【今月のまめ知識 第31回】単位について
公開日時:2015/10/27
気持ちの良い秋晴れの朝−−−
博士「今日は“単位”の勉強じゃ。長さの単位は知っているな、あるる」
あるる「は? いつもながら唐突ですねー。当たり前じゃないですか。
ミリ、センチ、メートルです!」
博士「ほぅ、珍しく即答じゃな(笑)」
あるる「常識ですよ、常識! 10ミリが1センチ、100センチが1メートル。
こんなの小学生だって知ってますよ。ふふ〜んだ(自信満々)」
博士「優秀、優秀。では聴くがな、あるる。
1メートルという長さは、いつ、誰が、どうやって決めたか、わかるか?」
あるる「へっ?? は、はい? だ、誰?」
あるる「う〜ん・・・メートルだけに、メーテル・・・?(なんちゃってぇ)」
博士「ふぉっふぉっふぉっ、うまい! 山田君、座布団1枚!」
あるる「・・・博士、笑点、ご存知なんですね・・・」
博士「ああ、毎週見ておるぞ。そんなことはさておき、もちろんメーテルではない。
999ではないのじゃからな」
あるる心の声(博士、999も知ってるのか、意外・・・)
博士「ちなみに、1メートルという長さは、何を基準にしていると思う?」
あるる「うーん、さっぱりわかりません」
博士「光の速さじゃ。真空中で1秒間の299,792,458分の1の時間に光が進む距離が1メートル
なんじゃよ」
あるる「ええーーーっ?! 光の速度で図ってるんですか?!(驚)
光速? 宇宙? まるでウルトラマンみたいじゃないですかっ! かっこいい〜!
しゅわっ!(←ウルトラマンのマネ) すごーいっ!」
博士「なぜ、そこに行くのか・・・その思考回路がよくわからんが・・・
ま、興味を持ってくれてなによりじゃ。じゃ、授業をはじめるとしようか」
単位について
「単位」は、いろいろな量を定量的に表す基準です。
単位があるから測定が出来、比較が出来るわけです。
ひとりで物をつくるのであれば単位は不要ですが、設計、加工、組立と別の人が行う場合には
単位は不可欠な情報伝達ツールです。
日本初の単位
日本では1582年から豊臣秀吉が行った太閤検地を行うにあたり、不平等がないように長さ、体積の基準を以下のように決めました。
- 6尺3寸=1間(約191cm)
- 1間四方=1歩
- 30歩=1畝
- 10畝=1反
- 10反=1町
もちろん、この単位は日本独自のものですが、単位は世界的に必要かつ重要なものであり
[基準決め]→[共通化]→[普遍的な国際計量標準]へと進化してきました。
単位の歴史
共通化には長い歴史があり、長さは古代では人間の身体の特定部分を基準にしていました。
古代のものさし「身体尺」例
しかし、貿易が盛んになると基準を統一する必要性が生じ、17世紀ごろから欧州で共通化の議論が始まりました。
そして1789年にフランス革命がはじまり、まさに近代化の流れの中で「メートル」という単位が出来てきます。
フランス革命の理念 → 自由・平等・友愛 → 誰でも平等に使える普遍的な計量単位
と言うベースがあります。
1791年 フランスがメートルを提唱(北極から赤道までの距離の1000万分の1)
1875年5月20日 パリで17カ国によるメートル条約締結
1885年 日本がメートル条約に署名
1959年 日本では土地・建物の表記を除き、メートル法を完全実施(尺貫法の原則廃止)
1960年 SI(国際単位系)を国際度量衡総会が採択
1992年 日本で計量法改正、1999年までにすべての規格をSIに切換
メートルの基準は、その後以下のように変わります。
1870年 メートル原器(白金とイリジウムの合金)
1960年 クリプトン86原子が発する光の波長を基準
1983年 真空中で1秒間の299,792,458分の1の時間に光が進む距離
メートル法の素晴らしい点は、各国で共通なだけではなく、10進法であり、
長さの二乗が面積、三乗が体積と、異なる物理量に計算することができます。
現在では当たり前のことですが、長い歴史の賜物です。
メートル条約加盟国は2015年2月現在で56カ国となっています。
そしてメートル法をさらに進め、分野を越えた世界標準として「SI(国際単位系)」が生まれました。
長さの単位に「メートル m」、
質量の単位に「キログラム kg」、
時間の単位に「秒 s」
を用い、この 3 つの単位の組み合わせでいろいろな量の単位を表すMKS単位系を拡張したもので、1954年の第10回国際度量衡総会 (CGPM) で採択されました。
ちなみにSIはフランス語で「 Le Système International d'Unités」英語では「 The International System of Units」の略語です。
SI以前の重力単位系では、力も質量と同じキログラムで表しており、区別するために力は「kgf」としていました。
1kgfは、質量1kgの物体に9.8m/s2の重力加速度がかかった時の力であり、計算上でも紛らわしくなります。
SI単位系の1Nは、質量1kgの物体に1m/s2の加速度がかかった時に生じる力で、
質量を基本としてこれに加速度を乗じて組み合わせた単位として力を表しています。
SI単位系は、基本単位、組立単位、接頭語から成ります。
基本単位
国際単位系は以下の7つの基本単位を組み合わせて組立単位の定義を行います。
すべての物理量はこの組み合わせで記述できます。
長さ(m)、質量(kg)、時間(s)、電流(A)、温度(K)、物質量(mol)、光度(cd)
組立単位
基本単位を乗除してできるものです。
長さ(m)×長さ(m)=面積(m2)
距離(m)÷時間(s)=速度(m/s)
組立単位の中で使用頻度の高い22個は、固有の名称と独自の記号を与えられています。
例として
力を表す、ニュートン(N)→m・kg·s-2
圧力を表す、パスカル(Pa)→m-1·kg·s-2
などです。
接頭語
数値の大きさを実用的な量として理解しやすいように、10の整数乗倍を表す20個の記号です。
基本単位、組立単位の頭につけて使用します。
1000m=1km、0.001m=1mmなどは馴染み深いですが、すべて同じように使用します。
ちなみに、天気予報では気圧を「ヘクトパスカル(hPa)」と表していますが、ヘクト(h)は102を表す接頭語です。
ですから、980hPaというのは、98000Paということです。
*例外
基本単位の中で、質量のkgのみ歴史的な事情で、すでに接頭語が付いています。
質量に別の接頭語を付ける場合には、グラム(g)にひとつだけ付けて、ミリグラム(mg)という形にします。
SIに属さないがSIと併用される単位
SIではひとつの量にひとつの単位が原則ですが、社会通念、歴史的観点から10個の単位がSIとの併用を認められています。
詳しくは、以下NMIJ(計量標準総合センター)のHPを参照してください
https://www.nmij.jp/library/units/si/
単位の表記
最後に、単位の表記の仕方です。
基本的には小文字です。
ただし、人命に由来があるものは最初の文字だけ大文字になります。
N(ニュートン)やPa(パスカル)などです。
これも他に色々な規則がありますので、上記NMIJのHPを参照してください。
まとめ
このようにSI単位は世界共通であり、異なる単位へ乗算と除算の組み合わせで計算することが出来る素晴らしいものですが、他の単位との共通性が必要ないものにおいては、実用上で古くからの単位の方が便利で合理性があるものも多いです。
6畳間とか、5合炊きの炊飯器など、日本人の感覚に合っているものは尊重して残していく必要があるでしょう。
しかし、土地購入時に単価を聞いたとき、相手は平方メートル単価を言ったのに、
こちらは坪単価のつもりで受け止めると大変なことになってしまいます。
注意しなければいけないのは、その単位をきちんと表現することです。
あるる「・・・(あんぐり)・・・」
博士「ん、どうした、あるる。なにやら固まっているようじゃが・・・」
あるる「い、あ・・・ 単位がこんなにも深いなんて、いままで考えたこともなくて・・・」
博士「そうじゃろう、そうじゃろうて。でも「フツーにある」「当たり前とされていること」を、こうして深く掘り下げて行くのは楽しいじゃろう?」
あるる「はいっ! 本当に! めちゃめちゃ楽しいですっ!」
博士「よしよし。あるるも成長しているな」
あるる「はっ! ( ゚д゚ )!! ってことは、博士!!」
博士「なんじゃ、急に大きな声を出して」
あるる「言葉はわからなくても、単位はわかりあえるってことですよね!
なんて素晴らしいんだ!単位! 単位は世界共通語なんですね!」
博士「それはそうじゃが・・・」
あるる「ボンジュ〜ル、メルシ〜、メ〜トルゥ〜♪」
あるる「ボンジュ〜ル、メルシ〜、センチメ〜トル〜〜〜♪
博士「・・・まぁ、意味はわかってくれるとは思うが・・・」
(おまえはクレヨンしんちゃんか…と、心の中で思う博士であった)