【今月のまめ知識 第56回】 塑性

公開日時:2017/11/27

ある晴れ渡った朝・・・

博士「おはよう、あるる。前回学んだ「弾性」について、なにか質問はあるかの?」

あるる「ありませぇ〜ん。大丈夫デェ〜す」

博士「おお、そうか。優秀、優秀。では、問題を出すぞ。弾性の反対はなーんじゃ?」

あるる「弾性の反対? 違う「だんせい」の反対ならわかるんですけど・・・」

博士「女性じゃろ。男性、女性ってな。ふぉっふぉっふぉっ」

あるる「ほら、笑う〜、だから言わなかったんです〜(ぷー)」

博士「わるかった。ほら、機嫌を直して。じゃ、正解をいうぞ。答えは「塑性」じゃ」

あるる「えっ?! 蘇生? へぇ〜、そうなんですか? しらなかったな〜」

博士「知らなくて当たり前じゃ。まだ教えてないんだからな」

あるる「そうか、蘇生かぁ〜、やっぱりこう、息を吹き込むタイミングが難しいんでしょうかね?

それともマウスツーマウス・・・きゃぁ〜(照)知りたかったんですよ、常々」

博士「??? あるるよ・・もしや・・・」

あるる「へ?」

博士「お前が思っているのは、ふーふーひーの「蘇生」じゃな」

あるる「はいっ!その通りです!」

博士「残念ながら同じ「そせい」じゃが、字が違ってな。「塑性」と書くのじゃ」

あるる「そせい違い・・・ニホンゴムズカシイネー」

塑性とは

前回までは、弾性についてお話してきました。

この「弾性」の対義語は「塑性」であり、弾性と塑性の意味は言うまでもありませんが成り行き上

概念をお話ししておきます。

 

弾性とは荷重を取り除くと元の形状に戻る性質ですが、これには限度があり荷重を大きくしていくと、

元に戻らない永久変形を生じます。

この性質を「塑性」と言い、この永久変形を「塑性変形」といいます。

 

言い換えると、原子の配置に変化がなく、その原子間距離の伸縮のみによるものが弾性変形であり、

原子の結合を破壊して新たな配置とすることが塑性変形ということです。 

そして弾性変形から塑性変形に変わるポイントを弾性限度と言います。

「第5回 強さって何?」で、「降伏強さ、耐力」について説明しましたが

軟鋼などの場合には降伏点の前に弾性限度があり、その手前に比例限度があります。

アルミニウムなど降伏点を持たない材料の場合は0.2%の永久歪を残す応力の75%を弾性限度としています。 

 

塑性加工

この塑性という性質が、金属を利用するのに大変便利な性質となっているのです。

大きな力を加えて変形させる、プレスや鍛造といった加工です。

これらは切削に比べて材料の損失が少なく加工時間も短くできるのです。

 

塑性加工には、熱間加工、温間加工、冷間加工があります。

金属は熱膨張があるので冷間加工の方が精度高くできるので出来るだけ冷間が望ましいですが、

硬い材料などでは熱間加工が必要となります。

 

また塑性加工では加工硬化という性質があり、

塑性変形させることでその前より降伏点が高くなる事があります。

 

これは塑性変形によって組織の転位(ズレ、移動)が起こり

次の転位を起こりにくくするために生じるものです。

 

これは良い点、悪い点があり、冷間加工などでは降伏点を上げる事が出来ますが、

悪い点としては加工性が悪くなる、切削加工だと刃物が当たった面が加工硬化を起こし

再び当たった時に刃物が損傷するなどと言った事が起こります。

博士「どうじゃな、あるる。塑性のこと、わかったの?」

あるる「はいっ! トンカンやったりじゅ〜っと熱したりして金属が形を変えられるのは、この塑性のおかげさまなんですね!」

あるる「すごいなぁ〜、塑性!」

博士「えらいぞ、あるる。よくわかっているじゃないか、感心、感心♪」

あるる「ああっ!!」

博士「(ビクッ!)なんじゃ、急に、びっくりするじゃろう」

あるる「は、博士ぇ〜、今、ひらめいちゃいました」

博士「なんじゃ、どうした?」

あるる「金属が形を変えるってことは、ある意味生まれ変わるってことですよね。それって、“塑性が蘇生させた”って言えるんじゃないでしょうか!(キラキラ〜)」

博士「・・・う、う〜む。・・・ある意味、そうかもしれんのぅ。今日のあるるはちょっと哲学的じゃな」

あるる「いえ、それほどでもぉ〜(照)」

博士「う〜む、それより「そせい違い」をまだひきずっておる方が問題じゃの。う〜む・・・」

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