アルファ博士の気ままにトーク♪ 第10話 〜一家に1枚! 科学の世界への扉を家の壁に!〜
公開日時:2023/12/20
美しい「一家に1枚」シリーズポスター
年末は、新年のカレンダーを選んだり、大掃除をしながら部屋の模様替えをしてみたり、新年からの生活を考えたり、忙しい中でも、新しいことを試してみようと考える季節でもあります。
今日は、そのような時にお勧めしたい「一家に1枚」シリーズのポスターを紹介したいと思います。
今回ご紹介するポスターは、もしかすると学校の理科室の壁や、学校の廊下の掲示板などで見たことがあるかもしれません。
あるいは、もうすでにおうちの廊下や子供部屋に貼ってあるよ、というお宅があるかもしれません。
「一家に1枚」は、文部科学省が2005年(平成17年)から毎年1枚発行している学習資料です。
第1号は、写真と説明が豊富なカラフルな「元素周期表」。それ以来、「ヒトゲノム」や「宇宙図」など、1年に1つ種類が増えていき、今年で19年目を迎えます(来年2024年は20周年ですね!!)。
家庭で、親子で、科学について話をするきっかけになったらという趣旨で、「科学技術週間」に合わせて、このシリーズの発行が始まりました。
毎年増えていくテーマも、その年に話題になっていることを中心に選ばれ、写真や図表も興味を引く内容で、見た目のデザインもカラフルで趣向が凝らされたものになっています。
合計19種類ものラインアップは、すべて文部科学省の「科学技術週間」のホームページからダウンロードすることができます。
▼文部科学省「科学技術週間」
一家に1枚|科学技術週間 SCIENCE & TECHNOLOGY WEEK
https://www.mext.go.jp/stw/series.html
アルミニウムは原子番号13、13族
先月、あるると「いまさら聞けない基礎用語!【キ】#027 金属の起源」を語らいました。
その時、あるるには黙っていましたが、実をいうと私はマロン好き♪ マロングラッセ好きだし、栗きんとんはお茶に合うなあ・・・と密かに思っていたんです(笑)
それはさておき、その時語りあったのは、そう「ビックバン」から始まった物質の生成の話。
水素(H)とヘリウム(He)の原子がくっついて、まずは周期表の原子番号が偶数の元素が、次々と生成されます。
それらがまた圧縮されて、水素や重水素が核融合して、金属原子が出来てきたとされています。
「周期表」を復習すると、物質を構成する元素を陽子の数の順(軽い順)に18列に並べると、“同じ列(族)には似た性質の元素が縦に並ぶ”という「周期性」があることから、「周期表」という名前のリストが出来ました。
「水兵リーベ僕の船、名前があるシップス、クラークか」などと、唱えながら覚えたことがあるかもしれませんね。
冒頭でも少し触れた様に、「一家に1枚」の最初の1枚は、この周期表から始まりました。以後、見直しを重ね、2023年度でなんと第13版にもなっており、取り扱いの丁寧さに、見るたびに感銘を受けております。
各元素の説明には、その時代ならではの話題にも触れており、例えば、「水兵リーベ」の「リ(Li)」にあたるリチウムの説明欄には、
「リチウムイオン二次電池(電気自動車、スマートフォン、ドローン)Li合金は軽量、航空機材料、炭酸リチウムは躁うつ病治療薬」
と記載されています。小さな枠の中ですが、よく読むと現在の情報が豊富に書かれているのです。
アルミフレームの主な材料「アルミニウムAl」は原子番号13、13族です。同じ13族の列を上下に見ると、上には「ホウ素B」(ホウ酸団子!)、下には「ガリウムGa」(青色発光ダイオード)、「インジウムIn」(透明導電膜)が並んでいます。
アルミニウムを挟んだ上下の親戚の元素は、世の中で活躍していることがわかりますが、化学的にどういう類似性があるのか? 興味深いところです。
周期表以外には、どんなものがある?
さて、元素周期表から始まった「一家に1枚」のシリーズですが、他にはどのようなものがあるか、見てみましょう。
- ウィルス
- ガラス
- 海
- 南極
- 日本列島7億年
- 量子ビーム
- 細胞
- 水素
- くすり
- たんぱく質
- 鉱物
- 太陽
- 磁場と超電導
- 未来をつくるプラズママップ
- 天体望遠鏡400年
- 光マップ
- 宇宙図2018
- ヒトゲノムマップ
周期表を入れて全19種類。ウィルスや、ヒトゲノム、水素など、最近話題のテーマもカバーされていますね。
題名だけでは今ひとつ興味が沸かなくても、ポスターに描かれたカラフルな図表、楽しいイラストなどを見ていると、思わず引き込まれて読んでみたくなります。
ポスターのいいところは、なんといっても壁に貼ってあると、毎日自然に目に触れるところでしょう。
思わず目に入ってきた部分、気になった部分を読んでみる。
あるいは、イラストや写真を眺めているだけで、自然と記憶に残る・・・。
改めてじっくりとポスターを眺めてみると、レイアウトや色づかい、イラストや写真などのセレクトなど、隅々まで工夫が凝らされていて、作成した人の気持ちが伝わってきます。これも「ものづくり」の心なのですね。
さて、来年はどのポスターを貼ろうか?
試しに、「天体望遠鏡400年」のポスターを見てみましょう。
まずは、膨大な情報量に圧倒されますが、最近の私の興味が「天体」に向かっているからか、実に興味深い写真や記事が満載であることがわかります。
例えば、黄色いマルと矢印の「光学望遠鏡」の中に、「ヤーキス天文台の40インチ屈折望遠鏡」の写真があります。
(いずれの画像も文部科学省「科学技術週間」より)
螺旋階段が付いた4階建ての塔のような置き台の上に、鏡筒の長さが20mぐらいはありそうな望遠鏡が斜め左上を向いて設置されています。それらを覆う「ドーム」も直径何十メートルもありそうです。途方もなく大きな望遠鏡です。
ホームページで確認すると、120年以上前に完成したこの望遠鏡と建物は、今でも大切に保存されていて、見学することも可能とのこと。
望遠鏡が水平に近いときなど、どのようにして覗くのだろうか?
もの凄く高い「はしご」に登って覗くのだろうか? など、興味はつきません。いつの日か、現地に行って覗いて見てみたいものです。
ポスターの右下には「宇宙 解き明かすのはあなた」という、さらに関心を誘うようなメッセージも目に入ります。
来年は、家の廊下にこのポスターを貼ってみたいと思います。
「遠くて近いもの、なーんだ?」・・・のその後
来年のポスターが決まったところで、当コーナーの第8話「遠くて近いもの、なーんだ? 20年ぶりの天体望遠鏡」の「その後」の話をしたいと思います。しばしお付き合いください。
「比較的大きな星雲や星団を写真に撮る」方向で検討した結果、最新技術満載の天体望遠鏡を導入してしまいました。望遠鏡のカメラと架台は「ラズベリーパイ」のPC制御で、操作や観察は「タブレット端末」で行います。
やはりすごい!と思ったのが、「天体の自動導入」です。タブレットで見たい天体の名前を選ぶ、または「星図」の上でタッピングすると、望遠鏡の架台が自動的にその天体の方角と仰角に移動します。
そしてカメラに写っているライブ画像の星の配列から、誤差を計算して、さらに角度を修正、自動的にカメラの視野の中心に、狙いの天体が配置されます。
これは革命的な進歩です。20年前、それ以前は、見たい天体を望遠鏡の視野に入れるのが、一苦労でした。
どうするかというと、まずは「ファインダースコープ」の中心の十字線に、すぐに見つけられる1等星や2等星の明るい星を合わせます。
「ファインダースコープ」とは、メインの望遠鏡の脇腹に付いている、小さくて視野が広い望遠鏡のことです。
「ファインダースコープ」である程度の当たりをつけたら、その位置から目的の天体まで星空の地図「星図」をたよりに、星の配列をたどっていきます。
または、架台の角度目盛りを目安にして、その明るい星から「北に何度、西に何度」というように、角度の差分を移動していくーーーーといったやり方でした。
カーナビが無い時代のドライブと同じで、紙の道路地図を使って今いる位置から目印になるところまで方角や距離をたどっていく、それと似た様なものだと思ってください。「下調べ」や「土地勘」が必要で、当時は「たどり方を教えてくれるガイド本」といったものまで出版されていました。
そのように苦労を重ねて、やっとたどり着いても、見たい天体が暗いと、「視野に入っているかどうか」すらわからないことも、珍しいことではありませんでした。
そんな状態ですから、写真撮影はある意味「あてずっぽう」で、「撮って、現像してみるまで、入っているかわからない」という時代でした(今の若い人は信じられないでしょうね 笑)。
今は技術が進んで、そのような苦労をしなくても、あっという間に撮りたい星が視野に入り、ピントの修正までしてくれる。その場で1~2分待てば、狙いの天体の姿が画面に浮かび上がる。
なんと便利になったものかと驚くばかりですが、その反面、「スマホ」や「カーナビ」に頼った旅と同じで、着いた時の感慨は以前より薄くなったかもしれません。
とはいえ、その代わりに、着いた後の時間が増えたので、その分、見たい天体にかけられる時間がずっと増えたともいえます。
すっかり前置きが長くなりました。
お待たせしました。私が撮った写真をご紹介します。
ジャジャーン!
新しい機材で撮った、最初の写真です。
こんな写真が、手で抱えて一人で運べる大きさの望遠鏡で撮れてしまいました。
この天体の名前は、「北アメリカ大陸星雲」といいます。なるほど北アメリカ大陸と似た形をしています。上の方のカナダとアラスカが無いようにも思いますが、そのあたりは想像で補いましょう!
夏の星座の代表「白鳥座」の1等星「デネブ」の近くなので、場所はわかりやすく、見かけの大きさも月の数倍ある「大きな」天体ですが、とても淡い星雲なので、望遠鏡を覗いても、肉眼では全く見えません。
それが、高感度のC-MOS撮像素子のカメラで撮ると、ものの1~2分の露光で、タブレットの画面に形が現れてきます。
この写真は、1時間ぐらい露光して撮影しました。
この星雲は、今私たちがいる地球がある「天の川銀河の中の天体」で、距離は約1800光年(光の速さで1800年かかる距離)です。
つまり、今、望遠鏡に入ってくる光は1800年前に生まれた光ということです。日本の歴史でいえば、飛鳥時代よりも前の景色を見ていることになりますね。
細かい星がたくさん見えています。これらも、私たちの太陽系が属している「天の川銀河」の星々です。
とても小さく見えていますが、一つ一つが、私たちの「太陽」と同じような恒星だと思うと、宇宙の大きさと星の多さに、気が遠くなります。
最新技術の望遠鏡のおかげで、ますます近い存在になった宇宙ですが、そのスケールの大きさに改めて感嘆している今日この頃です。