アルファ博士の気ままにトーク♪ 第19話【海外編第2弾】ドイツの展示会「メッセ」はこんな感じ
公開日時:2024/09/25
ドイツの「メッセ」はまるでカフェテリア 〜人と人の交流と縁を大切に~
今回の気ままにトークは『海外編第2弾』、ドイツの展示会「メッセ」の様子をご紹介したいと思います。
コロナ禍はひとまず明けましたが、経済情勢や円安の関係もあり、海外への渡航は以前に比べて敷居が非常に高くなっています。
また、近年は、海外に出掛けなくても、ネットで情報収集やWEBミーティングもできるので、足が遠ざかっていることもあると思います。
そのような時節ですが、近年のドイツの展示会の雰囲気といったものを皆様にお伝えできればと思います。
やってきました! ミュンヘン♪
今回は、ミュンヘンで開催されたロボット関連の展示会「automatica(自動化展)2023」に訪問したときのことをお話ししたいと思います。
このメッセは出展会社の約1/3がドイツ以外の国で、見学者も約1/3がドイツ以外から訪れます。ドイツを中心にしたヨーロッパ各国、日本や中国など、世界の多くの国と地域が参加している、まさに国際展示会なのです。
今回の訪問の目的は、2011年にドイツで発表された「インダストリー4.0(第4次産業革命)」の戦略が、10年経った現在、本国ドイツでどのように実際の工場の運営や装置に応用、活用されているのかを、この目で確認したいと思ったからです。
展示会について情報収集
では、どうやって情報収集したかから、お話ししましょう。
現在はどの展示会もWEB上で1年ほど前から、開催案内が出ているので、情報収集は容易でした。
主な展示会は、毎年1年おき、何年に1度、となっているので、まずは開催年かどうかを確かめました。
ミュンヘンのautomaticaは1年おきの開催で、今回は2023年、次回は来年2025年です。開催の半年前ぐらいから、出展する会社の名前や会場マップも表示されているので、細かい情報も確認できました。
これらの情報提供については、日本国内の展示会とほとんど同じといっていいと思います。WEBでは、展示会の主催者と、各出展会社から、情報発信が盛りだくさんに行われています。
WEBでの言語はドイツ語と英語になりますが、近年はWEBの自動翻訳機能も使えるようになって、情報収集がさらに容易になりました。
automaticaのホームページでは、展示会が終了した後も半年ぐらいは内容が参照できるようになっていました。現在は次回2025年の内容が順次アップされています。
展示会訪問の計画と準備
訪問の目的、費用や、参加者など、前年から計画して準備を進められるようにしました。
展示会の時期が近づくと、会場に近い街のホテルは高くて満員、飛行機のチケットも高くなるので、早めに計画しました。
今回の展示会は「中ぐらい」の規模ですが、ハノーバーメッセのような「大きな」場合は、特に早め(1年前)が得策です。
旅行会社や各種団体で企画される「展示会参加パック」の利用も、日程が合えば、検討の候補に上がります。
また、旅行会社の「旅行パック」(都市滞在型、現地フリー)が利用できる場合は、お得な案かもしれません。
でも、自由度が高く、日程や予算に合わせて計画できるのは、何といっても個別予約でしょう。今回は、約半年前に準備を進めて、個別に、飛行機とホテルをネット予約しました。
ホテルの予約
いろいろなホテルが選択できますが、自分で予約する場合、費用に応じて注意して確認する項目がありますね。私も、確認不足で、思っていなかった状況になることが時折あります。
1~2泊の宿泊の場合は許容範囲ですが、展示会の見学は1か所での滞在が比較的長くなるので、慎重に確認しました。
- 主要駅、地下鉄駅、バス停までの距離(徒歩5分以内がベスト)
- 朝食は含まれているか、オプションか、費用はいくらか
- 部屋にエアコンが付いているか(特に6~9月に訪問の場合)ドイツではエアコン無しの場合が多いです。
- 部屋にトイレが付いているか(部屋の外で共用の場合もあり)
- 部屋にシャワー(あるいはバスタブ)が付いているか(バスタブ無しも多く、部屋の外で共用の場合もあり)
展示会場のある町で希望のホテルが取れない場合は、周辺の町の駅近く、または、複数人でレンタカーを借りることにすれば、周辺の町村も選択肢に入ってきます。
今回泊まったホテルは、ミュンヘンの中央駅まで徒歩約10分、最寄の地下鉄駅まで徒歩約5分、朝食付き、トイレ/シャワー/バスタブ付き、エアコン無し(扇風機)の部屋で、日本の同等のホテルの約2倍の費用になりました。
今回は6月末の宿泊でしたが、幸いにも扇風機だけでも、暑くて寝付かれないということはありませんでした。
メッセ会場へ
ミュンヘンのメッセ会場は、ミュンヘンの中央駅から、地下鉄の「U2」という路線で約20分、終点の駅になります。終点なので、間違うことなく降りることができます。
駅の名前は「メッセ会場(Messestadt)」です。
地下鉄の進行方向の階段から地上に上がると「メッセ会場東口」、後ろ側の階段から上がると「メッセ会場西口」です。
「automatica(自動化展)」の会場の入り口が近い、東口側から入場しました。
展示会の入り口まで、地下鉄の出入り口から3分ほど歩きます。
このメッセ会場も大変広く、展示ホール全体の広さは東京ビッグサイトの約2倍の20万㎡、敷地全体はさらにその4倍の40万㎡あります。
会場の端から端まで(西口から東口まで)の距離が約800mです。
下の会場地図を見ていただく、その会場は、展示ホールが、規則正しく3x6列=18ホールが並んでいます。
今回は「automatica」(オレンジ色の6ホール)と、同時開催の「LASER World」(黄緑色の6ホール)合わせて、12棟のホールでの開催です。
いざ、会場に入場 ~チケットは事前購入、2次元コードで入場~
チケットは事前に展示会のホームページで、クレジットカードで購入して、入場券をプリンターでA4サイズの紙に印刷して持参しました。
日本の展示会のように、事前登録すれば無料ということではなく、有料でした。「4日間チケット」を購入しました。
プリントする際のサイズは、「2次元コードが2cm以上になるように」と書かれていましたが、PDFを普通にプリントすれば大丈夫でした。
なお、値段は未確認ですが、当日、会場の入り口ホールにもチケットを購入する窓口はありました。
説明書きや会話は英語でOK
会場内の案内板や説明書きは、ドイツ語と英語の両方で書かれています。
説明される方とは、英語で会話しました。
英語はドイツの人にとっても外国語なので、簡単な英語同士で、お互いに通じやすいと感じました。
会場の様子 ~パンフレット配りは無し、呼び込みも無しで、落ち着いた雰囲気~
まず、入場口から右手の方、日本の出展メーカーの多い「B6」ホールの会場に入っていきました。
会場の全体の様子ですが、展示会初日の朝一番は、静かで落ち着いた雰囲気でした。その後、2日目、3日目と、日を追うごとに来場者も増えて、にぎやかになってきました。
それでも全体としては、落ち着いた雰囲気でした。
通路でのパンフレット、ノベルティなどの配布はほとんど無く、呼び込みやIDの読み込みもありません。
各ブースでも、展示を見ているだけで声をかけられることはほとんどありませんし、多数の人を相手に大きな声で説明をしている場面もほとんどありません。
ジュースや、ミネラルウォーターを配っているところはあるので、遠慮なくいただきました。
説明が必要な場合は、手の空きそうな人に声を掛ければ、すぐに説明してもらえました。
さらに詳しい説明が必要な場合や、つっこんだ相談がしたい場合も、その旨を伝えれば、じっくりお話ができました。会話を通して、段階が進んでいく感じです。
一方的に、定型的な説明を聞く場面は少ないと思います。
気さくな会話
会話が始まれば、「どこから来たのですか」とか、「どんなものを作っている会社ですか」など、フレンドリーに話が進みます。
名刺を交換するのは、日本と同じです。
今回、いただいた名刺を見ると、その会社の名前と同じで驚いたことがありました。その方は、その会社の社長さんでした。
そのような方でも、初見の私に対しても、とてもフレンドリーに気さくにお話していただけました。
どの方とのお話も、堅苦しい話というよりは、柔らかい気さくな応対で、「知り合いを増やしたい」という気持ちが伝わってきました。
ちなみに、ドイツの会社は日本と同じで、「家内工業」から始まって、大きくなった会社が多いように思います。会社のホームページに、創業時に家族経営で苦労した話などが載っていたりします。
カフェテリアのような展示ブース
打ち合わせコーナーには、パンや、お菓子、コーヒーやジュースが提供されているブースが多くあります。
ドイツなどヨーロッパの会社を訪問すると、受付やロビーに果物が盛ってあったり、コーヒーやジュースが自由に飲めるようになっていたりするので、それと同じような感覚ですね。
どこの会社も、商談、打ち合わせを重視しているのがわかります。
各社展示場の床は上げ底 ~通路とは段差があるので注意!~
注意書きも無いところを見ると、昔からこうなっていて、つまづいて転んだりする人はいないようです。
つまづくとすれば、たぶん私ぐらいなので(笑)、展示ブースの出入りには、気を付けました。道路を渡る時に「音もなく「左」から近づいてくる(ドイツの)路面電車」と合わせて、この段差には要注意ですね。
床下に空圧や電気配線などのユーティリティを配置していると思いますが、デザイン面でも各社各様の床材やカーペットなど、床にもこだわりが見られました。
木陰のベンチで昼食
展示会の初日は、朝一番、開場の10:00に入場して、B6とB5のホールを見学して、気が付くと昼過ぎに。
歩き回って足も疲れたので、食事をとりながら一休みしました。
建物と建物のあいだの中庭の芝生のスペースで、食べ物を売店で購入し、中庭の木陰のテーブルベンチで一休み。
このエビの載ったドライカレーは美味しかったですが、値段はこれで2800円ぐらい、展示会場価格とはいえ、インフレや円安の影響がありますね。
ちなみに、街中のマクドナルドで「セットメニュー」は、9.99ユーロ(約1600円)で、これも日本の2倍です。
公園のような雰囲気で、テーブルベンチでの食事はドイツらしいです。ジョッキでビールを飲んでいる人もいました。これもドイツらしいですね。
カフェテリアでも昼食
翌日は、展示会場の建物の中にあるイタリアンなカフェテリアで、昼食にしてみました。
このパニーニ(サンドイッチ)が確か8ユーロ、ペットボトルのジュースが2ユーロ、合わせて10ユーロ。円に換算すると約1600円です。マクドナルドのセットメニューとほぼ同じ金額でした。
オーブントースターで表面を少しあぶって温めて暖ためて出してくれました。パンはドイツらしい硬いパンですが、噛むと味が濃くて、グ~トでした。
パンに挟んであるのは、トマーテ(トマト)、シンケン(ハム)、ケーゼ(チーズ)、そして黄色いパプリカ(ピーマン)でした。
少し早めに11:00頃から入ったので、まだ空いていますが、12:00頃からはカウンターに10人ぐらいの列が出来ていました。
日本のメーカーも勢ぞろい ~日本での展示会との違いに注目~
この展示会「automatica」は、自動車(BMW)をはじめとする工業都市ミュンヘンでの開催ということもあり、多くの日本のメーカーも出展しています。
産業用ロボットでは、ファナック、安川電機、ヤマハ、エプソン、不二越、芝浦機械、川崎重工、デンソー、IAI、など
機構部品では、THK、ハーモニックドライブ、住友重機械工業、ナブテスコ、IKO、CKD、など
電子部品・センサーでは、キーエンス、オムロン、IDEC、など
計測機器関係で、ミツトヨ、など、FAでは、平田機工、などの各社です。
展示されている内容は、日本での展示会と大きく異なるものはありませんが、打ち合わせコーナーを広くとってあるのがドイツでの展示会らしいです。
これらのメーカーは、ドイツやヨーロッパに現地法人があるので、展示や説明も、現地法人が中心となっていることが伺えました。
展示している装置も、日本で仕立てて輸送して展示しているものと、ヨーロッパの現地で仕立てて展示しているものと、大きく2通りが見られました。
興味深かったのは、ヨーロッパで仕立てた装置等の展示品で、装置全体がドイツ的・ヨーロッパ的に仕上げられていたことでした。
ドイツ的・ヨーロッパ的というのは、装置全体が大きく頑丈な作りになっている点、装置のデザインが曲面や「差し色」を取り入れてオシャレ=人間工学や作業環境に配慮している点、頑丈な安全機器、などです。
ドイツの展示会の特徴をまとめると・・・
新製品の紹介、これは日本での展示会と同様と思います。
打ち合わせコーナーの充実ぶりから、顧客や、他社との関係性の構築を重視していることがわかります。
前に触れたように、その会社の社長さんなど責任者の方が、気さくに応対しているのも特徴だと思います。製品の詳細についての紹介もありますが、どちらかというと戦略やコンセプトの提示を重視していると感じます。
そして、肝心の「インダストリー4.0」はどうなったか?
今回の展示会でよくわかったのは、シンプルに「つながって、情報取得できるものが増えている」ことでした。
例えば、「世界初」の断裂検出付き「スマートダクト」。
可動部のダクトの断裂をセンサが検出します。自転車のブレーキワイヤの原理を応用した機構が面白いと思いました。
インダストリー4.0は、「いろいろつなげるスマートファクトリー」という面では、それらの製品はわかりやすいのですが、インダストリー4.0の「戦略の効果を具体的に提示している展示」は、残念ながら無かったように思います。
日本からの見学者は少ない
今回の展示会「2023年度のまとめ」が展示会のホームページに掲載されています。それを見ると・・・
ドイツ以外の国からの見学者の国のリスト、上位20国が掲載されていました。
ヨーロッパ各国や、米国が断然多いですが、アジアの国からは、5位に中国、6位に韓国で、それ以外の国は・・・見当たりません。
日本からは、多くのメーカーが「出展」していますが、それら出展メーカー以外からの見学者は少ないようです。
ベースが違いすぎて参考にならない?!
これは今回、現地でお会いした、日本のある商社の方が言っていた言葉で、印象に残っています。
ロボットそのもの、機器そのものは、日本の製品とドイツやヨーロッパの製品では、今般、特段の差異は見られません。
問題はそれ以外の面、例えば、会社間の協力関係、取り引き関係、商談のプロセス、会社や工場の仕組みや工程、労務、規格、ドキュメント、それらが異なることです。
これらは、展示会で展示されている装置の外観ではわからない内容ですし、展示説明されていません。
展示されている装置類も、そのようなベースの違いの上に構築されているので、そういう意味で「参考にならない」という言葉は一理あると思います。逆に、参考にするためには、それらベースの違い、背景の違いを理解する必要があります。
ベースや背景は、展示会で理解するのは難しい
「展示品そのもの」は外観を見ればわかるし、それは日本で見るものと大きな違いはありません。
しかし、そのベース、背後にあるもの、考え方、目指しているものは、大きく異なると感じています。
それが展示会場の展示品を見て理解できるか、というと、難しいと思いました。
この点は、展示会より実際の工場、それもドイツの多数を占める規模の小さな工場を見学して、その会社のエンジニアやマネージメントと話をしてみたいと思いました。
今後のトレンドはAIロボットか? AI設計か?
インダストリー4.0が一定の結果を出している現在、次の世代の方向性について、各国、各エリアで検討が進められています。
ドイツをはじめとする欧米、そして、中国、日本は、どのような方向に進んでいくでしょうか。
今回のautomaticaを見学した印象でも、現在急速に進んでいるAIの技術を、協働ロボットやサービスロボットに応用する方向性が感じられました。
また、FAのメカやソフトの設計に、AI技術を応用していく方向性もあると思います。
特に欧米のメーカーは、その方向のソフトウェアの開発に注力していく可能性があると感じました。スターウォーズの「C-3PO」や「R2-D2」と会社で共に働く日も、たぶん遠くないでしょう。
人と人の交流、縁を大切に
展示会の展示品そのものも、現物を見られる点は参考になりますが、展示会を訪問する一番の意味合いは、人と人との交流にあると思います。
それは日本国内での展示会でも同じですが、特に海外での展示会は、普段会うことが難しい人と、会って話ができる貴重な機会です。
今回の展示会でも、展示品は話題作り、メインは打ち合わせ、関係性の構築を重視している会社が多いと感じました。
各展示の会社の説明される方もそうですが、会場を訪れている人、たまたま行き会った人、会場外でも食事したり、たまたま出会った人など、そこでの出会いや何気ない会話に、貴重な情報や、今後の展開につながるヒント、そして今後のご縁が含まれていると思います。
そのような意味で、海外の展示会に出展したり、見学することは、費用はかかっても、貴重で大切な機会であるとあらためて感じました。
今回のお話は以上になります。