【今月のまめ知識 第53回】縦弾性係数(ヤング率)
公開日時:2017/08/28
とあるのどかな朝のひととき・・・
博士「あるるよ、ずいぶんこんがり焼けたのぉ〜」
あるる「はいっ!夏休みはずっとおじいちゃんのところに行って、山へ海へと、バカンスを満喫しましたから!」
博士「それはよかったのぅ〜、うらやましいのぅ〜」
あるる「あ、そうだ! 見てもらえます? おじいちゃんに教えてもらったんです♪」
博士「なんじゃ、突然・・・」
突然、歌い、踊り出すあるる
あるる「ヤングマン♪ ・・・さぁ、ご一緒に〜♪素晴らしい〜」
博士&あるる「Y〜MCA〜♪」
あるる「おおっ、博士、ご存知なんですね?!」
博士「もちろんじゃとも。『ヤングマン』はわしの十八番じゃ」
あるる「さっすが〜博士。ナウでヤングだったんですぇ〜」
博士「それもおじいちゃんに教えてもらったのか?」
あるる「はいっ! 昔の人はそういったとか」
博士「昔の人か・・・(笑)そうじゃ、あるる。ものづくりにおいても大事な「ヤング」があるのを知っているかな?」
あるる「え?ヤングが? もちろん知りません!(きっぱり)」
博士「そうじゃろうなぁ・・・よし。今日はその「ヤング」の話をするとしよう」
あるる「はいっ!どんなヤングが出てくるのか楽しみです!」
【今月のまめ知識 第5回】強さって何? 〜引張強さと耐力〜 でもお話しましたが、
縦弾性係数(ヤング率)は、引張り、圧縮、曲げといった剛性に係わる数値であり、
横弾性係数は、ねじれ、せん断に係わる数値です。
まずは「弾性」とどういうことかから説明しましょう。
物体に力を加えた時に変形が起こりますが、
その力を取り除いた時に元に戻ろうとする性質、それが「弾性」です。
そしてこの弾性限度を越えると塑性変形(元に戻らない)となり「破断」につながります。
弾性係数とは、応力に応じたひずみの変化率のことで、大きいほど変形しにくいということになります。
では、弾性はどうして起こるのかを説明しましょう。
まず物質を構成する原子と原子の間には引力と斥力が働き、一定の距離を保っています。
原子がバネでつながったモデルとして考えると解りやすいでしょう。
力が掛かっていない状態では、このバネは自由長の状態と考えてください。
原子間の距離(バネの長さ)を変えようとすると応力が発生し、元に戻そうとするわけです。
ばねは伸ばしても縮めても、元に戻ろうとします。
この原子間の距離を直線的に変えようとするのが縦弾性で、
横へずらそう(滑らせよう)とするのが横弾性です。
ですから、引張り、圧縮のひずみ量は、縦弾性係数によるということになります。
では、「曲げ」はというと、曲率の内側が圧縮で外側が引張りとなった状態なので
これも縦弾性係数によります。
「曲げ」は、てこの原理でこの引張り、圧縮が起こるので、比較的小さな外力で変形します。
これは容易に曲げることが出来る棒を、引っ張って伸ばすことは大変である事から、理解できるかと思います。
このように弾性は原子間の引力、斥力のバランスにより決まるので、
同種の金属であれば合金の種類を問わず、弾性係数はほぼ同じです。
アルミニウムだと引張り強さが100N/mm2にも満たない1000番台から、
500N/mm2以上もある7000番台まで縦弾性係数は70kN/mm2程度です
(合金種により68~71kN/mm2程度の範囲であり通常は誤差の範囲と見なしている)。
引張り強さが大きいという事は弾性限度が高く、大きな荷重まで持ちこたえるのですが、
同じ力を加えた時のひずみ量については変わらないのです。
博士「どうじゃ、あるる。金属のヤングは? おや、なんだか浮かない顔じゃのう」
あるる「縦弾性係数が大事だってことはわかったのですが、どうもヤングぽくなくて・・・」
博士「ふぉっふぉっふぉっ。そうか、そこは話してなかったのぅ。すまんすまん」
博士「なぜ「ヤング率」というかというと、弾性体力学の基本定数を発見したのが、トマス・ヤングというイギリスの物理学者だからじゃ」
あるる「ああ!ヤングさんが見つけたから、ヤング率! なるほどっ!」
あるる「そうかぁ、ヤングさんが発見したのか・・・博士、これでスッキリしました!」
博士「おお、わかってくれたか!」
あるる「ヤングマン、さぁ、見つけようよ、ヤングマン、これ、見つけちゃった・・・♪」
博士「ほんとにわかったのかのぅ?でも、楽しそうじゃから、よしとするか」