【今月のまめ知識 第34回】 押出し加工と引抜き加工

公開日時:2016/01/26

とあるのどかな昼下がり・・・

 

あるる「博士ぇ〜、これって言えます? 『となりの客は良く柿食う客だ』」

博士「なんじゃ、急に。早口言葉か?」

あるる「はいっ! お正月におばあちゃんち行って、大いに盛り上がっちゃって…」

博士「そうか、懐かしいのぅ、昔はよくやったものじゃ」

あるる「ほらほら、博士、言ってみてよぉ〜」

博士「よしっ! となりのきゃくはよくかきくうきゃくだ」

あるる「じゃ、これは?『赤パジャマ黄パジャマ茶パジャマ』」

博士「あかぱじゃま きぱじゃま ちゃぱじゃま!」

あるる「おー、やりますねぇ〜。さすが昔取った杵柄!」

博士「昔ではない。今でも立派な現役じゃ」

あるる「では、これは? 『この釘は引き抜きにくい釘』!」

博士「このくぎは ひき・・ひきに・・ひきにく・・・」

あるる「あはは、博士、『ひき肉』じゃないですよ。ひき・・・ひきに・・・あれ?」

博士「ふぉっふぉっふぉっ、なんじゃ、あるるも言えとらんじゃないか」

あるる「ひきぬき! 引き抜きです! ちゃんと言えるもん!」

博士「おおっ!引き抜きといえば、そういう加工方法があるのぅ。

その話はしたかの? あるるよ」

あるる「・・・? 聞いた覚えは・・・」

博士「よし! それでは今日は『引き抜き加工』の説明をしよう。

あるる、早速授業を始めるぞ!」

あるる「ええーーーっ、早口言葉は? もっと遊びましょうよぅ〜」

 

 

Print

 

 

【第4回】アルミニウム合金押出し形材ができるまでで、

アルミニウム合金押出し形材の製造プロセスについてご説明しました。

 

その中で、ダイスの穴から連続的に材料が出てくる加工法として、

「押出し」と「引抜き」があることをお話しましたが、これは似て異なるものであります。

 

今回は、この押出し加工引抜き加工違いを、詳しくお話します。

 

 

塑性加工


 

押出し、引抜き、圧延、プレス、鍛造加工など、金属材料が塑性変形するまで

力を加えて変形させる加工を塑性加工といいます。

 

金属を再結晶温度以上に加熱し柔らかくしてから行う熱間加工と、

再結晶温度以下で行う冷間加工があります。

 

 

熱間加工


 

「鉄は熱いうちに打て」という格言がありますが、

塑性加工を行う場合、加熱して高温で行う方(熱間加工)が変形も容易で、

粗大な結晶粒を微細化して機械的性質を改善することができます。

 

加工性もよく量産にも向いているのですが、表面平滑度を上げたり、

精度の高い加工が難しいという難点があります。

 

 

冷間加工


 

冷間加工は、変形には比較的大きな力を必要としますが、

金属に過度の温度をかけないため、精度の高い加工が可能となります。

 

また、金属に力を加えると硬化していくという加工硬化が促進されるため、

材料が硬くなり、酸化皮膜・脱炭もなく、平滑な表面を確保することが出来ます。

 

 

押出し加工


 

押出しはコンテナ内に加熱したビレット(材料)を入れ、そのビレットを加圧して

ダイスにある隙間(穴)から流出させて、一定断面の形状を成型するものです。

 

実際の工程では、先頭部分を掴んで走行するので、

一見引き抜いているように見えますが、

それは単なる案内(?)であり、引っ張ってはいません。

 

押出しには直接押出し」間接押出し」があります

 

 

直接押出し


 

直接押出しは、ダイスとコンテナが固定されていて、

プレス機のステムが材料の押し出される向きと同じ方向に、コンテナ内を移動します。

通常のアルミニウム押出し形材は、ほとんどこの方法で製作されています。

 

直接押出01
棒材の直接押出し

直接押出02
管材の直接押出し

 

 

間接押出し


 

間接押出しは、固定されたダイスに対し、コンテナが材料の押し出される向きと同じ方向に移動します。

 

この方法では、ビレット外周とコンテナ内面の摩擦抵抗が少なく押出し圧力が安定するため

高品質で寸法精度の高い製品が出来ますが、ホロ―ステムの強度上の問題などで

できる形状に制約があります。

 

間接押出01-1
棒材の間接押出し

間接押出01-2
管材の間接押出し

 

 

 

引抜き加工


 

ダイスの穴から材料を引張り、断面積の減少と形状の変化をさせるもので

材料の先端を絞って細くし、ダイスの穴から突き出してキャリッジ(掴み機具)で

クランプして引張ります。

 

高精度のアルミニウム管などは、押出した精度の粗い管を、引抜き加工により高精度にします。

 

引き抜き01b

 

鋼材では、製鋼所で圧延されたものは表面の酸化被膜や微細な欠陥、

寸法精度や真直度などの問題で用途が限られます。

 

そこでミガキ鋼と言うものがあります。

 

これは冷間で引抜き加工することで寸法・形状の精度が高く、酸化被膜もないため

平滑な面が得られます。

 

引き抜き02d

 

 

なお、引抜き加工でも線材や細い管材などで、コイル状の素材を巻出して引抜き加工し、

製品をコイル上に巻き取る場合は、伸線加工と呼ぶことが多いようです。

 

 

 

博士「どうじゃ、あるる。押出しと引き抜きの違いは、わかったかの?」

あるる「押出しは『ところてん』! 引き抜きは『早口言葉』

そうやって覚えました!」

博士「・・・。まぁ、覚え方はひとそれぞれ、自由ではあるが…。

違う方向で覚えてくれそうで、やや心配じゃのう」

あるる「それより博士! 続きをやりましょうよ! 次のお題はねぇ・・・」

博士「なんじゃ、また早口言葉か?」

あるる「もちろんです! やりますよ! 博士だってさっき言ったじゃないですか。

『鉄は熱いうちに打て』って。覚えたものはなんでもやってみなきゃ♪」

博士「ほぅ、それも一理ある・・・って、お前がやりたいだけじゃないか」

あるる「あはは。バレました?! まぁいいじゃないですか。行きますよ。

『きゃりーぱみゅぱみゅ』!」

博士「それは、早口言葉なのか?」

アルファ博士05 

 

 

 

 

 

カテゴリ一覧