【今月のまめ知識 第92回】カーボンニュートラル

公開日時:2020/11/25

とあるのんきな朝のひととき

あるる「ブーーーー。キィーーー。グイーーーーン」

博士「おはようあるる。朝からご機嫌じゃな」

あるる「おはようございます。ほら、博士、見てください! ジャーン♪♪」

博士「おお、ラジコンではないか! 懐かしいのぅ。ワシも昔、夢中でやったもんじゃ」

あるる「え? そうなんですか? おじいちゃんにもらったんです。かっこいいですよねー」

博士「ちょっと動かしても良いか? おおおお、たまらんのぅ。ラジコンは男のロマンじゃ」

あるる「ふふふ、博士、子供みたいですよ♪」

博士「しかし、あるるよ。ラジコンみたいに全ての車を電波で動かせたら、空気が汚れる心配もないのじゃが・・・」

あるる「しーおーつーの削減・・・ですか?」

博士「おお(驚)、難しいことを知っておるじゃないか!」

あるる「おじいちゃんの受け売りで、言葉だけ知ってます。意味は全然わかりません!(キッパリ)」

博士「ふぉっふぉっふぉっ。よし、ちょうど良い機会じゃ。今日は自動車と環境について考えてみようではないか!」

あるる「面白そう! ぜひぜひ!」

エネルギーとCO2

自動車の進歩において、「自動運転」と「環境対応」の2点が大きなテーマであることは言うまでもありません。

今回は環境問題に関して大切なキーワードであるカーボンニュートラルについて、取り上げてみたいと思います。


まずは、エネルギーそしてCO2について。


自動車の環境問題に関してはWell To Wheelという事が言われています。
Wellは、上手という意味の他に井戸という意味もあります。
Well To Wheelは、油田から車のタイヤまでという意味で、自動車単体の燃費やCO2排出量ではなくトータルで考えるという事です。

 

エンジン車、HV、PHEV、EV、FCV、当面何が良くて将来はどうなるのか?

自動車を走らせるのに化石燃料を内燃機関で燃焼させて車輪を回すか、電機モーターで車輪を回すか、あるいはそれを組み合わせるか。

 

そしてその電気はどのように作るのか?

発電所なのか、車載の内燃機関なのか、燃料電池(水素と酸素の化学反応による発電)なのか。

 

  • 内燃機関(ガソリン及びディーゼルエンジン)の場合、その熱効率は?
  • 化石燃料による火力発電の場合、その熱効率は?
  • 再生可能エネルギー(水力、太陽電池、風力等)の場合、その安定性は?
  • 原子力の場合、その安全性は?
  • 燃料電池の場合、水素を生成し高圧縮する環境負荷は?
  • 電気を蓄えるための車載蓄電池の製造工程での環境負荷は?
  • それぞれの工程間の輸送に関わる環境負荷は?
  • それぞれのコストは?

 

など、他にも多くの要素を漏れなく考えなければWell To Wheelを求めることが出来ませんが、全てに今後の技術開発で大きな可能性があります。

 

熱効率とは投入された熱エネルギーに対して、どれだけ有効な仕事として(熱機関、エンジンの場合)あるいはどれだけの電力量として(発電所の場合)取り出せたかです。


ガソリンエンジンの熱効率は1980年代では30%程度でしたが、最新の市販車では40%前後までになっており、研究室では50%も超えています。

石炭火力発電では40%前後、天然ガス火力発電では50%前後となっています。


仕事として取り出せなかった残りは、熱や音、振動などとして放出され、

仕事として使用した分も最終的には熱として大気へ放出されます。


そして、このエネルギーの流れとCO2には密接な関係があるわけです。

自動車の環境問題

根本的には、地球温暖化、大気汚染、化石燃料の枯渇と言ったことが上位課題なのでしょう。

地球が温暖化しているとするならば、それは人為的なものかどうかはともかくとして、大気中のCO2を削減すれば押さえることが出来るのではなかろうかと考えられています。

大気中のCO2は増加し続けていて、以下の気象庁HPを見ると2014年頃に400p.p.m.(0.04%)を超え、年2p.p.m.程度ずつ増加しているようです。

出典:気象庁HP、各種データ・資料より

炭素循環

地球はINPUTとして太陽エネルギーを受け、OUTPUTとしてその反射や地面や海面に吸収されたエネルギも長期間で放射され、±0のバランスを保っていることが望ましいのですが色々な要因で変動します。

今はどうも温室効果ガスが大気中に溜まり、この収支バランスが崩れているという事でしょう。


この温室効果ガスの中でもっとも影響が大きいのがCO2と言われています。


地球においてはエネルギーは前記のように大規模なINPUT、OUTPUTがありますが、物質に関してはINPUTは隕石等、OUTPUTは自転の遠心力で僅かに放出される分子程度でほとんどないと言えます。


つまり昨今話題のカーボンは、この地球で総量は変わらず、場所を変えて存在しているのです。


これを炭素循環と言いますが、まずどこにカーボンがあるのか?

陸上(岩石・土壌・水)、海洋、堆積物、化石燃料そして動植物とあらゆるものに存在し、大気中の二酸化炭素(CO2)と交換サイクルを回しています。

植物の光合成により酸素(O2)は大気に放出され、カーボン(C)は有機物として植物の身体となります。

動物は植物を食べ、その成分である有機物を中心として自分の身体を作ります。

動物も植物も朽ち果てて微生物に分解されてCO2として大気へ戻るか、地中で長い年月をかけて化石燃料となるか。


化石燃料は固体が石炭、液体が石油、気体が天然ガスです。

 

出典:気象庁HP、各種データ・資料より

炭素循環の模式図(1990年代)
IPCC(2007)をもとに作成。各数値は炭素重量に換算したもので、蓄積量(箱の中の数値、億トン炭素)あるいは交換量(矢印に添えられた数値、億トン炭素/年)を表している。黒は自然の循環で収支がゼロであり、赤は人間活動により大気中へ放出された炭素の循環を表している。

気象庁HP、参考資料 https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/shindan/sougou/html_vol2/1_4_vol2.html

 

カーボンニュートラル

海洋も土壌も大気とカーボンのやりとりを行っており、人間活動でもカーボンを大気へ排出しています。


IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によると、人為起源二酸化炭素というのは化石燃料の燃焼及びセメント製造により排出される二酸化炭素と、農地拡大等による土地利用変化(森林破壊)により排出される二酸化炭素をあわせたものという事です。


そして、「大気」と「地上のすべて」とのカーボンの収支が±0となることが、「カーボンニュートラル」なのですが、どうもニュートラルになっていないようです。


IPCCの第5次報告書(2013~2014)によれば、
「温暖化には疑う余地がない。20世紀半ば以降の温暖化の主な要因は、人間の影響の可能性が極めて高い。」(95%以上)
となっており報告書の回を追うごとに可能性の値が高くなっています。


但し、大気中のCO2濃度は人為的な活動によるものではないなどの反論もいくつか出ています。

 

気候も自然も絶えず変わっており、とても複雑な温暖化要因が多数ある中で、それがどれほどの影響があるものなのかという見解にも大きな幅があります。

しかしながら温暖化が進んでいるという事は事実であり、その要因のひとつとしてカーボンニュートラルになっていないということがあります。


だからカーボンをどこかに閉じ込めておくことができれば、つまりは化石燃料の消費を減らすことでカーボンを地中に閉じ込めておくことが有効な手段のひとつであるという事になるわけです。


この大気とのカーボン取引の収支バランスをとり、サスティナブルな世界を実現すること、それがSDGsでしょう。それを目指すことで、特に発電と自動車においては今後も大きく技術開発が進み、実用化するためのコストの問題も解決されていくでしょう。


まずは今出来ることとして、リサイクル、リユース、それに優れたアルミフレームが微力ながら貢献させてもらえると思っています。

 

 

博士「どうじゃな、あるる。CO2の削減がいかに大切か、わかったかの?」

あるる「う〜ん、あまりにも話が壮大過ぎて、ついていけませんけれども・・・」

博士「けれども?」

あるる「『カーボンニュートラル』という言葉は覚えてました!『カーボン』が『ニュートラル』ですね!」

博士「おお、その通りじゃ。さすがラジコン好きだけあって『ニュートラル』はピンときたようじゃな。えらいぞ、あるる」

あるる「はいっ! 今日帰ったら、おじいちゃんにも教えてあげます」

博士「環境問題は身近なところから理解するのが一番じゃ。これからゆっくりと理解していこうな」

あるる「はいっ!!」

博士「ところであるるよ、お願いがあるのじゃが・・・」

あるる「へ? なんですか? 珍しいですね、博士がお願いなんて」

博士「またラジコン、貸してくれんかの?」

あるる「あはは。そうとう気に入ったようですね。わかりました。1時間だけですよ」

博士「やったー\(^o^)/」

あるる「本当に子供みたい。さっきまであんなに難しい話をしていた人と同一人物とは、とても思えないなー(笑)」

 

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