NICおーっ!とテック物語【第23回】トータルサポート「カクチャ」本格稼働へ
公開日時:2022/08/18
前回までのお話
時代のニーズを受けてクリーンブース事業、装置事業、
アルファフレーム事業ともに活躍の場を広げて行った2006年。
NICにとってエネルギー溢れる時代でした。
順調なときこそ、足元を見直すとき。そう考えたNICは、
ものづくりの基盤をもっと盤石なものにしていこうと、2007年6月に
「技術開発センター(現:開発センター)」を設立します。
技術開発の環境が整ったことで開発のスピードも加速し、
「高剛性フレーム」が産声を上げました。さて、次なる展開はいかに?
カクチャに歴史あり! 「カクチャ」誕生の布石を辿る
開発センターが完成し、「ものづくりのホーム」を持ったことで、
今まで以上に意欲と活気に満ちあふれる開発チーム。
前回ご紹介した「高剛性フレーム」を始め、様々な自社開発製品を
世に送り出していくことになるのですが、
ここからは、“最もNICらしいサービス”とも言える
「トータルサポート・カクチャ」に焦点を当てていきたいと思います。
カクチャもいきなり現在のスタイルになったわけではありません。
カクチャにも歴史あり! 開発センターを舞台に、様々なドラマを
繰り広げながら成長し、現在に至りました。
それでは、時計の針を少し逆さに回し、カクチャ誕生の布石となる
1998(平成10)年頃のNICの様子を見てみることにいたしましょう。
三次元設計システム「AMS」開発へ
まだミレニアムを迎える前の日本は、郵便番号が5桁から7桁になり、
長野オリンピックにわき、タイタニックが大ヒットし、
Windows98やiMacといった新しいテクノロジーが次々に生まれた
躍動感溢れる時が流れておりました。
当時のNICも、新たなテクノロジーへの挑戦として、
アルファフレームシステム専用の三次元設計システム
「AMS(Alfa Multiply System)」の開発に取り組んでいました。
その一歩を踏み出すきっかけとなったのは、開発チームの胸の中に
以前からくすぶっていた
「果たしてこれでいいのだろうか?」
という思いでした。
もともと装置メーカーとしてスタートしたNIC。
お客様の装置を作る立場でありながら、
自社製品であるアルファフレームの大口ユーザーであり、
最も良き理解者でもあるのです。
そんなポジションにいるにも関わらず、設計に膨大な時間がかかり、
部材の長さや部品数量などの間違いも発生しているのが現状でした。
我々でさえこんな状況なのだから、
使い慣れていないお客様はもっとご苦労されているに違いない。
当然、工数という貴重なコストも掛かっているはずだ。
この現状をなんとかできないものか、いや、しなければならない!
またもNICのものづくり魂に火がつきました。
冷静に現状を分析した結果、次のような結論にたどり着きます。
本当の便利さとは、時短と正確の両立に他ならない。
そのためには、「標準化」した「しくみ」が必要だ。
そのために必要なのは、専用CADシステムだ!
そして、そのシステムを使って、NICの設計ノウハウと技術力を
お客様に提供するんだ!
こうして、AMSの開発がスタートしたのです。
“初代”AMS運用開始
試行錯誤の末、翌99年、多様なニーズに素早く応えるための
“アルミフレーム専用”のCADシステム「AMS」の運用が始まりました。
開発チームの頭の中には「やりたいこと」「叶えたいこと」が
それこそ山のようにありました。しかし、何もかも一度に進めることは
現実問題不可能です。そこで3つのフェーズに分けて、開発を進めることにしたのです。
第1フェーズでは、主に営業支援ソフトの開発を集中して行ないました。
目指すのは自動作図、部材のリスト化、そして見積書の作成まで自動で行なうことです。
それを実現するために設計のノウハウをデータ化し、システムに組みこんだ結果、
案件処理のスピードが飛躍的に向上したのです。
今までは、熟練のCADエンジニアが1日に1〜2案件しか処理できなかったものが、
AMS導入により営業サイドで、アシスタントが操作できるようになり、
1日に5〜7案件の対応が可能になりました。
もちろん全てでデジタライズされているので、以前のようなミスもありません。
また、AMSから出力される組立図やアイソメ図はお客様へ、
部品図は工場内にそのまま指示書として使うことができます。
同じデータを使うことで、効率化と正確さの両方が実現したのです。
さらに、お客様からいただいた寸法に合わせて、
適切な部材を選択できるようになっているため、
過剰見積りを事前に防ぐことにもつながります。
素早く、正確に、適切に部材を選ぶ。
その結果、お客様に余計な手間・ひま・コストをかけさせない。
AMS開発の第一フェーズが形になったことで、開発チームが求めていた
「真の便利さ」が、一歩現実に近づきました。
これがすべて完成すれば、まさに「Win-Winのシステム」になると信じて、
開発チームはさらに高見を目指し歩き続けます。
しかしながら、システムもまた、生き物です。構想がいかに素晴らしいものであっても、
その機能を現実に落とし込むことは、想像以上の厚い壁がありました。
技術ももちろんですが、それを使いこなす私たちもまだ未熟だったのでしょう。
しっくりと馴染むシステムに育てていくには、システムも人も
バージョンアップが必要不可欠。試行錯誤を繰り返し、切磋琢磨して
お互い成長していくものなのですが・・・
AMSは素直に育ってくれるのか?
それともなかなか言うことを聞かない頑固者だったのか?
続きは次回のお楽しみということで。
<つづく>