アルファ博士の気ままにトーク♪ 第21話 私が好きな街 ミュンヘン ~技術のベースを知るには、その国、その街、その人びとを知る~
公開日時:2024/11/27
前々回の気ままにトークでは、ドイツの展示会「メッセ」の様子を紹介しました。今回は、メッセが開催されている「ミュンヘンの街」を紹介したいと思います。
ドイツのメッセは「人と人との交流」を大事にしていましたが、「技術のベース」になるのが、街の文化と歴史です。その地の「技術のベース」を理解するには、人びとが暮らす「街と人」を知ることが大事だと思っています。
その街を知ると、その街に暮らす人の理解も深まり、人とのコミュニケーションも進むというわけです。
ではさっそく、「私の好きな街 ミュンヘン」を紹介していきましょう。
バイエルン州の州都、ミュンヘン
ミュンヘンは、ドイツのバイエルン州の州都です。バイエルン州は、ドイツの南東部に位置し、東はチェコ、南はオーストリア、そしてスイスと接しています。
南部はアルプスの山岳地帯で湖も多く、その景色は絵葉書のように美しいです。岩山の風景は富山の立山連峰とも共通点がありますね。
ジグソーパズルの絵柄でお馴染みの「ノイシュバンシュタイン城」も、ミュンヘンから南西方向へ約120kmと、近い距離にあります。ミュンヘンから北に行けば、古都「ニュルンベルク」や、ワーグナーの音楽祭が開かれる「バイロイト」の町もあります。
そして、ミュンヘンといえば、秋の祭典「オクトーバーフェスト」や、フルーティな白ビール「バイツェンビール」でも有名ですね。
ミュンヘンは、今まで公私ともに、訪れる機会が多かったこともあり、馴染みのある好きな街になりました。
まずは何といっても「ドイツ博物館」
ミュンヘンで、まず最初にご紹介したいのが、「ドイツ博物館」です。
この博物館は、私の好みも含めていえば「世界三大博物館」のひとつだと言いたいです。この場合の「博物館」は、いわゆる「ミュージアム」のうち、ルーブルなどの「美術館」を除きます。
私の推す「三大博物館」は、英国ロンドンの「大英博物館」、米国ワシントンの「スミソニアン博物館」、そしてミュンヘンの「ドイツ博物館」です。
さらに、歴史的な文物と化石などの自然分野を除いて、産業科学技術の分野に限れば、ドイツ博物館は、世界一の博物館と言ってもよいのではないでしょうか。
ただし、三大博物館のもう一つの候補は「ジェームズ・ワットの蒸気機関」などを展示する「ロンドンサイエンスミュージアム」で、こちらは、まだ行ったことがありませんが、いつか行ってみたいものです!
ドイツ博物館といえば ~エンジンとプラネタリウム~
ドイツ博物館の見ものは、何といっても、ドイツの誇る「エンジン(内燃機関)関係」で、オットー、ダイムラー、ディーゼル、ベンツ等が開発した実物が展示されています。
それと共に、最近の私の関心分野「天文の分野」でも特別なモノがあります。
それは「世界初のプラネタリウム投影機ツァイス1型」です。
今回訪問した2023年、ちょうど「プラネタリウム100年展」が開催されていました。実は、この博物館とプラネタリムは深い関係があり、「世界初の近代的プラネタリウム投影機」は、ここドイツ博物館の開設の計画と共に開発が開始され、実現したものなのです。
ドーム天井に投影される星が、極力小さな点でコントラストの高い鋭い像を結ぶことが課題でしたが、全天を多数に分割して、多くのレンズで投影するようにして実現しました。この原理は、現代の投影機でも採用されています。
子どもの頃から見ていた東京・渋谷の「五島プラネタリムの投影機」は、この1型から34年後に誕生した4世代目の後継機「ツァイスIV型1号機」でした。
現在改装中 ~全体の半分だけでも大きな規模~
現在ドイツ博物館は、2006年から計画が開始された大規模な改装中で、全体の改装が完了して公開されるのは、2028年の予定です。
私が訪問した2023年は、前年2022年に西側の約半分の改装が完成し、公開されたタイミングでした。全体の半分でも、駆け足で巡っても約4時間程かかるくらい広いです。
何といっても内燃機関 ~仕組みがわかりやすく説明展示~
改装後のフロアでは、ドイツの誇る様々なタイプの内燃機関の仕組みが、分かりやすく説明されていました。
下の写真は、大型のレシプロエンジンです。
背後の壁にプロジェクターで「吸気、圧縮、爆発、排気」のプロセスが投影されて、この大きなエンジンが動く仕組みを説明されていました。実際の動きを動画で見ていただきたいところですが、静止画でご勘弁ください。
もし子どもの時にこういうものを見ていたら、将来はエンジンの技術者になりたいと思ったことでしょう。
楽器の仕組みの展示 ~パイプオルガンの仕組みを見る~
次に紹介したいのが「楽器関係」の展示です。
ドイツで楽器といえば、ライプツィヒの「楽器博物館」が有名で、「世界最初のピアノ」も展示されていますが、ここドイツ博物館は、科学技術の博物館らしく、特に楽器の仕組みについて詳しく説明されています。
下の写真は、「パイプオルガンの仕組み」を説明するモデルで、音色を変える手動バルブ「ストップ」の仕組みが説明されていました。
手動バルブ「ストップ」で、発音するパイプまでの空気の流れる流路を切り替えます。
ミュンヘン名物3点セットで一休み ~白ソーセージ、プレツェル、ビール~
この日、改装後のドイツ博物館を4時間ほど見て回って、歩き疲れたので、街の中心まで戻ってひと休みです。
街中の目抜き通りでは、店の前にテントが並んでいて、そこで気軽に飲んだり食べたりできるようになっています。ここでのおやつは、ミュンヘン名物の「ヴァイスブルスト(白ソーセージ)、プレツェル(焼き菓子)と、ビール」です。
白ソーセージは、朝に作って、午前中の新鮮なうちに食べるのが「しきたり」ですが、この日は運よくこの店で昼過ぎの時間に食べることができました。
シュールでおちゃめなモノも ~何だこれは!?~
下の写真を見てください。変ですよね。道路の上に船があります。
これは別の日に、音楽ホール「ガスタイクHP8」で音楽を聴いた後の帰り道で見つけました。
有名な文化施設「ガスタイク」は、現在ここも、大規模な改装工事が進んでいて、ガスタイクHP8は、この工事期間の仮設ホールです。
名称に付いている「HP8」は何かと思ったら、このホールの住所「Hans-Preißinger-Straße 8(ハンス-プライジンガー通り8番地)」の略とのこと。
もともとは何かの工場だった建物を利用した仮設ホールで、待ち合いのホール部分を見上げると「天井クレーン」があったりします。面白いですね。
この日はこのガスタイクHP8ホールで、ミュンヘン第一のオーケストラ「ミュンヘンフィル」の演奏を聴きました。仮設ホールとはいえ、音の響きはなかなか良かったです。
ミュンヘンフィルの音楽も素晴らしく、感動しましたが、帰り道で見つけたこの「道路の上の船」には驚きました。
「船」の中は、飲食できるパブになっているようです。
工場エリアへの鉄道の引き込み線の陸橋の跡を利用したものですが、面白いことを考えるものです。
ドイツでは、時々、このようなシュールでおちゃめなモノに、出会うことがありますね。
ミュンヘンの美術館 ~カンジンスキーやマルクなどが見られるレンバッハハウス美術館~
2番目に紹介したいのが「ミュンヘンの美術館」です。
ミュンヘンには「ピナコテーク」という王宮時代から続く、大きな美術館があります。古典時代の作品を展示する「アルテピナコテーク」、近代の作品を展示する「ノイエピナコテーク」など、「世界5大美術館」に入るぐらいの素晴らしい美術館ですが、今回はそれとは別の大好きな「レンバッハハウス美術館」を紹介したいと思います。
「レンバッハハウス美術館」は「山椒は小粒でもピリリと辛い」とでも言いましょうか、「ワシリー・カンジンスキーの絵」がたくさん並んでいます。
カンジンスキーは、以前のこのコーナーの記事「バウハウス訪問記(2024年3月)」でご紹介した「バウハウスのマイスター(先生)」だった画家です。
カンジンスキーは、バウハウスに勤める前から、ここミュンヘンで画家として活躍していました。レンバッハハウス美術館には、カンジンスキーとマルクなど「青騎士派」の絵がたくさん展示されています。
街中の公園 ~エングリッシャーガルテン~
ミュンヘンは、新市庁舎を核とした広場や宮殿がその中心になりますが、その北東に広がる公園「エングリッシャーガルテン(イギリス公園)」は、とてもよいところです。
名前の由来は、公園の様式が「イギリス式公園」であることからで、幾何学的なフランス式ではなく、自然の風景の美しさが感じられるような庭園の様式なのです。
この公園の中を流れている「アイスバッハ(和訳:氷の小川)」は、ミュンヘンの中央を流れる「イザール川」から分流した人工の川です。その名の通り、アルプスの山々の雪や氷河が溶けて流れ下った、氷のように冷たい水です。
その公園の中を流れるアイスバッハ川での夏の名物が、この「波乗り」です。次から次へと、子どもから若い人、男性も女性も、波乗りをしています。
多くの市民や観光客が、川辺で波乗りの様子を見ています。私もしばらく見ていたら、暑い日でしたが、すっかり涼しくなりました。
エングリッシャーガルテンは、街中の広い公園で、ニューヨークのセントラルパークより広いそうです。
中を散歩すると、森や草原、川や池など、いろいろな場所があります。水辺で水浴びや日光浴をしている人も多く見かけました。その中でも「ビアガルテン(ビアガーデン)」は休憩におすすめの場所です。
音楽を聴く楽しみ ~明るい土地柄と暖かい人間味が感じられる演奏~
ミュンヘンでのもう一つの大きな楽しみは、クラシック音楽を聴いたり、歌劇を観ることです。今回の滞在では、3つの場所で音楽を楽しむことができました。
1つ目が、前出の「ガスタイクHP8ホール」で聴いた「ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団演奏会」、
2つ目が、宮殿内の「ヘラクレスザール」で聴いた「バイエルン放送交響楽団演奏会」、
3つ目が、宮廷時代から350年の歴史を持つ「国立歌劇場」で観た「バイエルン国立歌劇場公演」です。
どの演奏会も、このミュンヘンの地の明るい土地柄と温かい人間味が感じられる演奏で、心に残りました。
ミュンヘン、そこでの音楽は、その土地柄から独特な味わいがあると思っています。どんな土地柄といえば、暗くて寒く規律を重んじるドイツの北部と比べれば、明るくて暖かく開放的な南部、アルプスを望む場所にあり、牧歌的で、おおらかな気風、オーストリアのウィーン、チェコのプラハなどにも比較的近く、東欧の踊りのリズム感も感じらます。
また、ワーグナーやリヒャルトシュトラウスが活躍した街でもあり、それらの伝統を直接引き継いでいます。
今回は「私の好きな街 ミュンヘン」をご紹介しました。
今日のお話は以上になります。