おーっとテック物語 第32話 難関だらけのプリンター開発
公開日時:2022/08/18
前回までのお話
アルミフレームの組み立てで、多くのお客様を悩ませていた「ナット挿入問題」の解決に、果敢にも真っ正面から取り組んだKAKCHARチーム。「作業時間と工程の圧倒的な短縮」と「スキルのない人でもできる作業まで落とし込む」という2つのポイントを実現するために、“アルミフレームに直接図面データを印字する”という、常識破りの方法に思い至ります。
これが実現したら、図面を見ずに組み立てることができるようになる!
さっそく開発に取り組みますが、なかなか理想とするプリンターに出会うことができません。
そこで、「良いものがなければ自分たちで作ってしまえ!」という持ち前の「ものづくり魂」を燃やし、専用プリンター開発に着手しました。さて、その先に待ち受けているものは?
問題は精度だ!
アルミフレームに直接印字するために、最適なプリンターを自分たちの手で作り出す!
ゴールは決まりました。ここからが「ものづくり魂」を持つ者たちの本領発揮です。
KAKCHARチームは一丸となって、研究開発に取り組んでいきました。
ゴールへの道は高く、険しい・・・
誰もがそう思い、それなりの覚悟を持って臨むKAKCHARメンバー。
しかし、研究を進めれば進めるほど、その厳しさは容赦ないものであることを思い知らされるのでした。
KAKCHARチームを最も悩ませたのが、プリンターの印字精度でした。設計図面は、1mm、いえたった0.5mmずれてしまうと、全体に影響が出てしまいます。
図面の情報を限りなくゼロに近い誤差で、アルミフレームの上に印字するためには、「インク」と「プリンターの構造」の両面から見直していく必要がありました。
まずはインク。ここには2つの課題がありました。
ひとつは「消せるインク」であること。
アルミフレームは主に精密機器を扱う装置等に多く使われています。印字部分が剥がれ落ち、本来の作業の邪魔になってしまっては大変です。組み上がった時点でインクをさっと除去できることが、必要不可欠でした。
もうひとつは「すぐ乾き、しっかり定着するインク」であること。
印字するのは1面だけではありません。上下左右、4つの面に印字するため、直ぐに乾くインクでなければ、効率よく印字することができません。
とはいえ、消せるインクであっても、印字途中で擦れたり消えたりしては、何にもなりません。「消せる」という特性はそのままに、「定着する」という、一見相反するような特性をインクに求めたのです。
こうして改めて言葉にすると、KAKCHARチームがどれだけ高い理想を掲げているのかが、おわかりになるのではないでしょうか。
続いて見直したのは、プリンターの構造です。
そもそもプリンターは、文字や画像を印刷するための機械です。様々な方式やメーカーを調べましたが、どんなに上位機種であっても、KAKCHARチームが求める高い精度で印字できるものはありません。
精密な動きに耐えられる構造にしなくては・・・
気の遠くなるような実験が、日々繰り返されていきました。弱い心の持ち主なら、とっくに折れていたかもしれません。
しかし、KAKCHARチームは「目の前のハードルは高いほど燃える」という、ちょっとひねくれ者の天邪鬼的なハートを持つ者の集まりです。飽くなき探究心を燃やして、淡々とデータを取り続けたのです。
幸いにも、日本市場はまだリーマンショックから立ち直れてはおらず、依然として厳しい状況が続いておりましたが、翻せば「時間はたっぷりある」ということです。
さらに、ありがたいことに、KAKCHARチームの熱い想いに賛同し、共に険しい道を歩んでくれるメーカーにも巡り合いました。そのメーカーも、リーマンショックの影響で低空飛行が続くこの状況を、なんとか打破したいという想いがあったのかもしれません。
時間とパートナー。この2つの強い味方をフルに活かしながら、極めて精密なプリンター作りに集中していったのです。
何をどう印字するか? 印字ソフト開発も佳境に
部品ひとつひとつの素材、形状まで細かく見直し、試行錯誤した努力の甲斐あって、精度の高いプリンターの基本的な構造がわかりはじめてきました。
次の段階として必要になるのは、「出力する内容」について、細かく詰めていくことでした。
印字内容の検討も、プリンター開発と平行して進めておりましたが、ここでも課題は山積みです。
図面番号、部品番号、フレーム面記号、部品の取付位置などの様々な情報を、理解しやすく印字しなければなりません。
詳しく示そうとするあまり、多くの情報を書き入れすぎると、ごちゃごちゃして分かりづらい。
かといって、印字を簡易にしすぎては、図面として役に立ちません。
お客様にとって組立に必要な情報とは?
どこに印字すればわかりやすいか?
配色は?
フォントは?
文字や線の太さは? サイズは?
考える点は非常に多岐に渡りました。
そして何より、美しく仕上げたい--------
ここも技術者として、曲げられない美学でもありました。
わかりやすく、美しく、十分な情報を提供するためには、技術も美的センスも大いに問われる場面でしたが、ここでも「ものづくり魂」が響きあい、切磋琢磨が続けられました。
すべてはお客様が迷わず作業できるように。
ブレることのない思いを胸に、印字内容の検討にも熱が入っていきました。
「フレーム上に図面を印字する」という画期的組み立てサポートは、ハードとソフト、両面そろって初めて成立します。
果たして双方の開発は、足踏み揃えて進むのでしょうか?
そして、理想のプリンターは、いつ産声をあげるのか?
KAKCHARメンバーの地道な努力は、まだままだ続くのでした。
<つづく>