【今月のまめ知識 第15回】「防音」とは何か?
公開日時:2014/06/23
博士「あるるっ!あるるっ! これっ、あるるっ!!!」
あるる「♪〜♪♪ ♪〜♪♪♪ ♫ ♬ ♪〜♪♪ ♪〜♪♪♪ ♫ ♬〜」
博士「こりゃ、あるるっ!!! (ごつん)」
あるる「いててっ! わっ、博士! なんですか、急に。ビックリするじゃないですか〜」
博士「“ビックリするじゃないですか〜”じゃないぞ! ビックリしているのは、こっちの方じゃ!」
あるる「一体どうしたんですか?」
博士「どうもこうもない! なんだ、さっきからこの大爆音はっ!」
あるる「良い曲でしょ〜。最近ハマってるんですよ。博士も一緒に聴きましょうよ!」
博士「もう、とっくの昔に聞こえておるわいっ! じゃんじゃかじゃんじゃかうるさいぞ!」
博士「おかげで、せっかくのお昼寝タイムが、台無しじゃっ!!」
あるる「あらら・・・そんなに聞こえてましたか?
暑いのを我慢して、しっかりドアと窓を閉めていたんですけどね・・・」
博士「うーん、気をつかってくれたのはわかるが・・・そんなくらいじゃ、防音はできんぞ!」
博士「よし、ちょうどいい機会じゃ。今日は「防音」について、しっかり学んでもらうからな!
覚悟せよ、あるる」
あるる「・・・はーい、わかりましたーーー」
博士「返事は短くっ!」
あるる「はいっ!!」
騒音を発する装置を、「カバーで囲んで防音したい」というご相談をよくいただきます。
家や車の中だと窓を閉めることで、かなり静かになりますが、
騒音を出す装置を薄い樹脂板で囲んでも、
思ったほど静かにならなかった経験を持つ人も
少なくないのではないでしょうか。
「防音」と一口で言っても、音を遮断するのか、
それとも吸収するのかによって、取るべき方法が違います。
今回は、「防音」に関して、詳しくご説明いたしましょう。
音のさまざまな伝わり方について
まず、「音はどう伝わるのか」から、理解していきましょう。
発音体が振動し、空気に疎密の状態ができ、これが伝わることで、
私たちの耳に音が届きます。
実際には、音はさまざまな物体にぶつかったり、吸い込まれたり、
跳ね返されたりしています。
これを「音が物体に入射するとき、一部は反射し、
一部はその物体に吸収され、一部は透過する」といいます。
● 反射(跳ねかえった音)
音エネルギーがある物体にぶつかったとき、跳ね返る状態を「反射」といいます。
● 透過(遮蔽物を通り抜けた音)
音エネルギーが異なる物体の中を通り抜けてゆく状態のことを「透過」といいます。
● 吸収(遮蔽物によって消滅した音)
音エネルギーが異なる物体にあたったときに、その物体との摩擦や振動によって、
音エネルギーが、熱エネルギーに変換する状態を「吸収」といいます。
壁のような音の進行を妨げる物体に入射した音エネルギーは、
熱エネルギーや運動エネルギーに変換されて、減衰していきます。
「防音」とは
遮音・吸音など、それらを含めて「防音」といいます。
「防音」といっても、音波を反射させているのか? 吸収しているのか?
音が壁にぶつかった時、反射するか吸収するか、または透過するか?
を考える必要があります。
壁にぶつかったとき、反射する分を「遮音」といい、
反射しない分を「吸音」といいますが、
吸音の中には、さらに吸収と透過があります。
下図は、音が壁に当たったときの様子を示します。
I は入射波のエネルギー
R は反射波
T は透過波のエネルギー
r は壁に吸収される(結局は熱エネルギーに変換される)エネルギーを
表します。
この図を見てもわかるように、
入射波=反射波+吸収(熱エネルギー)+透過波
となります。
壁が完全な剛体であるなら、音波の振動エネルギーは、すべて反射して戻ってきます。
逆に、壁が弱くて振動すると、音波は反対側に「透過波」として放射されます。
音波が壁を通過するときに、振動エネルギーは熱エネルギーとして、
壁に吸収される量があります。
吸音とは反射以外なので、吸収と透過を含みます。
従って、音波を反射しなければ、透過量が大きくても吸音率は高いと言えます。
「遮音」と「吸音」
騒音となる音を小さくしたり(吸音)、外部にもらさないようにしたりすること(遮音)が基本です。
家の中にいて窓を閉めると、外の騒音は以下の3つに分かれます。
・反射されて空へ飛んでいく量
・ガラスに熱エネルギーとして吸収される量
・透過して室内に伝わる量
しかし発音体を箱で囲むと、反射された分は空へ飛んでいくのではなく、
内部でずっと反射してエネルギーが残ります。
つまり、家の窓では音を反射させることは有効ですが、
騒音を出す機械装置のカバーでは、音波のエネルギーを吸収させることが必要になるわけです。
容易に振動する樹脂の薄板では、大部分のエネルギーは透過してしまいます。
一般的に、厚みのあるものや、質量の大きなものが防音(吸音)効果があると言うのは、
こういった理由からです。
音が透過するのは壁が振動するからで、質量の大きなものほど加速度が小さくなり
振動しにくくなるからです。
防音材について
音を吸収しやすい材料として、グラスウールなどがあります。
これは音波が当たるとグラスウール内の空気が運動し、
空気とグラスウール、グラスウールの繊維同士の間で摩擦熱が発生し、
音波の振動エネルギーが熱エネルギーに変換(吸音)され、音の反響を小さくします。
しかし、この吸音のメカニズムは複雑で、グラスウールは中高周波では効果がありますが、
低周波ではあまり効果がなく、低周波領域で理想的な防音になるのが「鉛」です。
低周波の音は人間の耳で聞いてもうるさく感じないのに、
音圧を測定すると意外に高い数値が出ます。
しかし、鉛などを貼るのは非常に大変です。
市販で鉛ベースの防音シートがありますから、
それを鋼板に貼り付けてカバーする事が望ましいでしょう。
また、防音とは安易に囲めばよいと言うものではなく、
「遮音」したいのか「吸音」したいのか、
その音の周波数はいくつなのか、
そしてどれくらい低減したいのか、などによって方法は異なります。
カバーが主目的で、わずかでも静かになれば良いと言う程度であれば、
透明樹脂カバーでも良いですが、ある程度の防音効果を期待するなら
鋼板カバー(内部を見たいのであれば小窓を作って透明板を取付けする)を、
さらにしっかりした防音効果を要求するのであれば、
鋼板カバーに防音材(適した周波数に効果のある物)を貼り付けることが有効です。
博士「どうじゃ、あるる。防音の奥深さが少しはわかったかの?」
あるる「はい・・・閉めた窓を通り越して、音は伝わっていっちゃうんですね」
博士「わかったら、これからは気をつけておくれよ」
あるる「はい! 特にお昼ご飯を食べ終わった頃にはかけないようにします。
ちゃんとお昼寝しないと、午後の授業が怖いんだもん・・・」
博士「ふぉっふぉっふぉっふぉっ、そうか、そんなつもりはないのじゃがな」
あるる「これからは、ヘッドフォン使うようにしますね、博士♫」
博士「なんじゃ、良いもの持っているンじゃないか! 最初から使っておくれよ〜」
あるる「てへ♪」