NICおーっ!とテック物語【第2話】最初の試練を乗り越えて…
公開日時:2022/08/18
前号までのお話
「ないのだったら、作ってしまえ!」と、持ち前の職人気質を発揮して、日本で初めての自社開発によるアルミフレームの製品化に成功したNICオートテック。
自信作「アルファフレーム」を引っさげ、1988年のオートテックショーで、華々しいデビューを飾る・・・はずだったのですが、初陣は見事に惨敗。「今まで世の中にないものを売る」難しさを痛烈に知ることとなります。
その年の売り上げは5,500円。長さにすると、“たったの1メートル”!!
日本初のアルミフレームメーカーに訪れた、いきなりの大ピンチ! さぁ、どうする?!NICオートテック!!!
最初の試練を乗り越えて…
はからずも「売り上げ僅か5,500円」「長さにして1メートル」という強烈なデビュー戦を飾ることとなったNICオートテック。その散々たる結果に、愕然とした開発スタッフは、富山へ戻って一からの再スタートを切ることとなります。
時間と闘いながらも私たちはベストを尽してきた。
先陣を切る者には、常に大きな試練がついてまわるもの。
こんなくらいじゃ、俺たちはへこたれないゼ!!
得てして出だしにガツンとやられると、ともすれば臆病になり、現状維持か縮小かという選択を下す企業も少なくはない中、NICはあえて強気の戦法に出ました。
それぞれが熱い思いを胸に、まず取り組んだのが、自社製品開発チームの結成でした。アルファシステムをより洗練し、強化し、製品に磨きをかけていくことを第一の目標としたのです。
同時に「なぜあれほどまでに見向きもされなかったのか?」を冷静に、そして真摯に見つめ直します。
転んでもタダでは起きない技術屋魂、ここにあり!という感じですね。
開発スタッフ全員で、あーでもない、こーでもないと喧々諤々した結果、
「鋼材は非常に多くの種類がある。アルミフレームも、もっと種類を増やさなければ受け入れられないのだ!」
との結論にたどり着きます。
振り返れば、デビューを飾った「オートテック展’88」に出展したときには、製品ラインアップは僅か5点。この中から選べという方が、もともと酷な話だったのかもしれません。
さらに、 「ユーザーニーズにこたえるだけのデザインとアプリケーションが無かった」ことも大きな原因のひとつであったと分析します。
原因が分かれば、それを乗り越るべく、前進あるのみです。
NICオートテック選りすぐりの開発チームは、それこそ休日返上で金型の設計、フレームのデザイン、接続ブラケットや各種アプリケーションの
開発に没頭していきました。
その一方で、カタログやパンフレットなどの販促ツールの作成にも力を注ぎました。
製品の種類を増やしていくなら、それぞれの良さをPRしていくこともまた、開発と同じくらい大切だ。そんな思いから営業と開発がタッグを組んで、精力的に製品PRを進めて行きます。
「良いものを作る」ことと、「良いものであることを知らせる」こと。この2つをバランス良く考えたところこそ、NICオートテックのアンテナの感度の良さが垣間見えます。
1988年のNIC製品カタログの表紙。今見ると、かなりサイバーです。
1988年のカタログに掲載していた製品は、わずか5種類でした。
こちらが1989年度版のカタログです。前年とはデザインの視点が随分と変わっています。
1年でこんなにラインアップも増えました。まさに開発チームの努力の結晶です!
満を持しての再チャレンジ! オートテック展、ふたたび
昭和から平成に変わった1989年。再びオートテック展の季節がやってきました。
この1年間、開発スタッフ一同、全力でアルファフレームの開発に取り組んた結果、製品ラインアップも5種類から一気に増え、フレームの形状やパーツなどを合わせて、20の特許を取得しました。
やるだけのことはやった…。
悔いはない…。
こうして新しく生まれ変わった製品たちを引っさげて、ふたたび晴海のオートテック展に出展したのです。
いよいよ初日。
期待と不安が入り交じった、なんとも言えない高揚感に包まれながら、ほぼ徹夜でブースの準備に取り組んだスタッフたち。
さぁ、今度はどんな審判がくだされるのでしょうか?!
開場時間となり、会場も徐々に賑わってきました。
しかし、みなちらっと見る程度で、NICのブースにはなかなか足を止めてくれません。
やっぱりダメなのか…。
私たちの思いは、まだ受け止めてもらえないのか…
そんな思いがよぎったそのとき、一人の男性が立ち止まり、突然「なに、これは???」と、尋ねてくれたのです。
従来のアルミフレームは、あくまでも「素材」というイメージが強く、アルファフレームのように、ひとつのシステムとして機能することなど、考えられなかったのでしょう。今まで見たこともない形のフレームやパーツを目の当たりにして、思わず口から出てしまったのが、こんな言葉だったのです。
待ってました!とばかりに、我が開発チームのスタッフは、一生懸命説明します。それを興味深く聞く、お客様・・・
それが呼び水となったのか、その説明に一人、また一人として足を止め、あれよあれよというまにブーズは大にぎわい。パンフレットを配るにもどまどうほどの大盛況となったのです。スタッフ一同、嬉しい悲鳴の連続!!
「一体何が起きたんだ?」
昨年の苦い経験とは打って変わって、この驚くほどの大盛況。時代の波に乗るということは、こんなにも反応が違うものなのかを実感しながら、スタッフ一同、一心不乱にお客様の対応に徹しました。
そして、嵐のような日々が駆けぬけ−−−
開発スタッフのもとには、全国から3500枚以上の名刺が集まりました。
膨大な数の名刺を目の前にして、
みんなアルミに興味を持ってくれているんだ!
私たちのアイデアは、間違っていなかったんだ!
確かな手応えを胸に、帰路につく開発スタッフたち。その表情は、一年前とは比べ物にならないほど、生き生きと輝いていたのでした。
こうして見事リベンジを果たしたNICオートテック!
しかし、これでやっと「スタート地点」に立てたに過ぎません。
手元に残った3500枚の名刺を、活かすも殺すもこれから次第。
ここからが正念場です。
さぁ、次ぎはどんな一手を繰り出すのか?
がんばれ、NICオートテック!
<つづく>