アルファ博士の気ままにトーク♪ 第11話 「岩石への関心」~地球46億年の歴史に触れました~

公開日時:2024/01/31

遠くて近いもの、なーんだ? ~第2弾 は岩石~

遠くて近いもの、なーんだ?

 

以前にこのコーナーで語った「遠くて近いもの」。空を仰げば「宇宙」ということになりますが、足元に目を向ければ、これはもう「岩石」ということになるでしょう。


ではなぜ、岩石が「遠くて近いもの」なのか?というと、道ばたに落ちている「路傍の石」は確かに「ただの石」ですが、よく調べれば、実は、私たちの地球の46億年、日本列島2000万年の長い長い歴史が刻み込まれています。よってこれは「遠くて近いもの」と思えるのです。


昨年、この“遠くて近い”「岩石」に関係した場所を何カ所か訪れましたので、今回はそれらについて語っていきたいと思います!

 

日本最古の石博物館 ~手で触れる25億年、40億年の歴史!~

岐阜県と愛知県には、実は「岩石に関係した興味深い場所」がたくさんあります。まずは「日本最古の石博物館」です。そのものズバリの名前ですね。昨年3月のある休日、この名前についつい引き寄せられて、行ってきました。

 

場所は、名古屋から北に約50km、岐阜県の美濃加茂からは、飛騨川を高山方面に15kmほどさかのぼったところで、左右から山が迫り、峡谷になっています。


狭い谷が少し開けた場所に、その博物館はありました。その町の名前は「七宗町(ひちそうちょう)」です。博物館は「道の駅ロックガーデンひちそう」と、峡谷「飛水峡(ひすいきょう)」を望める公園にもつながっています。

 

この博物館は、昭和45年(1970年)この飛水狭で発見された「日本最古の石」(なんと約20億年前!)を中心に、さまざまな岩石を展示しています。


実はこの石、発見当時は確かに「日本最古の石」でしたが、その後、平成29年(2017年)に山口県津和野町で、それより古い(約25億年前)の石が発見されました。

 

これにより、“博物館の名称返上の危機か?!”とも思われましたが、令和2年(2020年)、津和野町から25億年前の石を寄贈していただいたため、今も「日本最古の石博物館」として続いていています。

 

日本の最古の石と合わせて、北カナダで発見された「地球最古の石(約40億年前)」も展示されています。

 

驚くべきことに、この「日本最古の石」と「地球最古の石」は、何と「手で触れられる」展示になっていました。


「ではでは(遠慮なく・・・♪)」、ということで、25億年と40億年の石にそっと指先で触れてみました。その瞬間、長い歴史に直接つながって、引き込まれるような感じがしました。これぞ遠くて近いもの! 「数十億年」という遠い歴史を指先で感じてしまいました。

 

「日本最古の石」をよく観察してみると、大きな石全体が25億年前のものではなく、大きな石の中に、古い岩石の組織が含まれていることがわかりました。これを「礫岩(れきがん)」といい、石の粒が固まってできた「石の結集体」です。

 

日本列島が大陸から分かれたのが、今から約2000万年前ですから、20億年前や25億年前というのは、大陸から由来した岩石ということになります。

 

次に、「どうして20億年前とか40億年前という年代が分かるのか?」、という疑問がわいてきます。この博物館では、その年代を調べる方法についても説明がありました。


七宗町の石の20億年は、名古屋大学の鈴木・足立・田中の3人の先生が1991年に開発した「チャイム法」という方法を使って調べています。


これは、物質に電子線を照射した時に発生するX線の波長と強度を測定し、含有しているウラン、トリウム、鉛の割合を計算して、そこから年代を決定する方法です。


この方法を使うと、礫岩の一部分のような、微小な部分の年代を測定することができるとのことでした。

 

日本最古の石 触りました

中津川市鉱物博物館 ~こんな色、こんな形の石があるんだ~

中津川市鉱物博物館 長島コレクション

中津川市鉱物博物館 トパーズ

さて、ところ変わって、お次は岐阜県にある中津川市鉱物博物館です。

 

中津川市は、先ほどの七宗町よりさらに東で、七宗町は高山方面の飛騨川沿いですが、中津川市は恵那山方面の木曽川沿いになります。

 

中津川は、クルマでは中央道、電車では中央線で、どちらも名古屋から1時間半ほど。中山道の宿場町「馬籠宿」や(私の好きな)「栗きんとん」でも有名ですね。

 

中津川市鉱物博物館は、この地域で産出される鉱物をはじめ、様々な鉱物の標本を見ることができる博物館です。特に、この地方で産出される「水晶」や「トパーズ」、そして希元素の鉱物を集めた「長島鉱物コレクション」は見応えたっぷりです。

 

「トパーズ」は水晶に似ていますが、いろいろな色のものがあるようです。「ブルートパーズ」は深い空色で、特に私のお気に入りです。


これらの珍しく美しい鉱物を見ながら、「天空の城ラピュタの飛行石」を想像してみるのも面白いかもしれません。

根尾谷地震断層観察館 ~6mの段差も130年でわかりづらく~

続きましては、岐阜県の根尾谷地震断層観察館のご紹介です。

 

愛知県では、甚大な自然災害「伊勢湾台風」と「濃尾地震」が、忘れてはいけないものとして記憶されています。

 

「濃尾地震」は、明治24年(1891年)10月28日に、濃尾平野北部で発生したM8.0の日本史上最大の直下型地震です。

震源は、岐阜県本巣郡西根尾村(現、本巣市)の「根尾谷断層帯」で、この根尾谷断層が明瞭に地表に現れたのが、この博物館のある場所です。


理科や地学の教科書にも、この地表に現れた断層の写真が載っているので、ご存じの方も多いでしょう。先日ここを訪問して、地表の様子と、博物館で断層の断面の様子を見ることができました。

 

この地震以前は「地震の原因」は、昔は「ナマズ」(!)のように、さまざまな説があったのですが、この濃尾地震と根尾谷断層によって、「断層活動」が主なメカニズムによることが明らかになりました。

 

断層活動は、地球のマントルの熱対流によって地球を覆っているプレートが動き、プレートの境目に位置する日本列島のような場所に歪みが蓄えられ、歪みがある一定以上を超えると、地殻(地球の表面の構造)に亀裂が生じて、上下方向や水平方向の段差が生じる運動で、この時に地震が発生します。

 

実際ここを訪れてみると、この断層の動きの「激烈さ」(上下方向に最大約6m、横方向に最大約8m)が実感されました。

それと共に、このような大きな断層であっても、地震以来(わずか)130年を経ると、雨による浸食堆積や畑の耕作などによって、段差の痕跡は、だんだんと埋もれ削られて、目立たない、言われてみないと気が付かないぐらいになっていくことも実感しました。

 

根尾谷断層 昔と今

根尾谷断層 上下差は6m

養老の滝 ~落差は2000mのうちの32m~

ここからは少し趣向を変えて、博物館ではなく、リアルに「岩石」を感じる場所のご紹介です。

とある初冬の休日に訪問した、かの有名な「養老の滝」です。この名前を見たり聞いたりすると、「おいしいお酒」を連想する人が多いと思います。私もその一人です(笑)

 

居酒屋チェーンの名前にもなっている「養老の滝」という名前は、奈良時代(西暦710~)初めの頃の年号「養老」(西暦717~724)にもなっており、その由来は「親孝行の話」だそうです。


貧しいながらも一生懸命に働いていた若者が、道に迷った山中で出会った清らかな水の流れ、すくって飲んでみると、まか不思議。これがおいしいお酒で、持ち帰って年老いた父親に飲ませたーーーというお話です。

 

この養老の滝は、濃尾平野の西側に立ち上がっている「養老山地」の東側にあります。山麓の林間の歩道を進んでいくと、目前に真っすぐに流れ落ちる一条の滝が視界に入りました。
「親孝行の話」の通り、清らかな水の流れでした。

 

滝の落差は32mで、日本一の那智の滝の133mなどに比べれば、さほど高いとはいえません。しかし、この滝は、養老山地の造山活動、それとは逆の濃尾平野の西側の沈み込み、これによって出来た断層の落差部分を流れ落ちていて、養老山地と濃尾平野西端の基部との高低差は何と、2,000~2,500mもあるのです。


傾いて沈んでいる濃尾平野の基部は、土砂の堆積で埋まっていて、その結果、養老山地の高さは、高低差全体の約半分の800~900mとなっています。


この断層運動、1年間に約0.5~1mmとのことですが、これが約200万年続けば、1mm x 200万=200万mm=2000m。
微小な動きも長年続くと大変な量になるという例かと思います(おうちや会社でのお話のネタにどうぞ!)。

養老の滝 落差は2000mのうちの32m

豊橋市自然史博物館と豊橋市地下資源館 ~地球46億年の歴史に思いを馳せる~

続きましては、愛知県の南東部に位置する豊橋市にある、地球や岩石に関連する2つの博物館をご紹介しましょう。豊橋市自然史博物館と豊橋市地下資源館でです。

 

自然史博物館では、地球と生命が歩んできた46億年の歴史を、豊富な本物の標本を目の当たりに見て、体感することができました。


古い時代に造られた岩石(テクタイト、キンバーライト、コマチアイト)や隕石、多くの恐竜の化石です。隕石は、地球の生命の起源、また恐竜などの生物の大絶滅に関連しているといわれています。

 

豊橋市地下資源館では、さまざまな地下資源、例えばアルミニウムの元となる「ボーキサイト」や、鉄の元になる「鉄鉱石」、セメントの元になる「石灰石」などが、現物の標本と共に詳しく説明されていました。鉱山の採掘現場の実物大のジオラマモデルもあって、迫力がありました。


またこの博物館には「世界最大級」のトパーズの原石(約119kg)も展示されています。これらの鉱石や原石を見ながら、これらが作られてきた、地球の長い歴史に思いを馳せました。

 

豊橋市自然史博物館 恐竜の化石

豊橋市地下資源館 アルミニウムの元、ボーキサイト

豊橋市地下資源館 鉱山のジオラマ

豊橋市地下資源館 世界最大級のトパーズの原石

「遠くて近いもの、なーんだ?」のまとめ

宇宙が出来て138億年、地球が出来て46億年、日本列島が大陸から分かれておよそ2000万年。


その後、地殻変動、火山噴火、地震、台風、大雨、津波など、大きな自然の脅威を受けながら、多様で美しい山河、海、気候、そこからの自然の恵みをいただきながら、多くの人々が長い間、ここで生活してきました。


遠くて近い「天」と「地」、それら大きな存在を身近に感じながら、今年も毎日を過ごしていきたいと思います。

 

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