【今月のまめ知識 第62回】 空気、その圧力差

公開日時:2018/05/28

とあるのんきな朝のひと時・・・

あるる「ふふふんふふふふ〜♪」

博士「おはようあるる。今日も朝からご機嫌じゃのう」

あるる「はいっ!この連休で生まれて初めて飛行機に乗ったんです! 楽しかったなぁ〜、かっこよかったなぁ〜、飛行機」

博士「それはよかったのぅ」

あるる「離陸するときはドキドキでした。耳もキーンとなっちゃったし」

博士「わしもいつもなるぞ。なんでキーンとなるか、わかるか、あるるよ?」

あるる「うーん・・・緊張し過ぎて?」

博士「ふぉっふぉっふぉっ、それもあるかもしれんが、気圧が変わるせいじゃ」

あるる「気圧? なんか、お天気みたいですね」

博士「地上が1気圧なのは知っておるな。高くなればなるほど気圧は低くなる。人間の体は低い気圧には耐えらんから、飛行機の中は0.8気圧まで気圧を上げているんじゃよ」

あるる「へぇ〜、知らなかった〜。でも、1気圧じゃなんですね」

博士「お、鋭い質問じゃのう。機体(胴体)の強度との兼ね合いで、0.8気圧がギリの線なのじゃ」

あるる「気圧、気圧かぁ・・・あんまり実感がなかったなぁ〜」

博士「では、問題じゃ。飛行機が飛んでいる最中に、窓を開けたらどうなると思う?」

あるる「う〜ん、全然想像つきませんよ」

博士「じゃぁ、機体に穴が空いたら?」

あるる「もっとわかりません!」

博士「ヒント。気圧の差♪」

あるる「??? でも、飛行機の窓って、確か開きませんでしたよ」

博士「そうじゃ! そこじゃ! 開かない構造になっているのには、理由があるんじゃ」

あるる「理由?」

博士「知りたいか? ふふ、知りたかろう。では今日は「気圧」について学んでいこうな」

 

 

気圧とは「気体の圧力」のことで、気圧の差によって空気の流れが発生します。

気象現象の風は、【今月のまめ知識 第27回】圧力とは?で説明したように高気圧の空間から低気圧の空間へと空気が移動することで発生します。

 

では、飛行中の航空機に穴が開いたらどうなるのか?

陽圧(差圧)クリーンブースからの排気を考えながら、空気、その圧力差について説明します。

飛行中の航空機に穴が開いたら?

航空機は高度10,000m前後で飛行しており、この高度での外気圧は285hPa程度です。

この時、機内はだいたい0.8気圧、810hPa程度に制御されています。これは標高約2,000m程度の高地の気圧です。

 

ここで機体に穴が開いた場合、その面の風速を求めてみます。

抗力の式より

機内の気圧0.8atm、気温20℃とすると

(計算上、空気密度については吹き出し時に上流側となる航空機内を基準)

なんと、音速に近い速度です。

 

次に窓の面積にかかる荷重を計算してみます。

機内外の圧力差が525hPaで、窓の面積が約0.1㎡と推定した場合、

 

52,500Pa×0.1㎡=5,250N

 

なんと、窓の面積に5,250N(ニュートン)もの荷重ががかっていることになります。

 

陽圧クリーンブースからの排気は?

これと同じ式を用いてクリーンブースからの排気を考えてみましょう。

 

クリーン度ISO 6(Fed.std.209D class1000)の一般的なクリーンブースだと内圧は2~3Paくらいです。

条件を20℃、1atm、内圧2Paとして先の式にて計算すると以下になります。

気圧は高度が上がるほど低く成りますが、その割合はというと、低高度においては1mあたり11Pa程度です。

50階だと約200m程度ですから、地表とは2,200Pa(22hPa)程度の差があるということになります。

 

圧力差があるのに流れが起きないのは、当然、地球の引力と自転による遠心力でのバランスが取れた状態になっているからです。

 

しかし、クリーンブース下面の隙間から1.82m/secもの風速を生じる圧力差はたった2Pa!

これは高度でいうと180mm程度に過ぎません。

クリーンブースの高さが2mだとすればこの高さで22Paの圧力差があるのにとても不思議です。

 

ところで抗力の式に、抗力係数(Cd)というのがあります。

これは形状による係数ですが、穴や隙間の場合だとその形状にもよりますが0.7~0.8程度でしょう。

 

また、自動車の空気抵抗もこの式で計算できます。面積は前面投影面積です。

 

Cd値は固有のものですが乗用車でだいたい0.3~0.4、エコカーやスポーツカーだと0.25~0.3程度、バスやトラックで0.5~0.7程度です。

 

ちなみにF-1はタイヤが露出している上にダウンフォースを得るパーツが付いているため、空気抵抗の塊になっているのでCd値は1近いようです。

 

このように空気は目には見えませんが、圧力という形でさまざまな影響を与える魔物といえます。

あるる「・・・・・(ぼーぜん)」

博士「どうした、あるる? 固まっているではないか」

あるる「あ、いや、博士。飛行機の機体に穴が開くと、音速に近い風が吹くってところに衝撃を受けて・・・」

博士「ま、あるるなんか軽々と吹き飛ばされるじゃろうな」

あるる「えっ∑(゚Д゚)!」

博士「正確には窓から“吸い出される”と言うべきか」

あるる「ええっ!す、吸い・・・!?!?!(あわあわ)」

博士「そう、機体の外に放り出されてしまうんじゃ。悲しいかな、実際にそういう飛行機事故も起きているんじゃよ」

あるる「うわぁー、こ、怖い・・・。もう飛行機乗るのやめようかな・・・」

博士「ふぉっふぉっふぉっ。あるるは極端だからのぅ。そこまで心配することはないぞ。アメリカ国家安全運輸委員会(NTSB)の調査によると、飛行機に乗った時に墜落する確率は0.0009%だそうじゃ。」

あるる「へ? そんなに少ないんですか?」

博士「ああ、“宝くじに当たるより少ない”なんて言う人もおるくらいじゃ」

あるる「そっかー。よかったー。そうとわかれば、またおじいちゃんに乗せてもらおっと。今度はどこに行こうかな〜、沖縄もいいなぁ〜。あ、思い切って外国行っちゃおうかなぁ〜♪」

博士「この切り替えの早さ、毎度のことながら、さすがじゃ。これはもう才能じゃな・・・」

 

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