アルファ博士の気ままにトーク♪ 第2話 日本の鉄道における電源事情について

公開日時:2021/12/22

う、うぉほん。

皆さん、こんにちは。「アルファ博士」です。

 

前回は気の向くままに旅に出たつもりで、「飛行機」についてお話しましたが、今回もまた私の大好きな乗り物の一つである「電車」についてお話したいと思います。

 

出張等でよく交通機関を利用するので、頭の中には常に新しい乗換案内がインプットされており、ここから、あそこに行くには・・・と考えた瞬間、日本中の路線地図がバーーーと浮かび上がってきます。

 

曜日や時間帯によって変わる交通事情を経験値で察知して、混雑を避け、スムーズに移動できる手段を瞬時に思い浮かべ、うまく移動出来た時の達成感や、そうでなかった時の新たな経路の開拓など、未だに色々と楽しんでいます。

 

こんなわしが、昔電車に乗っていてふと疑問に思って調べたことを語ってみたいと思います。

なんで直流、交流、50Hz、60Hzが絡み合っているの?

皆さんも、「電気はどこかで切り替わっている」という事は何となく知っておられるでしょうが、直流、交流、50Hz、60Hzが絡み合っている何故?を取り上げてみましょう。

 

日本の商用電源は糸魚川静岡構造線(フォッサマグナ)にほぼ沿って西日本が60Hz、東日本が50Hzとなっているわけですが、電車は日本中を走っています。

 

そして直流と交流に関して、直流では周波数は関係なくモーターの速度制御も電圧を可変することで容易に行えます。

 

しかし、電気は抵抗のある電線を流れると、電圧降下(オームの法則:電圧=電流×抵抗)があり、それは送電距離に比例して大きくなるため一定間隔で電源を供給する変電所が必要になります。

 

費用削減のために変電所を少なくするには、長距離送電を効率よく行うために高電圧化が必要となります。何故なら低下する電圧は供給される電圧に関係なく一定なので高電圧であるほど低下する割合が小さくなるからです。

 

これがポイントになるのですが、直流では高電圧で受け取った電気を降圧するのは大変です。交流であれば安価な変圧器で降圧した後に整流器で直流化することは容易ですが車両コストは高くなってしまいます。

 

つまり、都市部で大量の車両が必要なところでは、変電所を増やしても車両コストが下がる直流送電が選択され、都市部から離れた地域では、車両数も少ないので車両コストが上がっても変電所を減らせる交流の高圧送電が選択されたわけです。

 

 

JRでは都市部、上信越、東海道・山陽、四国地区は直流1500Vで、北海道、東北、北陸、九州などは交流20000Vまたは25000Vとなっています。私鉄はほとんど直流です。送電距離の短い市内の路面電車(富山のLRTなど)は直流600Vです。

 

JRの運行の「ワザ」

鉄道の電化は明治時代に直流電化から始まり、営業用の交流電化は1957年に北陸本線(田村~敦賀間)からとなっています。結果として日本中の鉄道は直流、交流、50Hz、60Hzが混在しているのです。

 


現在はVVVFインバータによって周波数と電圧を変化させ、交流モーターで駆動することが主流となっていますが、かつては直流電気機関車、交流電気機関車、そして無電化区間はディーゼル機関車または蒸気機関車と駆動する機関車をつなぎ変えていました。

 


例えば1968年に急行から特急となった大阪~青森の特急日本海のこの年の運行は


大阪~米原:直流電気機関車EF65
米原~田村:ディーゼル機関車DD51
田村~糸魚川:交流電気機関車EF70
糸魚川~青森:ディーゼル機関車DD51
米原~田村間は、直流区間から交流区間までの間をディーゼル機関車が牽引したわけです。

 

翌1969年には糸魚川~直江津間電化され北陸本線全線交流電化されました。しかし直江津から新潟までの信越本線は直流です。しかしこの年から交直流電気機関車EF81が投入されたので、以下の運行となりました。


大阪~米原:直流電気機関車EF65
米原~田村:ディーゼル機関車DD51
田村~金沢:交流電気機関車EF70
金沢~新津:交直流電気機関車EF81
新津~青森:ディーゼル機関車DD51(途中秋田で別機関区の機関車に交換)


その後、1971年に奥羽本線の秋田~青森間が交流電化、1972年には新津~秋田間も交流電化、1986年には大阪~青森全線においてEF81が牽引することとなりました。


これはディーゼル機関車でつないでいた切替区間(デッドセクション:架線に電気が流れない無電流区間)を惰性で走行している間に交流、直流を切り替えるものです。


交直流の電車においてはこのデッドセクション通過時においてかつては車内の電気が消えて真っ暗になり(常磐線取手付近など)電源切替を実感できましたが、今は蓄電池を装着しているので気付かなくなりました。

1968年のダイヤ改正で変わったこと

ちょっと話は変わりますが、1968年10月1日のダイヤ改正(ヨンサントオ)に合わせ、高速化対応として一部の電気機関車にブレーキシステムの改造が行われました。

 

長距離特急及びコンテナ貨物を輸送するための地域間急行貨物列車を牽引するためです。そしてその改造固体には製造番号1000番台が与えられました。

 


当時、この地域間急行貨物のしくみを知ったとき、まさに物流革命という衝撃を感じました。そして1972年頃からは交直流電気機関車EF81により牽引機関車の交換回数は一気に減りました。

 

新幹線の電源事情

次に、新幹線はすべて交流です。

 

東海道新幹線は60Hzです。東京~富士川間は東京電力の50Hz地域ですがこの区間は周波数変換変電所を設けて60Hzで供給されています。

 

山陽新幹線、九州新幹線も全線60Hzです。
東北、上越新幹線は全線50Hzとなっています。

 

ここまでは解りやすいのですが、問題は北陸新幹線です。

 

北陸新幹線は東京駅を50Hzでスタートしますが、軽井沢から上越までは60Hz、糸魚川付近は50Hz、糸魚川を過ぎると60Hzとなります。電力会社が【東京電力→中部電力→東北電力→北陸電力】とリレーするわけです。

 

北陸新幹線は周波数変換装置を搭載しており、なんとモーターがパワーを出している力走状態で切替を行っているとの事です。北陸新幹線だけが二刀流!他の路線の新幹線車両は北陸新幹線の代わりを出来ません。

 

在来線の電源事情

話は戻って在来線です。

 

大まかに都市部、上信越、東海道・山陽、四国が直流、北海道、東北、北陸、九州が交流です。

 

ここで東京近郊の話ですが、常磐線は首都圏から取手(上野から約40km)まで直流でそれ以降は交流です。かなり首都圏に近いところで交流に切り替わります。宇都宮線で切り替わる場所は黒磯(上野から約160km)なのでずいぶんと差があります。

 

ここで登場するのが茨城県石岡市柿岡にある気象庁地磁気観測所です。直流電流によってこの観測に影響が出るという事なのです。直流においては架線がプラス側、線路がマイナス側なのですがレールは地面と完全に絶縁されていなく一部の電流が地中へ漏れるらしく(これは変電所へ戻るそうです)、交流でも漏れはあるのですが磁界の方向が常に変化する交流に対して、磁界の方向が一定である直流では観測に影響があると言う事らしいです。

 

 

最後にこの電化の歴史、進化を支えてきた重要なもの、それは半導体です。

 

昔の電気機関車は直流モーターであり、交流電化した路線で使用するために半導体であるシリコンを使用したシリコン整流器が使われます。

 

そして大電流を制御するサイリスタ、直流電流をサイリスタインバーターで交流にして交流の誘導モーターを駆動、そして現在ではVVVFインバーターにより電圧と周波数を可変し、直流、交流どちらを受け取っても交流モーターで効率よく駆動、そして最近では半導体材料をSi(シリコン)からSiC(炭化ケイ素)にしてより高効率になっています。

 

電車の加速、減速時に聞こえるきれいな音色はこのVVVFインバーターにより周波数変換が起こっている音なのです。モーターの鉄心が磁界の変化によって体積膨張・収縮をするときに空気を振動させて音が出ているのです。

 

自動車のEV化でも同様ですが、半導体が高効率化→省エネルギー→カーボンニュートラルに大きく貢献します。

 

以上

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