【今月のまめ知識 第68回】 騒音について(続)
公開日時:2018/11/26
とあるのんきな昼下がり・・・
あるる「博士ぇ〜、大変です! 今日はパンが全品20円引きに
なってますよぉ〜!」
博士「おお、だからそんなにいっぱい買ったのか(笑)」
あるる「だって100円のパンが80円で買えるんですよ!お得でしょ〜」
博士「そうじゃのぅ。ではあるるよ、1,000円のパンが980円だったら?」
あるる「え? そんなに高いパンがあるんですか?」
博士「気になるのはそこか? なら、ケーキでもよいぞ。
1,000円のケーキが20円引きだったらどう思う?」
あるる「1,000円が980円か・・・うーん、まぁ・・お得ですよね」
博士「では、10,000円のケーキが9980円になっていたら?」
あるる「えー、もっと値引きしてよ〜って思っちゃいます」
博士「な。面白いじゃろ、人の心理は」
あるる「え? どういうことですか?」
博士「値段に関わらず「20円得する」ことには変わりないのに、
感じ方が変わるのじゃ」
あるる「あ、ホントだ! すごーい」
博士「これは前回話した「騒音」の話にも通じるんじゃが・・・」
あるる「はいっ!聞きたいです! お願いします!」
博士「先手を取るようになってきおったか・・・よし! では、話してしんぜよう」
心理的に見る騒音
前回、騒音に関して心理学と物理学を合わせて考える必要がある中で、物理学の面からという事でお話しましたが、
今回は心理、感覚面で少し掘り下げてみましょう。
物理学の面では音圧レベルが対数関数である事をお話しましたが、
人間の感覚となると、体調や天候等のコンディションによっても感じ方に個人差があり、
聴覚がとらえた騒音を、音圧などの物理量では正しく表現できません。
ここで『ウェーバー・フェヒナーの法則』というおもしろい法則があります。
ウェーバーの法則
エルンスト・ウェーバーという心理学者が1834年に行った実験から『ウェーバーの法則』を発見しました。
これは、100gの重りを持っている人に少しずつ重りを増やしていったときに110gで差を感じたとするなら、
200gの場合には220gになってやっと差を感じ、210gや215gになった時では200gの時との違いを感じ取れない。
(数値は実際の値ではなく分かりやすい数値で表現しています)
つまり、人間の感覚は量ではなく比で感じているということを発見したのです。
⊿R/R=K
⊿R:弁別閾
R:刺激量
K:定数(ウェーバー比)
弁別閾とは差を感じることが出来る最小の量であり、弁別閾と原刺激の比が一定であるという法則です。
ウェーバー・フェヒナーの法則
次にウェーバーの弟子のグスタフ・フェヒナーが、人間の感覚量は刺激量の対数に比例する
と主張しました。
これを、『フェヒナーの法則』と言い、この法則はウェーバーの法則から導き出されたので、
『ウェーバー・フェヒナーの法則』とも呼ばれています。
E=K・log R
E:感覚量
K:定数
R:刺激量
これは人間の五感において中程度の刺激に関して当てはまるようです。
聴覚については前回の音圧レベルでお話した通りですが、視覚については輝度、照度です。
一番明るい星が1等星、人間が見える一番暗い星が6等星ですが、その明るさの比は100倍であり、
よって1等級につき100の5乗根という比率になるわけです。
この定義からマイナスX等星といった範囲外のものも表現可能となっています。
次に地震の大きさを表すマグニチュードとそのエネルギー(J:ジュール)も対数の関係にあり、
マグニチュードが1増加するとエネルギーは、10√10(≒31.62)倍になります。
人間はこのそれぞれにおいて同じ変化量と感じ取るようです。
そして『ウェーバー・フェヒナーの法則』が成り立つ感覚量には、音、味、匂い、明るさ、寒さ暖かさ、お金、時間に至るまで当てはまるようです。
濃い味に慣れていると微妙な味の差に気づきにくいとか、100円のものを20円値引きしてもらうのと、1000円のものを20円値引きしてもらうのとでは同じ金額なのにお得感が異なるとか。
人間はとても広い幅で物事を感じることができますが、定量で分割された物差ししか持っていなかったら繊細なもので微妙な差を感じ取れなかったり、大きな量では数値が煩わしく処理するために大変なエネルギーを消費することになります。
感覚は個人差もあり客観性や数値化は大変難しいところですが、人間が感覚を対数で持っているというのは極めて合理的なことではないかと思います。
博士「どうじゃな、あるる、わかったかの?」
あるる「はい、博士! 面白かったです! それにしてもスゴイ着眼点ですよね。賢いなぁ〜、ウェーバー・フェヒ・・・ヘヒー・・・フェっヘ・・・へっ・・
博士「どうした、あるる? くしゃみがしたいのか?」
あるる「違いますよ!舌が上手く回らないんです!」
博士「ふぉっふぉっふぉっ。『きゃりーぱみゅぱみゅ』が上手に言えないのと同じじゃな(笑)」
あるる「博士は言えるんですか?」
博士「もちろんじゃとも! ウェーバー・ヒェヒナー・・・? あれ? ヘェふ・・・ヒェ・・・へっ・・・」
あるる「博士もくしゃみですか?(笑)」
博士「こっちまでつられてしまったではないか!」