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アルファ博士の気ままにトーク♪ 第13話 海外編! バウハウス訪問記 ~現代工業デザインの源流をたずねて~

公開日時:2024/03/27

今回の気ままにトークは、コーナー初の「海外編」! 建築や工芸などのデザインのお話です。

 

「バウハウス」---この言葉を聞いたことがありますか?

 

建築や工芸、美術を専門にされている方は、「あー、それはね〜・・・」という具合に、語りたいことをたくさん持っていたり、さまざまな思いがあると思いますが、それ以外の方は、もしかすると、名前も聞いたことが無いかもしれません。

ところが、この「バウハウス」は、現代の工業製品の考え方やデザインの源流ともいえる存在なのです。

 

建築好きな私は、以前から関心があったのですが、新型コロナの流行が始まる少し前の2019年、バウハウス発足からちょうど100周年の2019年に、バウハウスの街、ドイツのデッサウを訪問することができました。


今日は、その時の様子をご紹介したいと思います。

現代工業デザインの源流 ~アルファフレームも~

「バウハウス」、ドイツ語:で「Bauhaus」と書きます。1919年に、ドイツで、建築家のワルター・グロピウス氏が、建築、家具などの工業分野と、工芸、絵画、写真、美術などを融合して、新しいデザインの流れを生み出す目的で設立した学校です。

バウハウスは、活動の範囲が広いため、「これがバウハウス」ということを簡単に言うことが難しいのですが、私は「現代の工業デザインの源流」だと考えています。

「バウハウス以前」と「バウハウス以後」の建築デザインを比べるとよくわかるのですが、それ以前のデザインは、おもむきはあるけれど、重いなあ、古臭いなあ、と感じることがあります。


それに対して、バウハウス以降のデザインは、すっきりしていて、スマート、機能的、軽い感じがします。


下の写真を見てください。これが1926年に竣工されたバウハウスのデッサウ校舎。学校の建物です。

バウハウス デッサウ校舎 1926年竣工

どうですか? とても100年前の建築とは思えないですよね。むしろ現代の建物と同じで、今見るとそれほど驚きは無いかもしれませんが、100年前の当時としては、極めて画期的なものだったのです!

 

外側は「ガラスのカーテンウォール」、壁面はガラスです。
訪問した日は天気も良く、ガラスに日があたって建物全体が青空に映えていました。

 

NICのアルファフレームも、すっきりしていて、スマート、機能的、軽い感じを受けますね。直線を基本にして、板やパイプなどを組み合わせた工業的に作りやすい形。同じ機能のものを単位寸法にまとめた「ユニット」や「モジュール」を用意して、それらを組み合わせ、並べて、ものを作る考え方。そういった工業製品のデザインや考え方のルーツは、このバウハウスにあると言ってもよいと思います。

 

このガラスのカーテンウォールを見ていると、アルファフレームで出来ているように見えてきました。
ただし、この窓枠はアルミ製ではなくて、鉄製ですね!

あこがれの地、デッサウへ

デッサウは、ドイツの東部、林や畑の広がる地方の町で、隣接するロスラウと合併して、人口は9万人ほど。
ベルリンから南西、ライプツィヒの方向へ約100km、特急電車で1時間ほどの場所です。


訪れたのは10月初旬のある晴れた日。デッサウ中央駅で電車を降りてから駅前で案内板を見て、こっちかな?と歩き出し、住宅街の中の道をゆっくり7~8分進むと、ちょうどこの建物の写真とは反対側のあたりに出ました。


それらしい建物が視界に入り「これか?!」と思いながら、建物の周りを半周すると、この写真の場所に。

「おー、これだ!!」
初めて訪れる場所の醍醐味です。

 

この校舎の建物は、バウハウス初代校長のワルター・グロピウスが設計して、1926年に竣工しました。

第二次世界大戦や、戦後の体制の変化にも耐えて、現在はバウハウスを代表する建築として、大切に維持保存されています。
1996年に、関係の施設とともに「世界遺産」に指定されました。

 

コンクリートと鉄とガラスで直線的

校舎の中はどんな感じ?

建物の周りを一周し、写真も撮って、さて、中も見てみたいということで、さっそく建物の中へ。

1階にチケット売り場があり、看板を見ると、チケットにもいくつかの種類があるようです。

この建物の中を自分で見て歩く、ガイドツアーに参加する、この学校の建物以外の施設見学も含めたセット、などなど。せっかくなので「自分で見て歩く+他の施設見学も含めたセット」のチケットを購入しました。

 

チケットを購入して、順路を探しながら、建物の中の階段を上の方へ上がっていきました。
それにしても、現代的なデザイン。現代の高校か、大学の建物と思っても全く違和感がありません。むしろ、最近リノベーションした学校のように、すっきりしていて、場所によってはオシャレな感じもします。


一方で、無駄のない、機能的なデザインからでしょうか、冷たい印象も受けました。これも現代のデザインに通じるところですね。

 

廊下と窓 シンプルですっきり

階段もすっきりスマート 丸い照明がアクセント

続いて開館したばかりの「バウハウスミュージアム」へ

校舎の中をじっくり見たあとは、100周年の2019年9月にオープン、開館して1か月も経っていない、出来立てのミュージアムを見学しました。


このミュージアムは、学校の建物から歩いて15分ほど。駅を挟んで、学校とは反対側の旧市街地にありました。


100周年記念の年で、オープンしたばかりなので、混雑しているかとも思ったのですが、行ってみると平日のためか、意外とすいていました。


外観は、下の写真のようにガラス張りの建物で、そのガラスには、道を挟んで反対側の旧市街の建物などが映りこんで見えています。

建物は2階建てで、地上階部分は、表通りと反対側の公園を素通りできるようなオープンスペースになっています。


その意味では「ピロティ構造」とも言えますが、中間部分には柱がまったく無い構造で、建物の両端の柱に「50mの橋を架けた」構造になっています。


ご覧の通り全体がガラス張りになっているので、どこが出入口か、ぱっと見た時には、わかりににかったのですが、入口を見つけて、ミュージアムの中に入ります。1階の広いオープンスペースには、観覧台?のような構造物が置いてありました。

 

バウハウスミュージアム 100周年の2019年に開館

バウハウスミュージアム 1階 柱が無い構造 観覧台?のような構造物が置いてある

ミュージアムでは、有名な「椅子」などが展示されていて、最初はじっくり、途中からは時間を意識しながらササっと見学しました。

 

ミュージアムの展示は2階の1フロアに展開されています。

この2階部分は「ブラックボックス」と呼ばれていて、橋の構造で架けられた柱のない大きな一室になっています。

さらに窓も無く、全体的に暗くなっていて、展示物は照明で照らされています。まさに「ブラックボックス」の名前通りです。

 

展示はテーマごとに、コーナーが分かれており、それぞれの展示には、「題名」がついています。題名は、わかりづらいものもあれば、「なるほど」と思うものもあります。


例えば、「世界初のパイプ椅子:ワシリーチェア」ですが、「どのように空気の上に座るか?(How to sit on air ?)」と書かれています。


なるほど、宙に浮いたように座るイスなのですね。
現代のすっきりとシンプルで機能的なイスの源流を確認することができました。

 

また、広告のポスターの題名は、「広告は芸術になれるか?(Can advertising become art ?)」です。

 

ひとつひとつをじっくりと見ていきたいところでしたが、あまり見すぎると、このミュージアムだけで1日かかってしまいそうだったので、途中から少し足を早めてササっと見学しました。

ワシリーチェア「空気の上に座る」

「広告は芸術になれるか」

バウハウスの先生の住宅「マイスターハウス」

後ろ髪を引かれながらも、ミュージアム見学を早めに切り上げて、次は「マイスターハウス」です。

こちらは学校の方面のさらに先なので、来た道を戻る方向に、30分ほど歩きました。


先ほど見学した学校を通り過ぎてさらに進んでいくと、「武蔵野」とも「軽井沢」ともいえるような、林の中に住宅が点々と建つエリアになりました。


このエリアには、バウハウスの先生(マイスター)の住宅が並びます。先ほどのハウハウス学校の建物と同じ時期に、同じくグロピウスが「マイスターの住宅」として、設計して建設しました。
現在、4棟が保存されていて、学校の建物と合わせて「世界遺産」に指定されています。

林の中に建つマイスターハウス

マイスターハウスもシンプルですっきり

住んでいた先生はクレーとカンディンスキー!

保管されている4棟のうちの1棟の内部を見学しました。
ここに住んでいたバウハウスの先生は、「パウル・クレー」と「ワシリー・カンディンスキー」!!!


クレーもカンディンスキーも、現在では、抽象芸術を生み出した巨匠として知られていますが、当時は、バウハウスの先生(マイスター)だったのですね。


このマイスターハウスが出来た1926年当時、クレーは47歳、カンディンスキーは60歳。
クレーは1921年から1931年の11年間、カンディンスキーは1922年から1933年の11年間、バウハウスで活動していました。

 

そういえば、スウェーデンの「イケア」や、フィンランドの「イッタラ」などのデザインは、クレーとカンディンスキー、この2人のエッセンスを引き継いでいるように感じます。


ミュージアムで見た「ワシリーチェア」は、先生のワシリー・カンディンスキーに気に入ってもらったことを記念して、名づけられたとのことです。

 

下の写真を見てください。
この部屋が、絵を描くアトリエだった場所。窓から入る光と、室内の照明の組み合わせが、いい感じですね。


左には、ピアノも置いてあります。
外観も内装もすっきりとした、機能的なモダンな建物です。


こんな家に住んで、こんな部屋で、絵を描いたり、ピアノを弾いたりしてみたいものです。
書斎も、すっきりした机、椅子、照明が、いい感じですよね!

 

マイスターハウスのスタジオ

書斎 すっきりした机、椅子、照明

川沿いのカフェテリア これもバウハウスのデザイン

さて、今日の散策の最後は、川沿いにあるカフェテリアを目指します。


先ほどのマイスターハウスからは、1.5kmぐらい離れていますが、頑張って歩くことにしました。到着したら、ケーキとコーヒーで、休憩です。

 

左右に住宅や畑を見ながら一本道をしばらく歩くと、正面に白い建物が見えてきました。「コルンハウス」です。
名前の由来は、以前、ここに穀物(コルン、コーン)倉庫(ハウス)があったからとのこと。


建物の反対側に回ると、そこには広いエルベ川がゆったりと流れていました。
エルベ川といえば、第二次世界大戦の末期、西から進軍してきたアメリカ軍と、東から進軍してきたソ連軍が出合った「エルベの誓い」を思い出します。
両軍が出合った場所「トルガウ」は、ここから、70kmほど東になります。
そのような時を経て、エルベ川は、ゆったり流れていました。

 

このカフェテラスの建物は、バウハウスの校舎を設計した「グロピウス」の弟子、「カール・フィーガー」が設計したもの。校舎ができてから4年後の1930年の竣工、当時出来たばかりのカフェテラスで、バウハウスの先生や生徒が、楽しく歓談をしていたそうです。


よく歩きました。このカフェテリアで、甘いケーキとコーヒーで、ゆったり流れるエルベ川を見ながら、ゆっくり休憩したいと思います。

円筒形のカフェテリア「コルンハウス」 左はエルベ川)

ゆったり流れるエルベ川 流れはこのあたりで大きくカーブ この日は風が強かった

今日は、2019年に訪問したデッサウの「バウハウス」のお話でした。
シンプルですっきり、機能的な、現代につながる工業デザインの源流に触れることができました。


また、この訪問では、すっきりした中にも、人の活動を中心に考えた機能性を感じました。この「人の活動を中心にした機能性の考え方」を、これからの仕事や生活に生かしていきたいと思いました。

 

今回のお話は以上です。

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