【今月のまめ知識 第30回】座屈について

公開日時:2015/09/29

とあるのどかな昼下がり。

昼食を食べたばかりのあるるに、今、猛烈な睡魔が襲って来ている。

午後一の授業はまさに睡魔との戦い。

なんとか覚醒していようと、シャーペンをムダにカチカチしたり

プラスチックの定規をもてあそんだりしているあるるなのだが…。

 

あるる「・・・・(ねむい、どうしようもないくらい眠い…)。

何か手を動かしていないと、眠ってしまう…」

博士「そうじゃ!あるる! それじゃ!!!」

あるる「 ドキーッ! Σ(゜△゜〃;) あぅあぅあ・・・(あー驚いた)」

博士「よくわかったのぅ、あるる。スゴイぞ。優秀じゃ。さすがわしの見込んだ生徒だけのことはある」

あるる「(キョロキョロ)え、う、あ・・・」

あるる「あのぅ…博士、すいません。もう少しわかりやすく説明していただけませんか」

博士「おお、そうか。すまんすまん。今説明していた「座屈」は、あるるがやった定規の動きそのものなんじゃ」

あるる「へ? 定規? あ、これ?」

博士「そうじゃ。べこべこ動かしておったじゃろう?」

あるる「あ、はい・・・」

博士「その、折れない程度に折り曲げるのが、まさに「座屈」の基本なんじゃよ」

あるる「はい? ざくつ? ざつく? どっち・・????」

博士「なんじゃ、わかってやっていたわけではないのか」

あるる「すいません。何かいじってないと、深い深い眠りの世界に落ちそうだったもので…」

博士「それであの動きをするとは、さすがワシの生徒じゃ」

あるる「え?褒めてくれるの?」

博士「よし! あるるも目が覚めたようだし、もう一度座屈について説明するぞー!

よぉ〜く聞いておくように」

あるる「・・・あ、はい・・・(博士に火をつけちゃった…)」

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近年では太くて丈夫な柱や、厚い板を使わずして強度的に優れた材料がたくさんあり

構造物の軽量化やスリム化ができるようになりました。

 

しかし条件によっては、材料の強度とは無関係に

材料本来の強度よりもはるかに小さな力で急に変形の模様が変化し、

大きなたわみを生ずることがあります。

 

この現象を「座屈」と言いますが、なぜこの様なことが起こるのでしょうか?

今回はこの座屈についてお話しましょう。

 

 

座屈について


 

構造物に圧縮方向の荷重がかかった時に、ある時点で急激な形状変化が発生して

大きな変形や破壊を起こすことがあります。

 

短い部材に比べ、細長い部材は引張力より圧縮力の方が弱く、

材料が持つ強度より遥かに小さな力で破壊します。

 

棒2種テスト

 

細長くまっすぐな棒の両端を押すと、

力が小さいうちは単純な圧縮応力とひずみを生じて釣り合っていますが、

圧縮力がある値に達すると、釣り合いは急に不安定となり

棒は曲って耐荷力は急激に低下します。

 

 

棒圧縮

 

このように、ある釣り合い状態(真っすぐ圧縮されている)から

急激に別の釣り合い状態(弓形に曲がる)に変化することを「座屈」といいます。

 

なぜ軸力をかけたときに縮むのではなく、曲がるのか?
それは完全にまっすぐではなく、材料が均質ではないことによります。

 

ですから、部材がどれくらいまっすぐなのか、どれくらい均質なのかを
数値で定めることが難しく、理論値に対してある安全率を見ることが必要なのです。

 

 

座屈の計算


 

座屈の計算には、オイラーの公式、ランキンの公式、テトマイヤーの公式、ジョンソンの公式などがあります。

 

座屈が発生するときの荷重を 「座屈荷重」といい、

その時の応力を「座屈応力」といいます。

 

材料が極めて短い場合には、許容荷重は圧縮応力そのもので、これが上限値となりますが

細長くなるほど、座屈が起きやすくなるので圧縮される構造物を設計する際は注意が必要です。

 

座屈荷重を求める際には、部材の細長さを表す細長比(λ)という値があり

値が大きいほど細長い構造であることを示します。

 

まずは最小断面二次半径(k)を求め、それから細長比を求めます。

 

数式3

 

λ:細長比

k:最小断面二次半径

L:座屈長さ

I:断面二次モーメント

A:断面積

 

 

この細長比(λ)には限界細長比という値があり、限界細長比は概ね100程度です。

この限界細長比を境とし、

限界細長比以上を弾性座屈、限界細長比以下を非弾性座屈といいます。

また、座屈荷重は支持条件によっても変わり、
端末条件により、下図のような端末係数があります。

 

 

端末条件

 

 

端末係数nを見てわかる通り端末条件により、許容応力は大きく変わります。

 

 

弾性座屈においてはオイラーの公式、非弾性座屈においてジョンソンの公式を用います。

その式を以下に記します。

 

座屈の定義

 

オイラーの公式を見てわかる通り、座屈荷重は柱の長さの2乗に反比例するため
長いものは特に座屈しやすくなるので設計時は注意が必要です。

 

上記の式により当社アルファフレームAFS-3060-6を計算した結果を

グラフとして以下に示します。

 

 

許容応力と細長比

 

許容座屈荷重
許容座屈荷重

 

参考として、以下に代表的なフレームに関する座屈計算結果を示します。

 

代表的なフレームの座屈

 

 

この値に適切な安全率を考慮して、設計を行ってください。

 

 

博士「あるる、起きているか?」

あるる「起きてますよ! へぇ〜、「座屈」という言葉、今回初めて知りました!」

あるる「しかもこの定規がベコベコするのも、オイラーの公式で証明できるなんて

オイラ、知りませんでしたよ〜」

博士「言いたいだけじゃろ(笑)」

博士「でもな、あるる。物理や化学というものは、身近なところにあるものなんじゃよ」

あるる「はい!ますます面白くなりました!」

あるる「いやぁ〜、スゴいなぁ〜」

博士「おいおい、あるる。そんなに定規を折り曲げては・・・」

びゅーーん!!!バチッ!!!(定規が宙を舞い博士のおでこに直撃した音)

博士「イタッ!!くぅ・・・。こらーーーあるる!!」

博士「折れないと思って、力一杯曲げるからじゃ~!!!」

あるる「ふぇ~ん。博士ごめんなさい…(とほほ) 座屈のことは一生忘れないと思います…」

アルルちゃん06

 

 

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