【今月のまめ知識 第41回】コーナーブラケットの取付方向と強度について

公開日時:2016/08/30

夏休みも終わり、久々にご対面した博士とあるる。
ふと足元を見ると、あるるのひざこぞう(?)には、大きな絆創膏が…。

 

博士「あるる、どうしたんじゃ? ケガでもしたのか?」

あるる「あ、これですか…。夏休みにはしゃぎすぎちゃって。てへ(笑)」

 

リオ・オリンピックを見て、選手たちの活躍に魅入られてしまったあるる。

気分はすっかりアスリートで、遊歩道を全速力で走ってみたところ、

モノの見事にコーナーでズリッと、すっ転んでしまったのだ。

 

博士「おやおや。お前は羽根があるんだから、飛んだ方がずっと早いし、気持ちよかろうが…」

あるる「まぁ、そうなんですけど、どうしても走ってみたかったんです〜」

博士「コーナーは想像以上に圧がかかるじゃろ?」

あるる「ええ、平気で曲がれると思っていたのですが、耐えきれませんでした」

博士「そうなんじゃよ。「コーナーを制する者がレースを制す」じゃが、制するのはレースだけではないぞ。これは“棚づくり”にもいえることなんじゃ」

あるる「へ? 棚?…ですか?」

博士「ああ、あるるがこの前作ってくれた、この棚じゃ」

あるる「へぇ〜っ」

博士「塀ではなくて棚じゃ」

あるる「わかってますよ!」

博士「これをもっと強化する方法があるんじゃが… 聞きたいかの?」

あるる「もちろんですです! 聞きたいです! 教えてください!」

博士「おお、元気がいいのぅ。夏休みにたっぷり休んだと見える。それでは、ご要望にお応えしようかのぅ」

 

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アルミフレームの接続に使用するコーナーブラケットは、

その取付方向により強度が大きく異なります。

 

当社フレームのAFS-3030L-6をT型に組み合わせ、

1個のブラケットABLD-30-6-Nで接続した試験結果を示します。

 

試験方法は下図の通りです。

 

ブラケット試験条件

 

1000mmの位置で荷重を掛け、フレームのたわみの影響を除くために

接続面から45mmの位置で変位を測定しています。

 

ブラケットデータ

 

このように、圧倒的に引張り時が強くなっています。

 

ではブラケットが圧縮の場合引張りの場合で、どのように違いがあるのかを説明します。

 

参考41a

 

 

ブラケットに圧縮方向の荷重がかかる場合


 

F1を支点としてボルトB1が引張られ、アルミフレームの溝にも引張り応力が掛かります。

ボルトB1を支点としてF1点でブラケットに圧縮応力が掛かります。

 

F2を支点としてボルトB2が引張られ、アルミフレームの溝にも引張り応力が掛かります。

ボルトB2を支点としてF2点でブラケットに圧縮応力が掛かります。

 

ブラケット本体には、F1~F2間で圧縮応力が発生します。

また、荷重方向のせん断力により、S2面にせん断力が掛かり、滑らせようとする力が掛かります。

 

 

ブラケットに引張り方向の荷重が掛かる場合


 

F3を支点としてボルトB3が引張られ、アルミフレームの溝にも引張り応力が掛かります。

またブラケットにも引張り応力が掛かります。

 

F4を支点としてボルトB4が引張られ、アルミフレームの溝にも引張り応力が掛かります。

またブラケットにも引張り応力が掛かります。

 

ブラケット本体には、B3~B4間で引張り応力が発生します。

 

また、荷重の掛かっている部材がF4を支点として時計回りに回転しようとするので、

S3面にせん断力が生じ滑らせようとする力が掛かります。

 

圧縮でのB1~F1の距離と、引張りでのB3~F3の距離を比べた場合

B1~F1<B3~F3なので

レバー比から圧縮時の方がボルトに大きな張力が掛かります。

 

それも要因のひとつですが、変位量に対して大きく影響しているのは

荷重の掛かっている部材に時計回りに発生する回転力に対する抵抗力です。

 

その抵抗力としては、圧縮時ではボルトB1の軸方向の力のみですが、

引張時にはボルトB3を支点としてF4点を相手部材に押し付け、

その反力としてS3面の摩擦力が大きな抵抗力として働きます。

 

ブラケット自体の強さはX-X’面の断面係数が重要であり、

特に圧縮時の破壊強度に影響しますが、実際のフレーム変位量は

溝の強度(引張に対する)ブラケットとフレームの摩擦力

大きく影響を受けているということです。

 

この試験は、T型に組み合わせて単体での強さを見ていますが、

実際にはH型や口型に組み合わせることが多いので、次にそれらの場合のことを記します。

 

 

H型に組み立てた場合


 

参考41b

 

H型、両端支持では荷重の掛かるフレームの剛性が充分であれば、

ブラケット部にかかる回転モーメントは小さくなり、

ブラケットが下側の場合S5、S6面の摩擦力で決まります。

 

ブラケットが上側の場合にはS7、S8面の摩擦力に加え、

B7、B8ボルトとその相手のフレーム溝強度が問題となります。

 

 

口型に組み立てた場合


 

参考41c

 

そして装置架台など口型に組み立てた場合ですが、

上図の例では、A,Dのブラケットには圧縮が、B,Cのブラケットには引張が掛かります。

つまり変形に対する抵抗力の大部分はB,Cの2個のブラケットが受け持っています。

 

アルミフレームの構造物において、このような横からの荷重で平行四辺形のように

変形することに対しては、下図のようなラーメン構造が非常に有効になります。

 

参考41d

 

アルミフレームの構造物では色々な条件によってボトルネックが変わるので、

ブラケットの強度を単純な数値で表現することは困難ですが、特性を理解して

ブラケットの取付け方を考えることでより良い設計が可能となります。

 

博士「・・・ということじゃ。わかったかの?」

あるる「う〜ん… 理解するには、もうちょっと時間がかかりそうですが…。コーナーには、私たちが思っている以上に力がかかるってことだけはわかりました」

博士「ま、そこだけわかれば、今日は良しとしようか」

あるる「じゃ、博士。お昼ご飯にしましょうか」

博士「おお、もうそんな時間か。よし、今日は何を食べようかのう」

あるる「決まっているじゃないですか! ラーメン、行きますよ!!」

博士「・・・ラーメン構造の話は確かにしたが…。まさか今日もそこだけ、覚えているのではなかろうな…」

アルファ博士08アルルちゃん05

 

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