【今月のまめ知識 第26回】熱の伝わり方
公開日時:2015/05/26
ある晴れた日のお昼休み。博士の元気の良い声があたりに響く。
博士「おーい、あるる〜。ちょっと窓際に来ておくれ〜」
あるる「は〜い。なんですか、博士?」
あるる「わっ! カップがたくさん並んでる。
カップたちの日向ぼっこですか? 珍しいことしますね」
博士「ふぉっふぉっふぉっ、日向ぼっこか。あるるらしい発想だのぅ」
博士「あるる、順番に持ち上げてみてくれないか?」
あるる「おやすいごようです。じゃ、まずはガラスのコップから…」
博士「どうじゃ?」
あるる「ん〜。フツー…。しいていえば、ほんのり温かいかな…」
博士「じゃ、次はその隣のアルミ製のカップじゃ」
あるる「あ、温かくなってる〜。ガラスのコップよりお日様をたっぷり浴びた感じですね」
博士「ほほ、そうか。では、最後、銅製のカップじゃ」
あるる「あ、あちっ!!」
博士「ふぉっふぉっふぉっ。どうじゃ、素材によって温度が違うじゃろう」
あるる「ええ、ホントに。びっくりしましたよぅ〜」
博士「これを“熱伝導率の違い”というんじゃ。今日は熱の伝わり方を
勉強していこうな」
あるる「は〜い。おもしろそ〜\(^o^)/」
前号では、金属の特徴である熱伝導の話から「熱」についてお話しました。
今回は、「熱の伝わり方」についてお話しましょう。
熱の伝わり方
熱の伝わり方には、熱伝導、熱伝達(対流)、熱放射(輻射)の
3種類があります。
熱の伝わり方は「3種類」
熱伝導
物質の中で温度差があるとき、高温側から低温側へ熱が伝わっていく事を熱伝導と言います。
これは一つの物質内の場合のみでなく、接触した異なる固体間であっても、物質の移動を伴わずに熱が伝わる現象の事です。
床暖房で床に接触している足が温まるのがこれにあたります。
熱伝達(対流)
固体に接触した流体が移動することで熱が伝わっていく事を熱伝達(対流)と言います。
エアコンや温風ヒーターから送り出される気流によって部屋全体の空気が温まるのがこれにあたります。
また、自動車エンジンの熱をラジエターで冷却したりしているのもこれにあたります。
熱放射(輻射)
電磁波が物体に当たった時に、そのエネルギーで分子を振動させ熱を発生させる現象を熱放射(輻射)と言います。
ハロゲンヒータなどは電磁波を放出し、その前にいる人を温めてくれます。
1億5千万キロメートルも離れている太陽も我々を温めてくれます。
これは、太陽が発する電磁波によるものです。
電子レンジも同様の原理で食品を加熱しています。
実際には、これらが組み合わさり熱を伝えています。
《対流+熱伝導》
鍋の下面を加熱して中の水を温めると、鍋底で熱伝導により高温になった水は密度が下がり、浮力により上昇して上の低温の水が下へ回り込むという対流によって熱伝達が起こります。
(無重力の宇宙では浮力が発生しないので、対流が起こらず熱伝導のみで水温が上がっていく事になります)
《対流+熱放射(輻射)》
ストーブも周囲の空気を温めて対流を起こさせるとともに熱放射により対面している物体を温めます。
熱伝導率と熱伝達率
物質内を熱が伝わる速さを表したものを「熱伝導率」と言います。
これは物質ごとに異なり、一般に気体、液体、固体の順で大きくなっていきます。
第23回金属とは何か?でお話したように、
特に金属は熱伝導率が大きいのですが、これは自由電子の衝突があるからです。
ちなみに熱伝導率の値は文献によりばらつきがありますが
アルミニウムで230程度、鉄で75程度、水で0.58程度、乾燥空気で0.024程度
(単位W/m・K)です。
アルミニウムがいかに熱を伝えやすいかがわかりますね。
また、流体と物体間の熱エネルギーの伝えやすさを「熱伝達率」と言います。
こちらは熱伝導率のような物性値ではなく流速等によって変わるものです。
一般的には流体の熱伝導率が大きいほど熱伝達率も大きくなります。
お風呂だと45℃で相当熱いのに、100℃のサウナに何分も居ることが出来るのは、
水と空気の熱伝達率が大きく違うためです。
博士「・・・ということじゃ。あるる、わかったかの?」
あるる「普段、全然気にしてなかったけど、熱の伝わり方にも、いろいろあるんですね〜」
博士「そうなんじゃ。冬の間、大活躍してくれた暖房器具は、この熱の伝わり方を利用しているんじゃ」
あるる「よーし!決めたっ!」
博士「どうした?急に?」
あるる「今日はこれから銭湯に行って、水と空気の熱伝導率の違いを体験してきます!」
あるる「いやぁ〜、今日は勉強になったなぁ〜。それじゃ、博士。ありがとうございました!」
博士「それってただ、お風呂に入りたいだけなのでは…」
るんるん♪気分で帰って行くあるるの後ろ姿を見ながら、心の中でそうつぶやく博士であった。
博士「わしも、行こうっと♪ あるる〜、ちょっと待っておくれぇ〜」