【今月のまめ知識 第78回】 露点温度
公開日時:2019/09/25
とあるのんきな昼下がり・・・
あるる「今日はやけにムシムシしますねぇ〜」
博士「そうじゃのぅ。相変わらず気温も高いし、雨が続いているからのぅ」
あるる「えっと・・・(湿度計を見て)ひゃぁ〜、100%!!(驚)」
博士「ずいぶん驚いているが、湿度100%がどういことか、わかって驚いているのか?」
あるる「だって100%ですよ。水中と同じくらい湿ってるってことでしょ?」
博士「ふぉっふぉっふぉっ。水中と同じじゃったら、今頃は溺れているのぅ」
あるる「そっかぁ・・・よくわかりません」
博士「よし、丁度良い機会じゃ。今日は湿度について話してしんぜよう」
あるる「はーい」
博士「まずは〝露点〟からじゃ。その前に・・・」
あるる「え? ろてん? お祭りの時に出る、あの〝露店〟ですか?」
あるる「大好きなんですよね〜。焼きそば、たこ焼き、お好み焼き、あ、あんず飴も大好き!
早く話してくださいよ、ろてん!」
博士「・・・あ、・・・う・・・」
露点温度
リチウムイオン電池、キャパシタ、有機ELなどの製造工程において超低湿度が求められ、そのためにドライルームというものがあります。
そしてそのレベルを表すために露点温度(または単に露点)というものが出てきます。
今回はこの露点温度について説明します。
結露、飽和というと皆さん解るのですが、露点温度というとピンとこない人も多いのではと思います。
実はこれは湿度の問題で、まずはここから説明します。
湿度には相対湿度と絶対湿度があります。
相対湿度
まず相対湿度です。
天気予報で出てくるのは相対湿度で、その空気中の水蒸気分圧を分子、その時の温度での飽和水蒸気圧を分母としたときの割合です。
水蒸気を理想気体とみなせば、水蒸気分圧は水蒸気量に比例するので、
相対湿度(RH)は、その空気の水蒸気量(mw)を分子、
その時の温度での飽和水蒸気量(mmax)を分母として算出されます。
RH(%)=mw/mmax×100
絶対湿度
絶対湿度には容積絶対湿度と重量絶対湿度があります。
容積絶対湿度は、1m3の空気中に水蒸気が質量として何gあるかで単位は、g/m3です。
重量絶対湿度は、水蒸気を除いた乾燥空気1kg中にある水蒸気の質量で単位は、kg/kg(DA)などです。
水蒸気を含んだ空気を、湿り空気と言い、そこから水蒸気を除いた空気を、乾き空気と言います。
重量絶対湿度(SH)は、湿り空気中に含まれる水分量(mw)を分子、この乾き空気の質量(mda)を分母として算出されます。
SH(kg/kg)=mw/mda
そして飽和水蒸気量は温度によって大きく変化します。温度が高くなるほど多くの水蒸気を含むことができます。
例えるならば、容積100㏄のコップに水が50cc入っている状態を湿度50%とします。
そして気温はコップの大きさと考え、容積100ccを気温30℃とします。
気温が20℃になるという事はコップの容積が57ccまで小さくなると考えます。
そうなると、50/57≒0.88となり、相対湿度88%ということです。
そして気温18℃ではコップの容量は50ccまで小さくなる、これが湿度100%です。
さらに気温が下がり、コップの容積が小さくなると水を溜めきれなくなり外部にあふれる、これが結露です。
気温30℃で湿度50%の空気の露点温度は約18℃なのです。
上記のどの温度でも水の量は同じであり、これが絶対湿度という意味になります。
そして露点温度というのは、水があふれる容量のことであり、つまりは絶対湿度を表しているわけです。
気温30℃、相対湿度50%の環境で常温のグラスに冷水を入れた場合、グラス表面の温度が18℃以下になったときに結露が起こります。
また洗濯物を乾燥させるときに風を当てるのが有効なのは、濡れた洗濯物に接している空気は飽和水蒸気量に近く、それ以上水分を含むことが出来ないため相対湿度の低い空気と入れ換えることが有効だからです。
最先端の各種製品が、露点温度-30℃、-40℃といった超低湿度の環境で製造されることでその品質を保っているという事を知っておいていただければと思います。
博士「どうじゃ、あるるよ。わかったかの」
あるる「はい。露店じゃないことだけは、しっかりわかりました。
温度も湿度も、突き詰めると奥が深いんですね〜」
博士「そうじゃな。その奥深さを知り、理解するのが技術者じゃ」
あるる「なんだか博士、かっこいい〜♪」
博士「そうか、当たり前のことを言ったまでじゃ(照)」
あるる「そういえば博士!」
博士「なんじゃ、もう少し余韻に浸りたかったのに・・・」
あるる「今週末、近所の神社で秋祭りですよ。一緒に行きましょう!」
博士「お・・・それは良いが・・・。やっぱり「露店」が頭から離れんのじゃな」
あるる「はいっ! わーい、わーい、博士と一緒〜♪」
博士「やれやれ・・・でも、久しぶりの露店、わしも楽しんでみるとするか」