【今月のまめ知識 第46回】トリセツ〜取扱説明書〜を説く
公開日時:2017/01/24
とあるのどかな昼下がり…
あるる「う〜ん、難しいなぁ〜。えっと、えっと。う〜ん・・・」
博士「どうしたあるる。新年早々難しい顔して」
あるる「トリセツ、読んでるんです」
博士「トリセツ? カラオケでも行くのか?」
あるる「え? そっち? 西野カナですか?!
博士がその歌のことを知っていることが衝撃ですよ」
博士「えへん。こう見えてワシは最近の若い子の歌、結構詳しいんじゃ」
あるる「これは本当の取扱説明書です!」
博士「ほう、珍しいこともあるもんじゃ。いつも適当に使っているだろう」
あるる「それが、そうもいかないんですよ。お年玉でデジカメ買ったんですけど、
高度過ぎて使い方がよくわからないんです」
博士「で、トリセツか。なるほどのぅ〜」
あるる「でも、読んでもよくわからなくて・・・」
博士「よし! それじゃ今日は「トリセツ」について説明しよう。
ちょうど今年は“酉年”じゃ。トリつながりで、縁起がよさそうじゃ!」
あるる「トリつながりですか! なんか、今日の博士、冴えてますねぇ〜」
取扱説明書は英語では「manual」または「Instruction manual」です。
「manual」の意味は皆さまご存知のように「手順」ですが、その語源は
ラテン語の「手を動かす」から来ています。「Instruction」は指図・指示ですから、
直訳すると「手順の指示書」となりますね。
単に「マニュアル」というと、メンテナンスマニュアルや業務マニュアルなど、
非常に幅が広くなりますが、一般に取扱説明書と言えば、機器を使用する
ユーザー向けのものを指します。
今回は、取扱説明書制作のテクニカルな面ではなく、その目的・意義を中心に考えてみましょう。
リファレンス型とチュートリアル型
家電などは何も見なくてもなんとなく使用できるでしょうが、
機能が多い機器ほど使いこなせません。
その解決手段として「機能と使用法を体系的に表記・表現すること」が必要となります。
しかし、多機能化された機器では、そもそもすべての機能を使うことは稀であり、
必要なものだけを見たいわけなので、
リファレンス型(検索型)が望ましいですね。
現在、様々なリファレンス型マニュアルがありますが、ユーザーのレベルに合わせてチョイス
できるよう、深さと表現方法が異なるマニュアルが用意されています。
カタログなど購入前の資料と同じ趣旨ですね。
次に購入後に必要となるのは、「使用できる状態にすること」です。
これはPC購入時の立上げサポートなどと同じ趣旨であり、組立や初期設定が必要なものでは
チュートリアル型(個別指導型)として手順を間違えることなく
短時間で完了出来ることが望ましいですね。
トリセツの重要な役割
しかし取扱説明書にはさらに重要な役割があります。
それは重要事項、PL法(製造物責任法)に関する表記が
きちんとされているかどうかです。これは非常に大切なことです。
PL法では、設計・製造欠陥のみではなく、指示・警告上の欠陥も対象となります。
つまり、取扱説明書の指示内容によっては製造側に責任が問われる事になります。
事故を防ぐためにやってはいけないことの明記、これにはリスクの洗い出しが必要となります。
そして事故が起こった場合の責任範囲の明記も必要です。
つまり取扱説明書は、ある意味では契約書に近い
役割も持っているわけです。
メンテナンスに関すること
次にメンテナンスに関すること、これも故障なく本来の性能を維持して使用してもらうという
目的に加えて、前述のPL法による指示・警告上の欠陥にもつながる重要な項目です。
他にトラブルシューティング、Q&A、仕様書などが加わって取扱説明書が完成します。
このような目的・意義を理解したうえで、テクニカル面での見やすい構成、解り易い表現を
行うことが必要でしょう。
おまけ
機器の取扱説明書ではありませんが、「安全第一ビルヂング讀本」をご紹介します。
これはまだ日本に近代ビルディングが少ない時代に作成された利用者向けのガイドブックです。
1923年東京丸の内に丸ビルが建てられ、その3年後の1926年に作成されました。
「行うこと、行ってはいけないこと、その理由」を論理的・体系的に表記してあり、
非常に興味深いので、ぜひご一読ください。
▼安全第一ビルヂング讀本
博士「どうじゃ、あるる。トリセツの世界も意外と奥が深いじゃろう」
あるる「本当ですね。こんな風に考えたことがなかったので、新鮮でした! この気持ちでトリセツ、読んでみます!」
博士「よしよし、感心、感心」
あるる「それでは今日は失礼します。公園に行って写真、撮ってみます」
博士「お、デジカメデビューじゃな」
あるる「ありがとうございました!!」
・・・あるるが去った後、机の上を見てみると、一冊の分厚いマニュアルが…
博士「やれやれ。肝心なものを忘れおって・・・。
鳥は3歩歩くと忘れるというが、あるるも負けてはおらぬのぅ・・・」