【今月のまめ知識 第79回】水蒸気分圧
公開日時:2019/10/30
とあるのんきな午後3時ちょっと前
給湯室にいそいそとお茶の準備をするあるるの姿が・・・
あるる「ふんふんふふ〜ん♪」
博士「おや、あるるではないか。やけにご機嫌じゃのぅ」
あるる「あ、博士。ちょっとまっててくださいね。美味しいおやつをご用意しますんで」
博士「おお、何かの?」
あるる「おじいちゃんの特製、手作りスイートポテトです! ほっくほくで美味しいですよ〜」
博士「おお、そうか。それは楽しみじゃ。あっ、あるるよ、お湯が沸いたぞ」
あるる「あ、ほんとだ! あんなに水蒸気が!」
博士「ん? あるるよ、あれは水蒸気ではない。湯気じゃ」
あるる「へっ? まぁ、確かに湯気ですけど・・・。どっちだっていいじゃないですか」
博士「いやいや、技術者にとっては大事なことじゃ。この違いを知っていると、かなりカッコ良いぞ」
あるる「そうなんですか? おじいちゃんにも自慢できる?」
博士「もちろんできるとも!(にやっ)・・・知りたいか?」
あるる「そりゃまぁ・・・」
博士「それでは早速・・・」
あるる「おやつを食べましょうね。はい、お盆。こぼさないように運んでくださいね」
博士「は、はい」
水蒸気分圧
前回は露点温度に関してお話ししましたが、その中で水蒸気分圧というものが出てきました。
今回は「水蒸気分圧」に触れておきたいと思います。
まず、空気は色々な気体の混合体であり、それぞれの気体の圧力の総和が大気圧となります。
水蒸気量(g/m3)も水蒸気分圧(hPa)も表していることは同じなのですが、この〝分圧〟という考え方を説明します。
例えば、気温25℃、1気圧で露点温度18℃の湿り空気(水蒸気を含んだ空気)があるとします。
露点温度18℃の飽和水蒸気量は15.4g/m3であり、飽和水蒸気圧は20.6hPaです。
そして空気の分圧は、標準大気圧1atm=1013.25hPaなので
1013.25-20.6=992.65(hPa)
となります。
複数の圧力を合わせて1気圧というと違和感があると思いますが、分圧というのはこの場合で言うと、
1m3の容器に15.4gの水蒸気のみがあった場合、その容器の内圧が20.6hPa になるという事です。
気温が高くなると飽和水蒸気圧(飽和水蒸気量)は高くなり、100℃になると1013.25hPa になります。
つまり水蒸気のみで1気圧になるわけです。
やかんでお湯を沸かしたときに、沸騰して注ぎ口から噴き出している透明の部分が水蒸気です。
水蒸気はすぐに外気で冷却され飽和水蒸気圧が下がるため、水滴となって水蒸気との混相となったものが湯気であり、水滴となったために目視できるのです。
気液平衡
液体の表面では絶えず蒸発が起こっています。
これは液体分子が激しく振動しているなかで、他の分子との引力にうちかって液面から飛び出すからです。
温度が上がると分子の振動は激しさを増し、蒸発する分子が増加します。
したがって液体が密封容器に入っている場合、気相の分子の密度が増します。
気体分子の中には液面に衝突して液体内に入るものもありますが、この衝突回数は圧力に比例します。
単位時間内に液体から気体に飛び出す分子と、気体から液体に戻る分子の数が等しいとき、みかけ上、状態の変化は見られなくなります。
この液体と気体が共存している状態を「気液平衡(きえきへいこう)」と言います。
そして、この時の気体の圧力が飽和水蒸気圧です。
飽和蒸気圧が外気圧に等しくなると、蒸発は急激に活発になり、液体の表面からだけではなく内部からも気化が起こります。
これが沸騰であり、気体と液体が共存して温度が一定に保たれ、この時の温度が沸点です。
博士「どうじゃあるるよ、水蒸気と湯気の違いは、わかったかの?」
あるる「う〜ん、難しかったですけど〝違う〟ということだけはわかりました!」
博士「まぁ、今のところはそれで良しとしよう。おいおいわかってくるじゃろう」
あるる「はいっ! それにしても、博士たちは小さな小さな違いまできちんと区別して理解するんですね。普段はあんなに大雑把なのに・・・。途中でめんどくさくなったりしないんですか?」
博士「ふぉっふぉっふぉっふぉっ、いかにもあるるらしい質問じゃのう。それが不思議とならんのじゃ」
あるる「この緻密さが、博士の机の上に反映されるといいんですけどねぇ〜(やれやれ)」
博士「そうか? 今日は綺麗な方だと思うが・・・。ま、そういわれると、面白いもんじゃのう〜。ふぉっ〜ふぉっふぉっふぉっ」
あるる「すごいウケてる・・・まだまだ知らない博士の一面がありそうでちょっと怖い・・・面白いけど♪」