NICおーっ!とテック物語 【第15話】アルファレール誕生
公開日時:2015/07/28
前回までのお話
数々の自動化装置を生み出してきたNICのものづくりは、
搬送の世界へと翼を広げていきます。
「モノを運ぶ」という行程は、業種業態問わず、
ほぼすべての製造業に必須なもの。
ただ、その業種によって「最適な運び方」があるだけです。
ある大手メーカーからの依頼で、飲料用ボトルキャップの
搬送装置を手がけるようになったNICは、「最適な運び方」を
追求して行く中で、NICが独自開発した「アルファコンベア」を
応用した自動搬送装置を生み出します。
はじまりはいつもお客様の声。
それに応えることで、新たな扉を開いてきたNIC。
意欲に満ちたものづくり魂が次に向かう先は・・・?!
アルミで強いレールを造りたい!
ミレニアムを目前にした1999年。適材適所への自動搬送を可能にした
「アルファコンベア」と時を同じくして、またひとつ画期的な装置
「アルファレール」が産声をあげました。
「アルファレール」は工場内で使用する「簡易クレーンシステム」で
パートナー企業である豊通エンジニアリング様(現;株式会社豊通テクノ様)との
共同開発によって生み出されました。
重量物搬送用レール「アルファレール」
今回の挑戦のきっかけとなったのは、
「簡易クレーンシステムのレールをアルミで作れないかな?」
という豊通エンジニアリング様(現;株式会社豊通テクノ様)の一言でした。
当時の簡易クレーンは、スチール製が主流でした。
アルミ製のレールもありましたが、非常に弱く、軽いものに使用する簡単なもので、
工場内ではスチールを塗装したものが使われていたのです。
スチールとはいえ、決して丈夫ではなく滑車の動きが重く施工も大変でした。
その点、アルミフレームは軽量で、高い剛性と耐久性を持っています。
しかも、ボルト結合だから設置や改造、さらに延長までも簡単に行え
溶接などの作業は必要ありません。
お客さまのご要望は、現状のスチールレールよりも軽くて強いレールです。
しかも扱いやすく、新設や改造などが楽にできるもの。
アルミフレームの技術を応用すれば、
きっと、作れるはずだ!!
そんな強い信念のもと、新しいチャレンジが始まったのです。
2つの技術の融合「アルファレール」誕生
レール部分全般に関してはNICが、取り付け具や吊り具の滑車部分は、
豊通エンジニアリング様(現;株式会社豊通テクノ様)が担当しました。
それぞれの専門知識と技術のコラボレーションは、
足し算ではなく「かけ算」となり、見事な化学変化を起こします。
アルミフレームの開発には実績を重ねてきたNICですが、
レールの開発は今回が初めてです。
まずはレールの形状から見直し、
現状のカーテンレールのようなものではなく
複雑な溝形状の押出し形材で、高い強度と安全性を目指しました。
私たちが設定したゴールは、7倍の安全率。
500キロの荷物を吊るすなら3.5トンまで耐えられるレールづくりです。
しかも、強度を保ちながら、スムーズなトロリーの動きも
同時に実現させなければなりません。
安全基準を満たすためのテストと解析を何度も行い、
導き出した妥協のない理想形状は、非常に製作難易度の高いものでした。
難しいからこそ、挑戦のしがいがある。
そして「できるまでやり抜く!」
これが昔から変わらぬNICのものづくりの姿勢です。
そのマインドを持ち続けながら、開発に明け暮れること約1年。
日本で初めてのアルミ搬送レールが、ここに誕生したのです。
要望をすべて実現した結果、
お客様から、スチール製が壊れるような過酷なテストにおいても
このアルファレールはビクともしないという、すばらしい評価を
いただく結果となりました。
また、動きが従来のものよりスムーズすぎて、
慣れないと危険だねと苦笑されることも・・・。
共同開発により誕生した「アルファレール」
アルファレールの登場により、同じ強度の鋼鉄製のレールに比べ、
30%程度もの軽量化に成功。
作業者の運搬労働負担を軽減できる“人にも場所にも優しい搬送装置”となりました。
アルファレールについては、
2015年5月号の「こんなところにアルミフレーム:
立山工場C棟に新設!!『アルファレール』」
で詳しく取り上げていいますので、
そちらも合わせてご覧いただければ幸いです。
ものづくりの新たな手応え
この経験により、お客さまの用途に合わせた
「特殊形状のアルミフレーム」の開発に、確かな手応えを感じたNIC開発チーム。
お客さまが「何を」求めているのかを的確にキャッチし、
それを実現するために持てる知識と技術を使い切る。
そんな十人十色のオートクチュールな開発をし続けるのが
NICの真の役目なのだと、志を新たにしました。
おかげ様でアルファレールの評価も高く、
「もっと小振りなものはできないか?」
「こままで強度はなくても充分なのだけれど・・・」 と、
様々な相談を受けるようになりました。
そのニーズを必ず「カタチ」にするのが、技術者の使命です。
さらに試行錯誤を重ね、用途にによって選べる
「ARS 500」「ARS 200」、そして「ホーストロリー用」の
3つのシリーズが誕生しました。
現在も豊通テクノ様とのタイアップで販路を広げています。
★アルファレール 総合カタログ
http://www.toyotsu-techno.net/image/pdf/catalog.pdf
さて、NICの技術力は、次はどんな「現実」を作り出すのか?
続きはまた次回のお楽しみということで。
<つづく>