうかは、

「効果有り」という見解もあれば、反対に「効果無し」と様々です。

 

ばね座金のばね定数は、ボルトのバネ定数と比較にならないくらい小さい数値です。

ボルトを締めつけるときに、ばね座金をつぶしていくときの締付けトルクと、

最終締付けトルクの差を考えれば理解できると思います。

 

つまり、軸力を補助するものにはなり得ないという意味で、

緩み止めの効果はありません

しかし、現実に、ばね座金が入っていた方が緩みにくいという経験値を持っている人も多いと思います。

 

これは、初期緩みなど摩耗で軸力が抜けたときの補助や、

振動によりネジ面にジャンプが起こった時など、

ネジの軸力とはケタが違いますが、

多少なりとも押さえが効くといった効果もあるのでは、と推定します。

 

平座金も含めて座金なしの場合、色々な種類の被締結物に対してボルト座面の摩擦力が変わるため、

同じトルクで締め付けているのに軸力が安定しないということが起きます。

 

平座金、バネ座金をセットで使用すれば、半径の小さいバネ座金の面で滑り回転するため、

被締結物に左右されることなく安定した軸力が期待できます。

また、被締結物が柔らかく軸力で被締結物の耐力を越えるような場合(陥没ゆるみ)にも、

平座金とばね座金を組み合わせて使用することは有効です。

 

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総括として、 「ネジは必ず緩む」と言う認識を持ってください。

メンテナンスや運搬等において分解可能とするためにネジが使用されるので、

緩まないと目的を達成できません

 

しかし、簡単に緩んでほしくないと思うのが現実です。

ですから、ネジは適切なサイズの物を適切な本数使用し、

適切な軸力を与える(適正な締付けトルク)ことが重要なのです。

 

 

博士「はい。ネジについての勉強は以上じゃ。あるる、よくがんばったな」

あるる「…ネジ、ねじ…、neji・・・あはははっ ヽ(・∀・)人(・∀・)ノ」

博士「今日もだいぶ、キテいるようじゃな・・・・」

あるる「でも博士!大事なことはしっかりわかりましたよっ!

ネジは必ず緩む 緩まなければネジではないのですっ!!!(キリッ!)」

博士「その通り! まぁ、そこだけでもわかれば、今日は良しとしようかのぅ」

あるる「やったーっ!」

博士「これ以上、ぐりぐりすると、あるるの頭のネジが壊れちゃうかもしれんからのぅ(笑)」

あるる「ええー、そんなこと・・・って、全面否定もできなかったり・・・」(笑)」

博士「でもな、あるる。これだけは覚えておいておくれよ。

ネジの世界は奥深い。そして、よりよいネジを生み出すために、多くの人が日夜努力を続けているのじゃ」

あるる「はいっ! “一分のネジにも五分の魂”ですね!」

博士「ふぉっふぉっふぉっ…。良き心掛けじゃ」アルルちゃん05

 

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