【今月のまめ知識 第74回】 人工衛星について

公開日時:2019/05/29

とあるのんきな朝のひと時・・・

が一瞬にして騒がしくなる

 

あるる「あーーーん、もう、朝から散々です〜」
博士「どうしたあるる、そんなに濡れて」
あるる「あ、博士ぇ〜、もうやんなっちゃいますよ。家を出るときは降ってなかったのに、
突然雨がザーザー降って来て・・・」
博士「なんじゃ、天気予報見なかったのか? 今日は朝から雨が降るって言っておったぞ」
あるる「え?そうなんですか? 今日は超寝坊したんで、起きて2秒で家を出ましたから、テレビなど目もくれませんでした」
博士「2秒・・・そりゃすごいのぅ・・・」
(パソコン スイッチON!)
博士「ほら、ごらん、雨雲がびっしりじゃろう」
あるる「あ、お天気サイトですね。ほんとだぁ〜。雲、綺麗に撮れてますねぇ〜」
博士「ちなみにこの天気図は、何が撮影しているか、知っておるかな?」
あるる「静止気象衛星!」
博士「おおーっ、よく知っておるな。すごいぞ、あるる!」
あるる「・・・って、ここに書いてあったの、読んだだけですけど(笑)」
博士「なんじゃ、そうか。びっくりしたではないか」
博士「これは「ひまわり」からの映像じゃ。なんでこんな写真が撮れるか、不思議じゃろう? な? な?」
あるる「博士・・・話したいんですね」
博士「い、いや、そんなことは・・・」
あるる「はいはい。聞きますよ。聞かせてください。でも、その前に羽、乾かしてきますので、ちょっと待っててくださいね〜」

なぜ人工衛星は決まった軌道を回り続けることが出来るのか?

日本の宇宙開発も官民ともに進んでいますが、宇宙関係でもアルファフレームが使用されており、多方面で利用していただいている事に感謝して、今回は人工衛星について力学的側面から考えてみたいと思います。

 

人工衛星は、なぜ決まった軌道を回り続けることが出来るのでしょうか?

 

それを理解するために、次のことを考えていきましょう。

 

まず、地表すれすれで大砲を打ったとします。その砲弾は、ある距離で地上に落下しますね。引力があるからです。

ところが、砲弾の速度を上げていくと、やがて落下の曲率と地球の曲率が同じになります。

つまり万有引力で落ちようとしたら、そこに地面が無い状態が続くと考えてください。

 

地面がない状態に加え、空気が無い状態を仮定すると、砲弾は空気抵抗が無いので速度を保ち、落下せずに1周回って、さらに回り続けます。

 

この速度を“第一宇宙速度”と言います。

砲弾においては、万有引力によって軌道を曲げられるので、慣性力により外向きの加速度が発生し、いわゆる遠心力を感じることになります。

それは、向心力である万有引力と同じ大きさで向きが逆になるため、この系においては無重力に感じることになります。

感じるというのは、実際には重力はあるけれども、回転運動による慣性力(遠心力)と釣り合って感じなくなるという事です。

第一宇宙速度を算出してみよう

では、第一宇宙速度を算出してみましょう。

 

運動方程式 F=m a より、等速円運動の加速度は、v2/r なので

 

F=m v2/r-------------(1)

 

 =m r ω2------------(2)

 

 

Fは、万有引力に等しく

F=G M m/r2-----------(3)

 

(1)(3)より

G M m/r2=m v2/r------(4)

 

地表面においては、万有引力=m g とみなせるので

式(4)は

m g=m v2/r

 

となり、これをvで解くと

式(5)に各値を代入し 

第一宇宙速度は、秒速約7.9km、時速だと約28,000kmにもなります。

なんと新幹線の100倍、ジェット旅客機の30倍以上の速度です。

 

なお、等速円運動運動している系から見た時に向心力(引力)の反力として生じている力を遠心力と言います。

 

向心力(=遠心力)は速度の2乗に比例しているので、単純計算では新幹線が地球の円周に沿って285km/hで走行した場合には、向心力の10-4の遠心力が働くことになり、重力が1/10000小さくなります。

理論的に、体重70kgの人は7g軽くなります。

 

しかし、実際には地球の自転による速度の方が速く(赤道上で1667km/h、東京で1348km/h)、自転と逆方向に移動した場合、合成速度は遅くなるため逆に重くなります。

 

補足しておくと、緯度によって自転の周速が異なり、緯度が低いほど物体にかかる遠心力は大きいため重力加速度は小さくなるので、同じ質量でも低緯度ほど重量が小さくなります。

式(2)から算出すると北極点と赤道上では重量差が、約0.34%となります。

 

  引力=質量×重力加速度

  重量=引力-遠心力

 

 

人工衛星について

さて、次に本題の人工衛星です。

人工衛星は色々な高度で飛んでおり、国際宇宙ステーションは高度400km程度、静止衛星は高度約36000kmとかなり広範囲で、高度が高いほど速度が遅くなります。

それは重力が半径の2乗に反比例するからで、半径が2倍になれば重力は1/4となります。

円運動の慣性力は、半径に反比例し速度の2乗に比例するので、半径が2倍になれば速度は1/2でバランスが取れるわけです。

今回は「ひまわり」などの静止衛星を考えてみましょう。

静止衛星というのは地球との位置関係が変わらないように動いている人工衛星です。
これは赤道上の特定高度でしか存在できません。

 

赤道以外の緯度では重力が地球の中心を向いているため、慣性力とのバランスで斜めの軌道となり、北半球と南半球を行ったり来たりするのです。

静止衛星の高度は35,786kmとなっていますが、面白いので理論計算してみましょう。

 

ここでは複雑な要素は考えず、単純な2点間の力学として考えます。

前出の式(2)(3)から

 

G M m/r2=m r ω2

これをrで解くと

r=(G M/ω2)1/3------------(6)

ここで、地球と相対位置が変わらないという事は、角速度が同じという事。

1日かけて1周するわけですが、正確な地球の自転周期は23.9344時間です。
(太陽の周りを公転しているので24時間より1/365少ない)

これを式(6)に代入し

ここから地球の半径を引き算して

h(高度)=42,163ー6,378=35,785(km)

 

 

となり、かなり正確に出ました。

僅かな誤差は地球の質量か半径でしょう。

そして、周速は23.9344時間で半径42.163kmの円を1周するわけなので

 

42163×2π/23.9344=11,069 km/h

 

となります。

また、実際には地球の重力のばらつき、太陽や月の引力の影響などでのずれを補正するためのガスジェットによる軌道修正が行われているようです。

ところで、卓上の地球儀相当として5千万分の1スケールで考えた場合、その地球儀の直径は255mmとなります。

 

そして、以下それぞれの地表からの距離を換算してみると

 

富士山の高さ ----------------------- 0.076 mm

国際線航空機の飛行高度 ------------ 0.2 mm

宇宙(定義は高度100km以上)----- 2.0 mm

国際宇宙ステーションISS ---------- 8.0 mm

静止衛星の高度 --------------------- 720 mm

月までの距離 ----------------------- 7.7 m

太陽までの距離 --------------------- 3,000 m

 

となります。

毎日ニュースの天気予報で見る気象衛星の画像は、赤道上のとても遠いところで撮影されているのです。

 

尚、電磁波の速度は毎秒30万kmなので静止衛星と地上との通信時間は片道約0.12秒となります。

人工衛星は、通信、放送、測位、観測など行えますが、今後ますますその用途は拡大して我々の日常生活を便利にしてくれるでしょう。

 

博士「どうじゃな、あるる。わかったかの?」

あるる「・・・・・・・・・・(し〜ん)」

博士「どうした? 固まっておるぞ。寝てるのか?」

あるる「起きてますよ! もう、計算が難しすぎて、フリーズしてただけですよ!」

博士「ふぉっふぉっふぉっ。それはしかたないのぅ。計算はまぁ、おいおい理解してくれればよいぞ」

あるる「ひとつバッチリわかったのは、人工衛星が綺麗な写真が撮れるのは重力のおかげ。そこだけはわかりましたー」

博士「それってすごく最初の部分じゃが・・・まぁ、今日のところはそれでよしとしよう」

あるる「はいっ! これからは天気予報も見るたびに、人工衛星を思います! 明日は晴れるかな〜♪」

博士「あるるはよいのぅ〜。いつも能天気で・・・」

 

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