【今月のまめ知識 第48回】磁性について
公開日時:2017/03/22
今日ものどかな昼下がり___
 
 ぽかぽか陽気とは裏腹に、あるるのお顔は曇り空。
 
 なにやら納得いかない様子で一人で格闘しています。
 
  
 
 あるる「これはくっ付く。これはくっつかない・・・うーん、う〜ん・・・」
 
 そこにタイミングよく通りがかった博士。
 
 博士「どうした、あるる。珍しくオーラが暗いが、お腹が空いているのか?」
 
 あるる「空いてませんよ。さっき一緒にお昼ご飯、食べたじゃないですか(まさか忘れて…)」
 
 あるる「(ま、いいや)。ちょうどよかった。さっきから納得できないことがあって・・・」
 
 博士「おや、なんじゃ? 疑問を持つことはよいことじゃぞ」
 
 あるる「ちょっと見ててもらえますか?」
 
 あるる「あいはぶ あ 磁石〜♪ ・・・」
 
 博士「えっ?!(驚) まさかのピコ太郎か?! ふぉっふぉっふぉっ!!!」
 
 あるる「笑わないでくださいよ〜。もうすぐおじいちゃんの誕生日なので、
 
 おじいちゃんからもらった磁石を使って隠し芸を見せてあげようと思って練習してるんですから!」
 
 博士「おお、そうか。それはじいさん孝行じゃのぅ。すまんすまん、続けてくれ」
 
 あるる「あいはぶ あ 磁石〜♪ あいはぶあ カ〜ン♪ あ〜 くっつく〜」
 
 あるる「あいはぶ あ 磁石〜♪ あいはぶあ 別のカ〜ン♪ あ〜 くっつかな〜い〜」
 
 あるる「ってことで、どちらも金属なのに、なんでくっつくのとくっつかないのがあるんですか?」
 
 博士「それは「磁性」のせいじゃ。って、シャレではないぞ」
 
 あるる「わかってますよ。じせい? なんですか、それ?」
 
 博士「知りたいか?」
 
 あるる「話したいんでしょ?」
 
 博士「いや、お前が聞きたいというなら」
 
 あるる「(話したいくせに) はいはーい、ききたいでーーす(棒読み)」
 
 博士「そうか!聞きたいか!では、話してしんぜよう」
 
 あるる「はーい(あーあ、もっとある太郎の練習、したかったのになぁ〜)」
 
  
 
 
 
  
 
  
 
 アルミニウムの特徴のひとつに磁気を帯びないという事があります。
 
 この特性を生かしてパラボラアンテナや船の磁気コンパスといった計測機器や電子医療機器、
 
 メカトロニクス機器などに使用されています。
 
 今回は鉄などのように磁気を帯びる金属と何が違うのかを説明したいと思います。
 
  
電子運動による磁気発生の仕組み
 まず、電子(電荷)が原子の中を動き回ることで磁場を生み出しています。
 
 導線に電流を流すと、導線に垂直な平面内で導線を中心とする同心円状の磁場ができることと
 同じ働きによるものです。
 
 原子の中での電荷の移動は3種類あります。
電子の核を中心とした公転
電子自身の自転(スピン)
原子核自身の自転
 原子核自身の自転運動による磁気は極めて弱いので、電子だけで考えて良いようです。
 
  
 
 電子の公転運動では原子核を中心とした磁気モーメントが発生し、
 
 電子の自転運動では電子の位置で磁気モーメントが発生しています。
 
 原子核の周囲には原子番号の数だけ電子が複数の軌道で公転しています。
 
 それぞれの軌道で電子の自転方向が逆の対電子が回ることで磁場を打ち消し合うと、
 
 全体では磁界は外に出ていきません。
 
  
 
 
 電子による磁気発生モデル
 
  
 
 ですから原子が対ではない不対電子を持つと磁気モーメントが大きくなるわけです。
 
  
磁性体と磁区
  
 
 このようにすべての原子は磁気モーメントを持っており、
 
 磁石にくっつくものだけが磁性体ではなく、あらゆる物質が磁性体なのですが
 
 一般的には以下で説明する強磁性体の事を磁性体と呼んでいます。
 
  
強磁性体
 外部磁界が作用した時、非常に強く外部磁界の方向に磁化されるもの
反磁性体
 外部磁界と反対方向に磁化され、磁石に反発する
常磁性体
 わずかに磁化される
 
  
 
 強磁性体において磁化されていないときは、その内部で「磁区」と呼ばれる
 
 磁気モーメントの揃った小区画に分かれており、この磁区が様々な方向を向いて打ち消し合い、全体として磁気を帯びていないように見えます。
 
 
 
  
 
  
 
 ここに強い外部磁界が作用すると磁区の向きが一方向にそろう事により
 
 全体としても磁気を帯びる事になります。
 
 鉄、ニッケル、コバルトなどがこれにあたります。
 
 
 
  
 
  
 
 外部磁界を取り除いても残る磁気を残留磁気と呼び、
 
 これが大きいものを硬質磁性材料、
 
 小さいものを軟質磁性材料と言います。
 
 永久磁石は硬質磁性材料です。
 
  
 
 また、磁気の方向がすべて揃う場合をフェロ磁性、一部が揃わない場合をフェリ磁性と呼びます。
 
  
 
 反磁性体は、強い磁場の中に置かれると物質の表面で反対方向の磁場を生じるものです。
 
 この反発力は磁石の同極を近づけた時とは異なり、どちらの極を近づけてもそれに反発するものです。
 
 ヘリウム、金、銀、銅などがこれにあたります。
 
  
 
 常磁性体は外部磁場が無い時は磁性を持たない性質です。
 尚、強磁性体でもある温度以上になると「常磁性」を示すようになり、
 
 この温度をキュリー点あるいはキュリー温度といいます。
 
 金属以外では酸素や一酸化炭素、ガラスなども常磁性体です。
 
  
 
 
 
  
 
 
 
  
 
  
 
 鉄は強磁性体で、アルミニウムは常磁性体となるわけです。
 
 鉄などでは不対電子を持つ余り軌道(d軌道)があり、アルミニウムなどでは対電子のみで磁気モーメントを打ち消し合っているので、これにより発生する磁気モーメントは鉄の数万分の一以下となり、ほぼ磁石にくっつかないという事になります。
 
 *磁場は電場と密接な関係があり、実際には非常に複雑なものですが、本文は簡易的な説明としています。
 
  
 
  
 
 博士「どうじゃ、あるる。磁性が何か、わかったかの?」
 
 あるる「はいっ! 磁石の世界って結構奥が深いんですねー。おじいちゃんが磁石好きなのがわかった気がします」
 
 博士「そうか、おじいさん、そんなに磁石が好きなのか? 今度磁性をつまみにいっぱいやりたいもんじゃのう」
 
 あるる「わーぜひぜひ。おじいちゃんも喜びます! お誕生日会に博士もぜひ出席を!」
 
 博士「そうか? そんなにいうならお言葉に甘えるとしようかのぅ〜。ある太郎オンステージも楽しみじゃしのぅ〜」
 
 あるる「あ〜、そうだった! 練習しなきゃ〜。じゃ、博士、今日は帰ります!また明日!」
 
 博士「・・・もう行ってしまった・・・もうちょっと磁性の余韻を楽しみたかったのに…のぅ・・・」
 
  
 
 少しだけ遠い目になる博士であった。