【今月のまめ知識 第35回】鉛の規制について
公開日時:2016/02/22
とあるのどかな昼下がり・・・
机に座って(珍しく)真剣に書き物をしている博士。
昔からのクセなのか、頻繁に鉛筆の芯をなめている。
それを見かけたあるるが、ちょっと心配になって・・・
あるる「あのぅ、お忙しいところすいません。
鉛筆の芯って、舐めたらカラダに悪いんじゃないですか?」
博士「お、なんじゃ、あるる。鉛筆がどうかしたのか?」
あるる「だから、芯ですよ、芯。鉛筆っていうくらいだから、
芯には「鉛」が入っているって。だから舐めると毒だって。
昔、おじいちゃんに、さんざ言われて育ったんですよ」
あるる「その言いつけをずーっと守って、今日までものすごく気をつけて来たのに、
博士がやっているとは、びっくりポンですよ」
博士「ふぉっふぉっふぉっふぉっ(笑) あるるはまだその噂を信じていたんじゃな!」
あるる「えっ、噂? 事実じゃないんですか?」
博士「おお。違うぞ。鉛筆の芯には鉛は一切入ってはおらん(きっぱり!)
黒鉛と粘度からできてるから、舐めても安全なのじゃ」
あるる「ええっ?! でも、でも、黒鉛も鉛なんじゃ・・・」
博士「確かに「鉛」という文字が使われておるから勘違いする人も多いのじゃが、
黒鉛は炭素じゃ。ま、石炭やダイヤモンドの仲間で、鉛とはまったくの別物じゃよ」
あるる「えええっ?! 黒鉛はダイヤモンドの仲間・・・?!?! 鉛じゃない?
つか、鉛って、一体なに????」
博士「ふぉっふぉっふぉぉ。混乱しているようじゃな。
よし、今日は「鉛」について話をするぞ。よ~く聞いておるんじゃぞ」
今回は環境問題に関して、「鉛」が規制されていることについてお話しします。
鉛とは
元素記号:Pb
原子番号:82
密度:11.34g/cm3
融点:327℃
融点が低くて柔らかいため加工しやすく、鉄の1.4倍も重い金属です。
有効な用途として
カーバッテリー
放射線吸収
振動に対する減衰
遮音
耐食用途
はんだ
などがあげられます。
また、ガラスに含有することで透明度、加工性を上げ、
金属に合金として含有することで快削性が高まるなどの性質があります。
規制について
鉛は用途も多く安価であり大変便利な材料なのですが、
古くから人体に害のあることは知られていました。
触っても問題はありませんが、鉛粉や鉛化合物が口や鼻から体内に入り、
それがある許容限界以上に摂取されると、造血臓器、腎臓、中枢神経系などに
害を及ぼします。
現在日本では、廃棄・排出に対する規制はありますが、使用に対する規制は無く、
欧州では、環境対応の重要性から以下のように規制してきました。
2000年6月;電気・電子機器の廃棄の流れについてWEEEが提案
2003年2月:WEEEから6つの有害物質、鉛・水銀・ カドミウム・6価クロム
・PBB(ポリ臭化ビフェニル類)・PBDE(ポリ臭化ジフェニルエーテル類)が
切り離されることがRoHS指令として公布
2006年7月:RoHS指令が施行され、電気・電子機器への使用が禁止。
2011年7月:改正RoHS指令公布、発令
WEEE:電気電子廃棄物
RoHS:電子・電気機器における特定有害物質の使用制限についての欧州連合(EU)による指令
こういったことから産業界ではRoHSなどに則って、
鉛やカドミウムの使用量を抑えた製品になってきています
輸出が多い企業では、それに則っていない製品の調達は行わないところもあります。
RoHS指令では原則として電子・電気機器では0.1wt%以上の鉛を含むものを禁止していますが、
合金成分に関しては、代替品が無かったり、信頼性がなかったりなどの理由から
・合金成分として、機械加工用鋼材および亜鉛メッキ鋼に含まれた0.35wt%までの鉛
・合金成分として、アルミニウム材に含まれた0.4wt%までの鉛
・銅合金に含まれた4wt%までの鉛
を認めています。
ただし、これは適切な代替品が出て来た時には変更になっていくでしょう。
代替品
「鉛フリー○○」という言葉をよく聞くと思いますが、これらは代替材料を使用しています。
鉛フリーはんだ、鉛フリー快削鋼、鉛フリー快削アルミニウム合金など
色々な分野で技術開発が進んでおり、今後も変化し続けるでしょう。
ちなみに、NICのフレームやブラケットに鉛は・・・
「安心して下さい。入っていませんよ!」
博士「どうじゃ、あるる。鉛が何者か、わかったかの?」
あるる「はい。特徴のある金属であること、そして鉛筆の芯でも、
炭でもないこともわかりました!」
博士「ま、今日のところはそれだけわかればよしとしよう」
あるる「でも、博士ぇ…。いっぱい体内に入っちゃうと
病気になっちゃうんでしょ? あるる、ちょっと怖いなぁ~・・・」
博士「大丈夫。いくら食いしん坊のお前でも、フツーに暮らしている限り
鉛に出会うことも、体内に入れることもなかろう」
博士「それこそ『安心してください!』じゃ(笑)ふぉっふぉっふぉっ」
あるる心の声(博士、嬉しそうだなぁ~。でも、このギャグ、もうちょっと古いような…。
ま、あんな楽しそうな博士も珍しいので、今は黙っておいてあげようっと)