【今月のまめ知識 第24回】金属の起源
公開日時:2015/03/17
ある平和な朝−−−
いつもは博士が来てもウロウロしているあるるが、
珍しく自分の席に座っている。
目をキラキラ輝かせながら、聞く気満々、やる気満々の様子だ。
よっぽど金属の話が面白かったらしい。
「ドヤ顔」で持って来た文房具を机の上に並べ始めるあるる。
机の上には、金属製の筆箱、金属製のシャーペン、クリップ ファイルまでが金属製だ。
博士「おはようあるる。もう座っておるのか。今日はやる気充分のようじゃのう」
あるる「おはようございます!」
博士「おや、あるるの机は、金属だらけじゃのう。筆箱に、クリップに、ファイルもか」
あるる「気づかれましたか! 前回の授業を聞いてから、妙に集めたくなって♪」
博士「ははは。素直でよろしい」 博士「よし、今日は“金属の誕生”の話をしよう。あるるは、どうやってできたと思う?」
あるる「どうやって…? 鉱石から…できたのでは…?」
博士「それは原料じゃな。では、その鉱石はどうやって生まれてきたのかな?」
あるる「え? 石が生まれる…?! ニワトリみたいに卵から生まれるわけじゃないし…???」
博士「(突然)バーーーーーーンッ!!!!!」
あるる「ひっっ Σ(゜∀゜ノ)ノ 」
博士「・・・という大爆発が宇宙で起こったのが、そもそものはじまりだと言われておるんじゃ」
あるる「もう、吃驚させないでくださいよー(ドキドキ)」
博士「ふぁふぁふぁふぁ(笑) じゃ、心の準備ができたら話を始めるぞ」
2月号(豆知識第23回)では、
金属とは化学的に金属結合するもので、その結合について説明しました。
私たちの身の回りには当たり前のように金属がありますが
いったい金属は、いつ、どうやって産まれてきたのでしょう?
金属(物質)の起源
137億年前、ビッグバンという大きな爆発により
宇宙が誕生したと言われています。
その爆発により、最初に水素とヘリウムの原子ができ、ガス状に漂います。
やがて、それぞれの原子が引き寄せられ、ガス状の雲となり「恒星」が誕生します。
その引力で原子同士が引き合い、圧縮されて核融合が起こり、
ベリリウム、炭素、酸素、ネオン、マグネシウム、ケイ素と、
周期表の原子番号が偶数の元素が次々と生成されます。
恒星はそのように成長しながら次々と重い元素を作ってきたのです。
アルミニウムは原子番号13で奇数の元素ですが、
奇数の元素は、生成された元素に、
水素や重水素が核融合してできたと考えられています。
鉄の誕生
しかし、この核融合という作業は、原子番号26の『鉄』で終わります。
では、鉄より重い元素はどうしてできたのでしょう?
成長を終えた恒星の中心部は鉄ですが、非常に大きな恒星の中心部は
その圧縮に耐え切れず、超新星爆発が起きます。
この爆発前に起きる核分裂で中性子ができ、
そして重力により恒星内が圧縮され、核融合が起こることで、
鉄よりも重い元素ができたと考えられています。
そしてその核融合のエネルギーで、星が爆発するわけです。
宇宙に最も多い元素は、最初にできた水素とヘリウムですが、
鉄よりも軽い元素は放っておくと核融合や燃焼で、やがて鉄になります。
鉄よりも重い元素は超新星爆発という稀なことが起きないとできない上に
核分裂などで、こちらもやがて鉄になります。
すべての元は水素であり、そこからあらゆる物質が生成され、
我々はそれぞれの物質の特性を活かして、あらゆるものを作っているわけです。
なお今年の2月に、すばる望遠鏡での観測結果から、奇数元素の原子番号3であるリチウムが、新星爆発により大量に生成されていたことが国立天文台から発表されました。
重い鉄が地表に多い訳
さて、星の中では重いものほど中心部にあるわけで、地球の中心部は鉄です。
地表付近に多い元素は、酸素、ケイ素、アルミニウムなどですが、鉄は地表近くに大量にあります。
なぜ、地球の中心部にある重たい鉄が地表に多くなるのでしょうか?
それは、元々「鉄イオン」として海中に存在していたものが、
約27億年前にシアノバクテリアなどの光合成生物が生まれ、大量の酸素を吐き出し、
その酸素が鉄と結合し「酸化鉄」となって
海底に沈殿、堆積し、鉄鉱床となりました。
酸素と鉄が結合し酸化鉄となり、「鉄鉱床」を形成
これが海底隆起によって地上に現れて、鉱山となったのです。
海底隆起により地上に出現
この鉱山から発掘される鉄鉱石を還元して、鉄を作ることを「製鉄」と言います。
アルミニウムの誕生
アルミニウムの原料であるボーキサイトは、
酸化アルミニウムの比率が高い岩石が風化を受け、
ラテライト(熱帯性土壌)を経て生成されたと考えられています。
ボーキサイトは、酸化アルミニウム、ケイ素、鉄、マグネシウムなどが含まれています。
そこから水酸化アルミニウムを取り出してそれを加熱するとアルミナ(酸化アルミニウム)になり、それを電気分解して還元することで、アルミニウムが得られます。
この工程をアルミニウムの製錬と言います。
アルミニウムは地表で酸素、ケイ素に次いで3番目に多い元素であり、
土壌や他の鉱石にも多く含まれていますが、
それらから取り出すことは非常に難しく、
ボーキサイト以外から製錬することは現実的ではないとされています。
銅などは自然界にそのままの形で存在しますので、銅鉱石を熱すれば溶け出しますが、
鉄、アルミニウムとも自然界にはそのままの形で存在しないため、製鉄、製錬という工程が必要となります。
あるる「想像以上に壮大な話でしたねぇ・・・(遠い目)
まさか地球の中心が鉄でできているとは思ってもみませんでしたよ」
博士「その辺が宇宙の神秘なんじゃ」
あるる「宇宙の神秘・・・(遠い目)無限に広がる大宇宙・・・ いい響きですねぇ〜」
博士「あるるがオトナになる頃には、宇宙旅行も夢ではなくなってるかもしれないぞ」
博士「憧れるのぅ、宇宙旅行・・・ これぞ男のロマンじゃのぅ・・・(遠い目)」
あるる「えっ?! 男のマロン?!」
あるる「マロン、大好きです\(^o^)/ よーし、今日のおやつはマロンケーキにきーめたっと♪」
博士「・・・ロマンよりマロンか・・・ あるるがロマンを語れるようになるには、どのくらいかかるんじゃろうのぅ・・・」
さっきよりもさらに遠い目になる博士であった。