【今月のまめ知識 第75回】 遠心力

公開日時:2019/06/26

とあるのんきな朝のひと時・・・

あるる「ふふふぅ〜ふぅ〜ん♪」

博士「あるる、今日も朝からごきげんじゃな。偉いぞ、机を拭いてくれたのか」

あるる「あ、博士、おはようございます。〝良き1日は朝の掃除から〟っておじいちゃんに言われてますから」

博士「なんて良い子じゃ。感心、感心」

あるる「えへへ(照) もう終わりましたので、かたづけますね」

博士「ああ、バケツはわしが持っていくぞ」

博士「・・・!!(ニヤ)」

あるる「ありがと・・・うわっ、博士! 突然何を〜!!

(ぶんぶん←博士がバケツをぶん回す音)

あるる「そんなことしたら、お水が・・・あれ?こぼれない・・・

博士「ふぉっふぉっふぉっふぉっ そうなんじゃ。こぼれないんじゃ。なんでだと思う?」

あるる「・・・魔法? なわけないですよね。遠心力でしょ?」

博士「おお、知っておったか。でもな、正確には遠心力ではないんじゃ」

あるる「え? 違うんですか?」

博士「違うわけでもないが、正しくもないというか。。。遠心力とはややこしいものなんじゃ」

あるる「語りたいんですよね。わかりました。まずはバケツと雑巾を片付けてからにしましょう。

さ、早く、博士」

博士「は〜い」

前号の人工衛星についてでは第一宇宙速度のお話をしましたが、第二、第三宇宙速度もあります。

第一宇宙速度は、地表近くを落下せずに円軌道で周回し地球の衛星となるための初速度で約7.9km/secでした。

第二宇宙速度は、地球の引力圏を脱出する速度です。

第一宇宙速度からさらに速度を上げていくと、楕円軌道となってその遠地点が大きく成っていき無限大となると軌道は放物線となります。

つまり地球の引力圏を脱出するわけで、この時の初速は約11.2km/secです。

この場合にその物体は、太陽の引力圏で楕円軌道を描き人工惑星となります。

第三宇宙速度は太陽の引力圏からも脱出する速度で、約16.7km/secです。

 

 

これらに関して詳しくは物理の教科書または一般のweb上で多く説明されていますので、あえてこれ以上は深く入りません。

引力圏から脱出するということは、簡単に言うと、糸に重りを付けて振り回し、どんどん速くしていったら糸が切れて重りが飛んで行ったという事です。

普通は遠心力で糸が切れたという人が多いのではと思います。

 

物理的に表現すると、「慣性でまっすぐ運動しようとしている重りを向心力(糸の張力)で強制的に一定の円軌道に進路を変えているが、速度が速くなる事で慣性力が大きくなり、この円軌道を保つための向心力が糸の張力を越えた」ということになるのですが・・・

 

「遠心力」というのは、当たり前のようでいて、実はわかりにくい力なのです。

 

我々は、遊園地の回転遊具でも自動車でカーブする場合でも外側へ引っ張られる力を感じ、遠心力と言っています。

しかし、中心から遠ざける力が積極的にかかっているわけではありません。向心力に対応する反力なのです。

 

別の言い方をすると、自動車で直進していて急ハンドルを切ると、慣性で質量のある物体はそれまでの運動を続けようとします。

 

しかしタイヤの向きが変わることで、タイヤは向心力を発生させて自動車の運動方向を変えます。下図のようにこれを外から見ると良くわかります。

ですからスリップして飛び出すのは遠心力ではなく慣性力なのです。

 

ハンマー投げも同様で、手を離した後はその瞬間の接線方向へまっすぐ飛んでいきます。

 

もし積極的な力としての遠心力が存在するなら、この接線よりも外側へ運動することもあるはずですが、そんなことはあり得ません。

 

しかしながら機械屋さん的に考えると、荷重に対する応力のように反力も認めなくてはいけません。ここで必要になるのがどの座標系で見ているかです。

 

外部から慣性座標系として見ると、上述のように遠心力など存在しない、それは慣性力であるという事になります。

一方、運動体の内部(自動車に乗っている立場)から回転座標系として見ると、外側から引っ張られる力=遠心力としてとらえることができます。

 

どちらにしてもこの外向きに発生する力は向心力の反力であるため、

それに等しい大きさで

F=m r ω2=m v2/r

であり、

 

言葉の違いで同じではないかという事になりますが、実際に積極的にかかっている力なのか、見かけの力なのかを理解しておく必要があります。

 

博士「どうじゃ、あるる。遠心力はわかったかの?」

あるる「はいっ! 博士がおっしゃる通り、遠心力はわかりにくいことはわかりました!」

博士「ふぉっふぉっふぉっ。ま、そうなるじゃろうな」

博士「今はそれでよしとしよう。もうひとつ「何を見るか」が大事じゃということも覚えておいておくれ」

あるる「はいっ!わかりましたっ! ・・・それよりも、博士ぇ〜(じーっ)」

博士「なんじゃ、あるる。そんなに見つめおって・・・」

あるる「さっきの・・・ボクにもやらせてください!」

博士「おお、バケツぐるぐるじゃな。ふぉっふぉっふぉっ、さすが男の子じゃ。よし、やってみるがよいぞ」

あるる「わーいっ!\(^o^)/! ありがとうございます!」

博士「結構重いぞ。こぼさないよう気をつけるんじゃぞ〜」

 

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