NICおーっ!とテック物語【第18回】3つの新たな洗浄機誕生!
公開日時:2016/01/26
前回までのお話
2001年。NICは富山県内の製造業としては比較的早い時期に、
自社のWebサイトをオープンし、ネットの世界に自社の門構えを築きました。
ネットを介することで、お客さまとのやり取りが、より密に、よりスピーディーに
できるようになりました。
しかし、進む道あれば止まる道あり。ITバブルもついに陰りを見せはじめ、
NICの装置部門がその影響をダイレクトに受けることとなります。
最盛期には24時間フル稼働していた工場も、今では作業を待つ空間が広がるばかり…。
しかし、NIC開発チームは、時代を嘆くことも憂うこともなく、
淡々と現状を受け入れていたのです。
ものごとには、必ず終わりがある。こんなときこそ、新たな開発だ!
そんなものづくりの根幹ともなる思いを胸に、開発チームは再び動き出したのです。
省エネに応えられる装置を!
再始動したNIC開発チームが一番に手がけたのは、自動車部品の製造ライン内で機能する洗浄機の開発でした。
すでに小型洗浄機の開発で実績をあげていたNICの開発チームは、この技術をさらにブラッシュアップして、
「もっと役に立つ洗浄機を」求めて、精度を高めていきます。
「省エネ」に関して大きな起点となったのが、1997年です。
第3回気候変動枠組条約締約国会議で採択された「京都議定書」によって
CO2の削減がルール化され、それに伴って低燃費の自動車が求められるようになってきたのです。
今ではエコカーの代表選手として受け入れられているハイブリッドカーの第一号が登場したのも、この年です。
そして同年、NICにも大きな動きがありました。
ものづくりの魂を込めて開発した「小型部品洗浄機」が自動車業界に広く受け入れられ、
その結果、全国の400社が加盟する自動化推進協会様から自動化技術賞を受賞したのです。
当時の開発ドラマについては、
「おーっ!とテック物語 第12回 【NICの原点 装置メーカーとしての成長物語】」を
ご覧いただくとして、この小型部品洗浄機誕生の原点になったのも、
「お客さまの声をカタチにしたい!」というものづくりの強い思い。
それが高く評価されたことは、開発チームにとって、大きな歓びとなりました。
この技術をもっと育てたい!
お客さまに喜んでいただきたい!
そんな思いを胸に、「まったく新しい発想」の洗浄機を生み出そうと、
まだ誰も実現していない未踏の領域を目指したのです。
新たな発想による洗浄機の誕生
各方面から高い評価はいただいたものの、そこがゴールではありません。
技術は常に日進月歩。クリアする問題は山積です。
スペース、汚水や臭いの処理、音、より高度な自動化の仕組みづくりなど
超えなければならないハードルは、さらに高くなっていきます。
省スペース、省エネルギー、そして自動化をとことん追及し、
どんな物をどうやって洗うことが一番効率よくキレイに洗浄できるのかを考えた結果、
従来のボックス型に加え、新たに2つの洗浄方式にたどり着きました。
そしてこの3つの洗浄方式を標準規格化し、3タイプの洗浄機が誕生したのです。
ひとつは「ボックス型洗浄機」。
これは、97年に自動化技術賞を受賞した小型部品洗浄機のさらなる進化系です。
ボックス型洗浄機
小さな密閉されたボックスを直列に複数並べ、その中に専用ノズルを配置。
ハンドリングにより運ばれてきた部品に、専用ノズルのジェットが一気に「狙い撃ち」することで、
短期間で高い洗浄を可能にしました。更にワークの回転機構を設ける事も出来るため、
全体外形洗浄やエアーブロー乾燥も効率的に行える画期的なものでした。
そして2つ目。「カップ型洗浄機」という斬新な装置が誕生しました。
ノズル機能を持ったカップを部品の上部からかぶせて密閉し、そのカップの中で洗浄を行うのです。
カップ型洗浄機
この構造によって、ボックス式よりもさらに省スペース化を実現しました。
そして、非常に小さな容積の中で洗浄機を強力に噴射するため、
少ない洗浄液で十分な洗浄が可能となり、同時に廃液量の削減にも貢献しました。
さらに、洗浄〜乾燥までの一連の作業を直列に並べることにより、
次の工程へとスムーズに受け渡すことが可能となりました。
ワーク搬送はカップそのものを[搬送送り] → [上昇] →[搬送戻り] →[下降]という
モーションを行うことでピッチ送りするため、サイクルタイムが非常に短くなったのです。
そして3つ目が、「ボックス式カップ型洗浄機」です。
カップ型洗浄機のコンパクト性を生かし、1カップのみの手付けによる洗浄機です。
非常にコンパクトなので、工場設備のレイアウトを変更することなく隙間に設置でき、
専用ノズルで部品を囲み、ノズルを回転させることによって、
低圧で高精度な洗浄・乾燥を実現しました。
ボックス式カップ型洗浄機
この画期的アイデアに溢れたボックス式カップ型洗浄機は、2003年に特許を申請し、
NICだけのオリジナル技術として、世に羽ばたくこととなります。
そして同年の12月。横浜の自動車部品製造展で、デビューを飾ることとなったのです。
低迷が心配された展示会も、この頃から細分化し始め、特化した業界ごとに開催されるようになっていきます。
展示会そのものも、新たな可能性を求めて変化を遂げていったのです。
その新たなうねりの中、NICは「洗浄機メーカー」という新たな一面が認知されはじめていきます。
さて、新しい洗浄機の評価は?
これからどんなドラマが待っているのか?
この続きは、2カ月後ということで。
<つづく>