【今月のまめ知識 第93回】エネルギーの種類と相互変換

公開日時:2020/12/23

とあるのんきな朝のひととき

あるる「博士ぇ〜、見てください。じゃーん!」

博士「ん、なんじゃあるる、スマホの充電器ではないか?」

あるる「ただの充電器じゃないんです。裏側を見てください。ホラっ!!」

博士「おお、ソーラーパネル! 今時のソーラー充電器はこんなに小さいのか!」

あるる「すごいでしょー。おじいちゃんサンタさんからの一足早いクリスマスプレゼントです♫」

博士「おじいちゃんもせっかちじゃのう。クリスマスまで待てなかったと見える(笑)」

あるる「これがあれば停電になっても、お日様が出ていれば充電バッチリです」

博士「便利な世の中になったものじゃのう。ところであるるよ、太陽からもらえるのはなんじゃ?」

あるる「えっ? 急に聞かれると・・・えっと、エネルギー?」

博士「まぁ、そうじゃな。正確には『太陽光』、光じゃ」

あるる「ですね。太陽を見ると、『うわ、まぶしーっ!』ってなります」

博士「では、スマホはなんで動いている?」

あるる「これはすぐわかりますよ。電気!です!」

博士「正解。では、あるるよ。なぜ光が電気を動かせるのか、わかるかの?」

あるる「えっと、えっと・・・そんな風に考えたコトなかった〜!そう言われると、な、謎〜っ!!」

博士「ふぉっふぉっふぉっ。じゃろう。ここがエネルギーの面白いところなんじゃ」

あるる「お、教えてください! エネルギーのこと、し、知りたいです!!」

博士「おお、いつになくエネルギッシュじゃのう〜(笑)」

エネルギーの種類

前回の「カーボンニュートラル」に関連して、今回はエネルギーの話をしたいと思います。

環境問題を議論する中で必ず出てくる、エネルギーとは仕事をすることが出来る能力の事です。

ここでいう仕事は物理学での仕事であり、この能力がエネルギーで同じ単位で表されます。

 

エネルギーにはいろいろなものがあり

 力学的エネルギー(運動エネルギー、位置エネルギー)

 熱エネルギー

 電気エネルギー

 原子核エネルギー(核分裂、核融合)

 化学エネルギー

 光エネルギー

などがあります。

 

単位はJ(ジュール)であり、SI単位系で表すと

と、なります。

 

つまり、1Jとは1Nの力で1mの距離を動かす仕事に相当するエネルギーであり、

1Wとは1秒間に1Jの仕事をする仕事量の事です。

 

 

実は原子力、地熱、海水の干満以外のエネルギーは、すべて「太陽」が源です。

 

地熱は地球内部の熱であり、地球の自家発電のようなもの。

海水の干満は月と太陽の引力に寄るので太陽もかかわりはありますが、宇宙空間でのバランスなので太陽エネルギーというわけではありません。

 

 

エネルギー変換

光エネルギーというと太陽光発電が思いつくでしょうが、代表的なものは植物の光合成です。

これは光エネルギーを化学エネルギーに変換して大気中のCO2からCを取り込んで体を作り、結果的に我々の身体になっているのです。

 

ソーラーパネルは光エネルギーを電気エネルギーに変換しています。

電池(蓄電池、燃料電池)は、化学エネルギーを電気エネルギーに変換しています。

 

モーターは電気エネルギーを運動エネルギーに変換しています。

 

内燃機関は、石油の化学エネルギーを熱エネルギーに変換し、さらに運動エネルギーに変換しています。

 

そしてそれぞれの変換時に、熱や音、振動(最終的にすべて熱)としてロスが出ます。

 

エネルギー換算

色々比較して考える基準モデルとして、時速50kmで走行している1.3tonの乗用車として設定してみます。

運動エネルギー

この運動エネルギーは

この乗用車が停止するまでに、これだけのエネルギーを放出します。

ブレーキを掛ければその発熱として、惰性で停止しても軸受けや歯車、タイヤの摩擦、空気との摩擦による発熱等のトータルがこのエネルギーになります。そして、EVにおける回生エネルギーは、走行している運動エネルギーの大部分を電気エネルギーとして回収するわけです。

熱エネルギー

このエネルギーを試しに熱に換算してみましょう。

20℃の水、1リットルを50℃まで上昇させるエネルギーは

となり、前出の運動エネルギーとほぼ同等です。

 

つまり、この乗用車を停止させるために放出される熱エネルギーは、

50℃、1リットルの水が20℃まで下がるときに放出する熱量に等しいという事になります。

急停止でも惰性でゆっくりの停止でも同じです。

 

位置エネルギー

次に運動エネルギーと位置エネルギーですが、上記条件を位置エネルギーに変換すると

となり、1.3tonの乗用車を9.84mの高さから落下させたときのエネルギーとなります。

摩擦による熱損失がないと仮定すれば、垂直落下でも坂道を転がり落ちる場合でも同じです。

 

ちなみに、一般家庭の1ヶ月の電気使用量は250kWh程度なので、ジュールに換算すると

となり、基準モデルの約7178倍になります。

 

原子核エネルギー

次に原子核エネルギーを考えてみましょう。

質量1gはどれほどのエネルギーを持っているのか?

となり、基準モデルと比較すると

基準モデルの約7億倍

つまり、1gの原子核エネルギーは、時速50kmで走行する1.3tonの乗用車約7億台分のエネルギーという事になります。

 

核分裂ではなく、放射能を出さない核融合発電が実現できれば素晴らしいです。

 

 

 

エネルギーの有効化

またエネルギーは変換時にロスが出るわけですが、変換前と変換後のエネルギーの総量は同じです。

これは言うまでもなく“熱力学の第一法則”(エネルギー保存の法則)です。

そして、熱として放出されロスとなった分はすべてを取り戻せません。

これは熱エネルギーの不可逆性を言った“熱力学の第二法則”(エントロピーの法則)です。

 

つまり、エネルギーの種類も大事ですが、コジェネ(コージェネレーション/熱電併給)などで出来る限り排熱を回収することも大変有効であることがわかります。

ちなみに、大気に放出された熱は宇宙に放出されますが、宇宙はビッグバン以降、膨張・冷却を続けているので冷え続けていて、現在は絶対温度で3K(マイナス270℃程度)との事です。

 

日本はエネルギー資源を輸入に頼っており、そして島国です。

欧州のように、各国の特性を生かした発電による隣国との各種エネルギーのやり取りで、ベースロードを確保することは困難であり、また太陽光や風力発電においても決して良い条件を持っているとは言えず、とても難しいところだと思います。

しかし燃料電池は将来大きな可能性があります。

これまでの水素の製造は、化石燃料(天然ガス等)から製造する「グレー水素」でしたが、これでは製造時にCO2を出してしまいます。

化石燃料を利用しても発生するCO2を貯留して外へ出さない「ブルー水素」がありますが、CO2の発生はあります。

そこで、水の電気分解をはじめとして化石燃料を使用しない他の方法で製造し、もちろん使用する電力は再生可能エネルギーを利用して水素の製造を行う「グリーン水素」が理想です。

ブルー水素やグリーン水素を製造する研究が進んでいますが、それが大量に安価に生産されることに期待しましょう。

また、FCV車載タンクに充填するために70MPa(約700気圧)まで圧縮していますが、これも再生可能エネルギーを使用することで環境に良いエネルギーが入手できるようになることに期待を持ちたいです。

また色々な機器の製造時や廃棄時の環境負荷も大事な要素です。

色々な発電方法、蓄電方法、エネルギーの取出し方にはそれぞれ一長一短があり完全な方法はありません。

技術開発においては、それらすべてを進めることで新しい発見があり、技術が生まれ、そして隣接可能性からまた新たな技術が生まれるでしょう。

 

色々な発電方式や最終使用方式(自動車等)をバランスよく進めていくことで持続可能な経済活動が可能となるでしょう。

博士「どうじゃ、あるる。エネルギーの世界は面白いじゃろう」

あるる「はいっ! いつものように計算式は難しくてよくわかりませんでしたが(笑)、エネルギーはいろんなものに変換できることはわかりました! 面白いですねー。」

博士「そうじゃ、そこ、大事じゃぞ。数字はまぁ、おいおい理解していけばよいとして、まずは面白いと思う気持ちを大切にするんじゃぞ」

あるる「はいっ!! 」

博士「おお、返事だけはエネルギッシュじゃ(笑)」

あるる「ところで博士、そろそろ私たちもエネルギー変換が必要だと思うのですが・・・」

博士「ん? どうしたあるる、お腹が空いたのか?」

あるる「さすが博士、よくわかりますね♪」

博士「ふぉっふぉっふぉっ。そのくらいはお見通しじゃ。では、おやつの時間にしようかの。あるるの1番のエネルギーは、スイーツじゃろうからのぅ〜(笑)」

あるる「はいっ!!! わーい、おやつだ、おやつだ〜\(^o^)/」

 

 

 

 

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