アルファ博士の気ままにトーク♪ 第6話 何回見ても発見!感動!『トヨタ産業技術記念館』

公開日時:2023/08/30

みなさん、こんにちは!

今回は、愛知県名古屋市西区にある博物館、「トヨタ産業技術記念館」のお話です。


私はここが好きで、この20年間、もう何十回と数えきれないくらい来ているのですが、何回見ても、いつも興味深い発見があって、この上なく好きな場所になっています。


今日は、このトヨタ産業技術記念館の素晴らしさ、楽しさを皆さんと共有したいと思います。

 

トヨタ産業技術記念館♪

名古屋駅から名鉄で北にひと駅、栄生駅から通りを南東方向に3分ほど歩くと、左手に堂々とした赤レンガの建物が目に入ってきます。


ここが「トヨタ産業技術記念館」

モノづくり、産業機械技術の聖地とも言える博物館です。

 

開館は1994年6月。トヨタ自動車および自動車を中心に形成されたトヨタグループの創業者である豊田喜一郎氏の生誕百年に建てられました。


来年の2024年6月に開館30周年を迎えるにあたり、2023年7月から2025年5月までの23か月間を「トヨタ産業技術記念館 30th ANNIVERSARY」期間として、さまざまな活動にチャレンジされています。

 

いざ!入門♪

ではさっそく門を通って、正面の入り口から建物に入ってみましょう!

 

ここは、豊田喜一郎の父、豊田佐吉が自ら開発した「自動織機」を実地に試験するために、明治44年(1911年)に創設した『豊田自働織布工場』(後の豊田自動織機製作所栄生工場)だった場所です。

赤レンガの建物は、大正時代に建てられた紡織工場が元になっているとのことで、大いなる歴史を感じ、何度訪れてもワクワクします。

 

 

まずは入場券を購入します。

大人1名500円と格安ですが、さらにお得なのは「年間パス」です。

記名者限定ですが、何回入場しても1,200円!!
1年間で3回以上来る予定であれば非常にお勧めです。

 

今回は久しぶりの訪問で、昨年購入した年間パスの期限が切れていたので新たに購入しました。


年間パスは名刺サイズのプラカードで、表面にレンガの壁をバックに撮ってもらう顔写真が印刷され、カードの裏面に油性ペンで氏名を記入します。

 

これで準備OK♪

早速中に入ってみましょう\(^o^)/

 

今年も大活躍間違いなしのトヨタ産業技術記念館年間パス♪

基本理念のシンボル!!

エントランスロビーに入ると、見上げるほど大きな円筒形の機械が設置されています。

 

この大きな機械は、先ほども少し説明したトヨタグループの創業者豊田喜一郎の父、豊田佐吉が明治39年に発明した画期的な織機で、「環状織機」というものです。


普通の織機は、縦糸を上下に、横糸を左右に往復させて織っていきますが、この「環状織機」は筒状の縦糸の中を、横糸を運ぶ「杼(ひ)」がグルグルと周回することで布を織ることができ、従来の往復運動の場合に生じるエネルギーの無駄、騒音の発生、織幅の制約などを排除した織機なのです。


さらにこの「環状織機」は、これまでに無い全く新しい方式を発明し、長期間、実用化テストを経て成功したもので、トヨタ産業技術記念館が目的にしている「研究と創造の精神」を語るシンボルとして展示してあります。

 

 

圧巻の環状織機

またエントランスロビーには、ここが「豊田自働織布工場」だった頃の工場全体を再現したジオラマが展示されています。

現在のトヨタ産業技術記念館とほぼ同じ形の敷地に、紡績工場、織布工場、発電施設、事務所、食堂、女子寄宿舎、男子寄宿舎などが並んでいます。

特に女子寄宿舎は学校の校舎のように長い建物が2棟あって、当時の女性従業員の生活が想像されます。

工場の中央には、高い煙突が立っていますが、これは当時、発電機の蒸気機関を動かすための蒸気を作っていたボイラーの煙突で、博物館中央の大きな庭「動力の庭」の中央に、その煙突の基礎の遺構が保存されています。

豊田自働織布工場ジオラマ 手前の2棟が女子寄宿舎

煙突基礎部遺構とレンガの壁

繊維産業の歴史を辿る「繊維機械館」

エントランスホールを十分に堪能したあとは、いよいよ展示スペースです。

 

展示は繊維機械に関する「繊維機械館」と、自動車に関する「自動車館」の大きく2つに分類され、織機の開発技術と歴史が、後の自動車の技術の基礎になって、発展したことがよくわかる構成になっています。

 

まずは、“世界のトヨタ”のルーツとなった繊維産業の歴史を辿る「繊維機械館」から。

 

ここは大正時代に建てられた紡績工場、建屋をそのまま使用しており、日本産業を支えた紡織工場の様子を彷彿とさせる風景が広がり、まさにタイムトリップ気分になります。

最初に置かれているのが、豊田佐吉が発明した「無停止杼換式豊田自動織機(G型)第1号機」です。

 

この織機は、50件以上の発明「無停止杼(ひ)換え」などの技術により、当時世界最高の性能を誇りました。


展示されている織機は、日本機械学会から2007年「機械遺産」に認定され、イギリスの大英博物館にも2000年に動態展示品として同型機が寄贈されています。


この「無停止杼(ひ)換え」が、とにもかくにも格段に「モノスゴイ」ものなのです!


杼(ひ)は、横糸を左右に往復して運ぶものですが、杼に仕込まれている横糸の長さは限られているので、横糸が無くなる前に杼を交換しなくてはなりません。


この交換を作業者を呼ばずとして、織機の動きを止めることも動きを遅くすることも無く、自動で瞬間的に杼を交換し横糸を補充することができるのです。

 

これを実機で見せてくれるのですが、本当に目にも留まらぬ瞬間的な速さで、現代ある電気式のセンサーやアクチュエータを使わずに、メカ機構と原動機からつながる駆動軸の動きだけで実現しているなんて、まさに「神業メカ」です。


実機を見ただけでは、交換する時に「ガチャン」という音が聞こえるだけで、何が起きているのかもわからないのですが、説明用のモデルで説明を聞きながらゆっくりした動きで見れば、その神業の仕組みや動きを理解することができます。

 

 

G型自動織機1号機

G型自動織機の集団運転

繊維機械館の中ほどに進むと、このG型自動織機が16台ほど並んでおり、これらの織機が揃って運転する「集団運転」のデモでは、昔の織物工場の雰囲気を味わえます。

 

そういえば、この音・・・。


私が子供の頃、夏休みなどに泊まりに行った祖父の家の近くに織物工場がありました。


街中の小さな工場でしたが、その工場の近くに行くと聞こえてきた織機の動くあの音と同じで、路地沿いの高い窓から、背伸びして工場の中の様子を覗き込んで見たりした記憶がよみがえります。

 

これもまた、トヨタ産業技術記念館が好きな理由の一つなのかもしれません。

 

この集団運転の織機のレイアウトは、当時の織布工場で、できるだけ多くの織機を、少ない面積、少ない人数で効率的に操業するために、織機の向き、運転操作のハンドルの位置、通路の幅、駆動用のライン軸など、多くの配慮と工夫がされていることがわかります。

 

さらに、「集団運転」の右手前のエリアには、「G型自動織機の組立ライン」が再現されています。

このコーナーは、一見すると、動くデモも無く、地味なので、見過ごしてしまうことがあるかもしれませんが、このトヨタ産業技術記念館の一番の見どころは、実は、この組立ラインだと、みなさんに、強調してお知らせしたいです!!!


それは、現代のトヨタの自動車生産のエッセンスは、この昭和初期の織機の組立工場で生まれた思想から発展したもので、「ジャストインタイム」のトヨタ生産方式の原点が、この織機の組立ラインで生まれて、実践されたのです。

 

そういう目でこの組立ラインを見ると、現代の自動車の組立ラインと、構成がほとんど同じことに気が付きます。

これぞ、まさにこの場所が、モノづくり、生産技術の「聖地」と言える、大きな理由です。

 

さらにその先に進むと、現代の最新型の高速高機能な織機に至るまでの、エポックメーキングな織機の数々が展示されています。

これらの織機を1台1台をじっくり見ていると、それぞれのメカ機構や、制御方法などに、さまざまな工夫がなされているのがわかり、訪問するたびに毎回新しい疑問、発見、そして感動があります。

 


今回見た中で一番感動したのは、スイスのルーチ社が1912年(大正元年)に開発した絹用の多色織り機の美しさです。


ジャガードといわれるタイプの織機で、上部のパンチカードの部分から下に降りる縦糸制御用のワイヤー、機械の架台や機構の部品、それらが、言いようがないほど美しく構成されていることに気が付いて、しばらくの間、この美しいスイス製の織機に見とれていました。

スイスのルーチ社製両側4丁杼織機

ふと気が付くと、そろそろ閉館時間が近くなってしまいました。

このトヨタ産業技術記念館の全部をじっくり見るには、少なくとも何日か必要ですね。

糸を紡ぐ紡績機、自動車開発につながるさまざまな金属加工の実演展示、そして自動車の開発と生産の技術など、これらについては、またの機会に紹介したいと思います。

今回の訪問の最後に、豊田佐吉が信念とした言葉を皆さんと共有したいと思います。

「創造的なものは、完全なる営業的試験を行うにあらざれば、発明の真価を世に問うべからず」

「研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし」

この佐吉の志を継ぎ、息子喜一郎がトヨタグループを創ったことを思うと、なおさら深く胸に刻みたい言葉です。

トヨタ産業技術記念館のホームページでは、バーチャル見学や、動画なども充実していますが、是非とも足を運んで体感されることを全力でお勧めします!!

実物は、いろいろなことを語りかけてくれますよ。

以上

▼トヨタ産業技術館

https://www.tcmit.org/

注)自働と自動:
自働:「人の働き」を機械で行う。
自動:機械が「自ら動く」。
トヨタグループでは従来から、この自働と自動を意味によって、使い分けています。
今回の気ままにトークは、「トヨタ産業技術記念館ガイドブック」での記載に沿って語らせていただきました。

 

また、掲載した写真は、撮影OKな場所で、博士個人が撮影したものです。

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