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アルファ博士の気ままにトーク♪ 第18話【富山紹介第4弾】~とっておきの写真で紹介・立山黒部アルペンルート ~

公開日時:2024/08/28

富山といえばこれまで、「富山市立図書館」「ホタルイカ・立山連峰」「ヒスイ海岸」とご紹介してきましたが、今回は、満を持して真打登場、「立山黒部アルペンルート」です。


「とっておきの写真」を見ていただきながら、紹介していきたいと思います。

ミクリガ池から立山を望む

まずはこの写真、2022年9月25日に撮影したもので、きぬ糸のような雲と、透き通った青い空が、秋の訪れを告げています。

ミクリガ池から立山を望む

この池は「ミクリガ池」といって、立山火山の火口湖です。

このミクリガ池があるのは、立山黒部アルペンルートの最高地点、標高2450mの「立山室堂(たてやまむろどう)」です。

この名前の由縁は「御厨ガ池」(神様の厨房(台所))とも、「三繰ガ池」(修行僧が3周泳いだ後吸い込まれた)ともいわれています。

 

池の向こう側に見えているのが、立山です。
立山は、全体では台形のような形をしていますが、3つの山頂(ピーク)をもっています。


このミクリガ池の標高がすでに2430mあるので、ここから山頂までの標高差は約600mです。


立山の3つの山頂を見ていくと・・・


山並みの一番低いところ(鞍部)が「一の越(いちのこし)」、そこから左(北側)に上がった山頂が「雄山(おやま)3003m」、さらに左の真ん中が「大汝山(おおなんじやま)3015m」、その左が「富士ノ折立(ふじのおりたて)2999m」です。


一の越の右側の三角形の山はといえば、「浄土山(じょうどさん)2831m」です。

ハイマツ帯

この写真は同じミクリガ池を別の少し高いところから撮ったもので、池の周囲は「ハイマツ」に覆われています。


このミクリガ池がある立山室堂は、高い樹木が無い「森林限界」より高い場所にあります。
このハイマツや岩陰を隠れ家にして、ライチョウが生息しています。

ハイマツ帯

ミクリガ池から一の越へ

この日、室堂のミクリガ池から「一の越(標高2700m)」まで登りました。


ミクリガ池からは約250mの高低差、距離は約2kmです。
見た目には、なだらかな坂ですが、標高はすでに2400m以上あるので空気が薄くて、急ぐと息が切れます。
時々足を止めて、回りの景色を楽しみながら、ゆっくりと登っていきました。


立山黒部アルペンルートは、ケーブルカーや高原バスで、標高が高い場所に短時間で行けますが、薄い空気に体がなじむ時間も短いので、その日の体調に配慮して、無理のないように行動しました。


行程の前半は、写真のように、ゆるい坂ですが、後半はだんだんと急になって、最後はつづら折りの階段になります。

ミクリガ池から一の越へ

一の越から室堂の眺め

さて、1時間ほど歩いて、一の越に着きました。
来た道を振り返ってみます。


遠くの山の手前の平らになっているところが「立山室堂」で、近くに先ほどの「ミクリガ池」(左の大きな方の池)と、「ミドリガ池」(右の小さな方の池)が見えています。


2つの池のさらに右を見ていくと、白いけむりが見えていますが、これが「地獄谷」の噴気です。


前回(第16話「遠くて近いもの」第3弾! ~「生命」化石が語るその稀有な存在、温泉につかって思いをめぐらせる~)でご紹介した場所です。


ここから見ると、室堂の全体が、火山の火口とその周辺の地形であることががよくわかります。


山の向こう側が、富山平野で、写真では、ぼんやりしていますが、その向こうには富山湾が望めます。

一の越から室堂を望む

一の越から雄山を望む

ここ一の越から雄山の山頂を仰ぎ見ます。


この斜面は、室堂とは反対側の「黒部ダム」側です。
ここから山頂までの標高差は、約300mになります。
山頂までもう一息ですが、ここからは、少し急な勾配で、岩場になります。


写真の左の稜線に、小さく、人が歩いているのが見えていますね。

この日は、すでに時間が昼を過ぎていて、また息がつらいこともあって無理をせず、雄山には登らず、ここ一の越までとしました。

その代わり、この場所で、持参した弁当を広げて、昼食を取りながら、この景色をゆっくり楽しむことができました。

一の越から 雄山(おやま)3003mを望む

一の越から、大汝山方向を望む

さらに、室堂側の斜面を見ると、雄山の先に、北の山頂「大汝山(おおなんじやま)3015m」が見えています。

一の越から大汝山(おおなんじやま)3015mを望む

早春の立山 ~幻想的な風景~

次は、季節を一気に戻して、4月末のまだ雪に覆われている、早春の立山を紹介したいと思います。

早春の立山

この写真は、今年、2024年4月29日に撮ったものです。

先ほどの「ミクリガ池から一の越」の写真より少し室堂寄りの場所から同じ方向を写したものです。

まだこの周辺は積雪が5~10mほどあります。
雪面が茶色になるのは、大陸からの黄砂などの影響があるそうです。

 

この場所から、「ミクリガ池」の方へ戻ってみましょう。

 

室堂小屋

小屋が軒下まで雪に埋まっています。
積雪は3~4mありそうです。

この小屋は、大変由緒のあるもので、「室堂」の地名の由来になった「室堂小屋(むろどうごや)」です。

 

江戸時代中期(北側小屋)そして後期(南側小屋)に建てられ、修験者や、参拝登山をする人々が宿泊しました。
国の重要文化財に指定されています。

ミクリガ池から立山を望む

ミクリガ池まで戻ってきました。


水面は、まだ大部分が雪に埋まっています。
一部の水面が見えていて、青緑色の独特な色をしています。

太陽の周りに「虹」がかかって、幻想的な雰囲気です。この虹は「ハロ(日暈:ひがさ)」と言うそうです。

なんだか、地球では無いような雰囲気も感じます。月面のクレーターのようにも見えてきました。
雪の上をどこへでも歩いて行けそうです。


でも注意。うかつに踏み込むと、何メートルもの深い穴が開いたりしています。そう、雪が地形をふんわり覆っているので、その下に空洞があるのです。


ミクリガ池の水面は、春になり、日を追うごとに広がっていきます。

白いライチョウ ~厳しい冬を越して~

周りは白一色の景色ですが、雪の解けたところには、緑のハイマツが見えています。


おっと、何か動いた? ハイマツの中で、何かが動きました!

 

ハイマツとライチョウ

よくよく見ると、ライチョウです。

からだはほとんど白、頭は、白黒のまだらです。
この時期のライチョウは、このような色なのですね。

 

このハイマツの植生するエリアは、特別天然記念物ライチョウの保護区域で、立ち入りが禁止されています。

この写真は、保護区域の手前から、望遠で撮りました。

ハイマツの中で目立たず、たたずんでいたライチョウですが、しばらく見ていたら、「サッ」と羽ばたいて、近くの雪の上に立ってくれました。


このライチョウ(「個体」といいますね)は、昨年生まれた若いオスだと、自然保護の係の方が、説明してくれました。

深い雪に覆われる立山室堂ですが、急な岩場の斜面は、岩やハイマツが露出している場所もあり、ライチョウは、そのような場所で越冬するとのことでした。

ライチョウ

雪の大谷 ~その全貌~

そして、雪の大谷です。

いま、オオタニといえば、大リーグで活躍している大谷翔平選手のことですが、立山でオオタニといえばこの雪の大谷。


立山黒部アルペンルートの最高地点「室堂」の近く、立山有料道路の車線を除雪した部分になります。

雪の大谷

立山黒部アルペンルートは、5月の連休へ向けて、2月頃から除雪を進めて、4月中旬から下旬にかけて開通します。


この日、2024年4月29日は、道路面からの雪面の高さ(雪の深さ)は12mで、今年の最高の高さはほぼ平年並みの約14mとのことでした。


室堂地区の積雪は、平均すると5~6mですが、この場所は、山の北側の斜面の下になっていて、雪が溜まりやすい場所なのです。


雪国では、除雪した雪をロータリー式の除雪車が吹き上げて、路肩の雪の上にさらに積まれることが多いですが、ここでの除雪は、大型のブルトーザーで上から少しずつ削って、離れた場所に運ばれるので、この大谷の深さは「正味の積雪深さ」になっています。

雪の大谷を室堂ターミナルから望む

室堂ターミナルの建物の屋上から、雪の大谷の方向を写した写真です。
雪の大谷の全貌がわかります。

雪の大谷が、山の斜面の下、山麓部分に、ナイフで切れ目を入れたように見えています。このような場所なので、特に積雪が多いのですね。

 

以前は、1車線分だけを除雪していましたが、現在はバスなどが通る1車線に加えて、人が歩いて見学できるようにもう1車線、合わせて2車線を同時に除雪しています。

こう見ると、山の上の方から雪崩が来そうにも感じますが、「この斜面の雪は固く締まっていて、雪崩れてくることはまず無い」とのことです。

 

手前が室堂ターミナルの駐車場で、たくさんのバスが停まっていますが、右側に黄色い大きなブルトーザー1台と除雪車1台が見えています。

立山黒部アルペンルートの高原道路部分に入って走行できるのは、路線を往復している立山高原バス、そしてタクシー、観光バスなどです。

ここを走行してよいバスは、ハイブリッド式や低公害型の車両のみとなっています。

春の立山 ~雪解けが急速に進みます~

次は、雪の大谷を見た日から1か月ほど後、2024年5月26日に、富山から、黒部ダム(黒四ダム)まで往復した時の写真です。

黒部湖と後立山連峰

先ほどの、立山黒部アルペンルートの最高地点「室堂2450m」を越えて、東側の黒部ダム方向に下っていきます。


室堂から東側のアルペンルートは、さらに、いろいろな乗り物を乗り継ぎます。

室堂ターミナルは立体構造になっていて、地上がバスターミナル、上部がホテル、レストラン、売店、屋上の展望台、そして地下が「トロリーバス」の発着場になっています。

 

ここから黒部ダム方向へは地下トンネルを走る「立山トンネルトロリーバス」で、ちょうど雄山の真下あたりを通過して、黒部ダムを望む「大観峰(たいかんほう)」に出ます。

このバスは「日本で最後のトロリーバス」で、今年2024年の夏の営業で最終運行となり、来年以降は「電気バス」に転換される予定です。

この写真は、大観峰から、黒部湖を見下ろしたものです。

写真の右側が黒部湖、左側の下に隠れていますが、そこに黒部ダム(黒四ダム)、正面が「後立山連峰(うしろたてやま連峰)」です。

この後立山連峰の頂上までが富山県立山町、その先は長野県大町市です。

黒部平から立山を望む

大観峰から、ロープウェイで下ったところが「黒部平」です。

この写真は、黒部平から、立山を見上げたところです。
真ん中にロープウェイの軌道ロープと、その先に大観峰の駅が小さく見えていますね。

雪解けが、山の下から上に向かって進んでいます。

 

さらに黒部平からは、地下のケーブルカーで下りて、下ったところが「黒部ダム」です。

黒部ダムから立山を望む1

黒部ダムから立山を望む2

黒部ダムを徒歩で反対側に渡って、立山を望んだ写真です。

黒部ダムの名物の「放水」は、時期的にまだ行われていませんでした。
通常は、夏季の日中、今年は6月26日から10月15日までとなっています。

 

以上、いかがだったでしょうか。

雄大な山岳地形、過酷な環境に生きる動植物、深い積雪などの自然環境、そして人間が作った交通ルートやダム、立山黒部アルペンルートは、いろいろな風景を見ることができる場所です。

その風景は、四季折々、また、天気による変化の幅が非常に大きいので、その印象は訪れる時期や天気に大きく左右されると思います。

特に山の天気は、狙っても外れることが多く、難しいものですが、その時々の体験を大事にして、何度か訪れれば、毎回素晴らしい経験ができると思います。

 

今回のお話は、写真をメインに立山黒部アルペンルートをご紹介しました。

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